「お局様はいますか?」
外銀の人事部で働いていた頃、毎年、新人研修が終わると、私に恐る恐る聞いてくる新入社員がいました。配属直前の新人たちの不安材料の一つだったのでしょう。当時、私はこう答えていました。
「お局様は、どんな会社、どんな職場にもいます。でも、大丈夫。彼女たちから逃げないで。味方にすれば、これほど心強い先輩はいません」
「お局様」とは俗に、職場に長く在籍していて、様々なことを仕切っている先輩女性のこと。仕事に精通していて、会社の歴史にも詳しく、社内の権力者とも仲が良く、人脈・派閥を知り尽くした“デキル女性”。世の中には、そんなお局様も少なくありません。
働く女性にとって尊敬すべき存在ですが、きっかけ次第では、ちょっと面倒な人になることも。
30代前半の頃、苦い経験をしました。他部署のリーダーだったAさんは私より10歳年上。私は姉御肌で仕事のできる彼女にあこがれていました。社内に共通の知り合いがいたお陰で、二人でランチに行く間柄になり、彼女との人間関係は良好だと信じていました。ある日、同じプロジェクトメンバーに選ばれ、一緒に仕事をするようになりました。その途端、彼女の態度が急変しました。口調も厳しく、仕事の打ち合わせの最中にも無視され、とても冷淡になったのです。
「私、何かしくじった?!」
いろいろと振り返っても、彼女を不機嫌にするような言動をした覚えがないのです。「さあ、どうしよう……」。彼女の冷たい言葉や態度は私に突き刺さります。とうとう会社に行くのが嫌になるほど、気持ちがふさぎ込みました。
第三者の介入は慎重に
元気がない私に、上司が「何かあったの?」と聞いてきました。私はAさんと仕事がやりづらい現状を正直に打ち明けました。すると、上司は思わぬ行動に出ました。「これ以上、失礼な態度をとると、上に報告するとAさんに伝えたから、もう大丈夫だよ」とあっけらかんとしています。「しまった」と思いましたが、時すでに遅し。Aさんの私への態度はさらに硬化してしまったのです。

こんなことなら勇気を出して、「私、Aさんの気に障ること、何かしました?」と、自らアプローチすればよかった。そう後悔しました。メッセージのボールはどんな投げ方をしても、相手のボールの受け取り方は様々です。だからこそ、第三者にボールを投げさせてはいけなかったのです。コミュニケーションの取り方は、慎重にすべきだと学びました。
私は「気にしないことにしよう」と、割り切りました。冷たくされても涼しい顔をして、むしろAさんを立てるように気遣いながら、やるべき仕事に集中しました。そうするうちに、彼女の態度も軟化してきたのです。きっと自分の大人げなさに気がついたのだと思います。
誰からも好かれるのは無理
とても残念で寂しいことですが、Aさんと以前のように冗談を言い合える間柄に戻ることはありませんでした。なぜ、彼女の態度が急変したのかは、想像するしかないのですが、原因は「お互いの距離の変化」だったように思います。
他部署のかわいい後輩のままなら、ずっと仲良くランチに行っていたでしょう。同じ土俵に立って仕事を始めても、私はAさんに甘えてなれなれしい態度で接していました。そんな私は、彼女にとって生意気で目障りな存在になったのかもしれません。
人間関係にはちょうどよい距離があります。例えば「ちょっと、あなた。私の半径1メートル以内に入ってこないでちょうだい!」というように、近づき過ぎると嫌がられることがあるのです。
居心地がよい距離の長さは相手によって違い、しかもその長さは状況によって微妙に変化していくから厄介ですね。
個人的な感情を職場に持ち出すのは大人げないと思います。だけど、人間は感情の生き物。誰からでも100%好かれることは不可能です。そして、壊れた人間関係を修復するのは大変です。そんな時は、その人とのご縁の形を見直すチャンスととらえましょう。人に合わせてばかりでは疲れます。たまには自分本位な考え方で気持ちをコントロールするのも大事なのです!
人間関係は複雑なもの。うまくいかないときは、気持ちを切りかえる。
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