30歳前後から、女性にはいろんな変化の波が押し寄せます。ライフイベントでは結婚・妊娠・出産など、仕事ではキャリアアップ・転職など。その時々で何を優先するのか、様々な選択を迫られる世代です。
一方で、変化の波を自分から起こすことも時には必要。自分に「刺激」を与えることが楽しく働く秘訣です。
30代の頃の私は、毎日同じことの繰り返しのルーチン業務にうんざりしていました。だけど、せっかく築いた居心地のよい空間から出るのはおっくうでもありました。新しい行動を起こせば面倒なことが待ち受けているのはわかっているので、腰が重くなります。でも、イキイキと輝いている同僚を見ると、「私はこのままでいいのだろうか」と焦ってもいました。
当時、外資系銀行のクレジットカード部門のクレーム処理係でしたが、「経理課の仕事をしたい!」という希望がありました。でも、経理課にはMBA(経営学修士)ホルダーのような優秀な人が集まっています。学歴も資格もない私などが入れる部署じゃない――と、あきらめていました。コンプレックスの壁を破れず、いやいやクレーム処理の仕事をしていました。
マニュアルと違うアクションを起こしてみる
そんなある日、お客様から1通のクレームの手紙を受け取りました。
「カード紛失時に電話のたらい回しにあった。この際退会したいので書類を至急送ってほしい」と、手書きで丁寧な文字で書かれていました。普通なら、マニュアル通り、お客様に退会届の書類を送ればいいのですが……。このときふと、「丁寧な手紙には丁寧に返事を出すべきでは?」と思いついたのです。私は万年筆で詫び状を書き、退会届といっしょに送りました。
1週間後、そのお客様から絵はがきが届きました。そこには、詫び状へのお礼と、退会を見合わせると書いてありました。心底、うれしかった! 私はお客様から「がんばれ!」のエールを受け取ったのです。「この会社でまだ貢献できるかもしれない!」とエネルギーがあふれてきました。
いつものクレーム処理の仕事に、ほんの少しのプラスαをしたことで、仕事への情熱を取り戻したのです。
ときには、本音を口に出すことがキャリアアップにつながる
「やる気」が出た私は、上司に「経理課へ行きたい」という本音をぶつけることができました。「私も、君はクレーム処理の仕事に向いていないと思っていました」。上司の思いがけない反応に驚きました。クレームの相手の話を聞き過ぎて時間をとってしまう私に、上司も困っていたようでした。やはり大切なのは「Speak Out(思い切って言う)」。どんなボールでもこちらから投げないことには、人を動かすことはできません。小さなアイデアでも行動に移せば、霧がかかったように見えた日常に光が差しこむことがあるのです。
いつもと違う行動が、自分を変えるきっかけになる。