「同僚との関係は面倒なだけ。立場は対等なのに、こっちばかりが気を使って接するなんて疲れるし、不公平。だから私、できるだけ同僚とは関わりたくないんです」
30代で外資系銀行の東京支店で働いていたころ、私は鎧をまとうように同僚との間に壁を作っていました。上司や部下は、自分にとって利害がからむから大事。だけど、同僚には「そんなに気を使わなくてもいいんじゃないの?」と考えていました。
ある日、オフィスに祖母が危篤という知らせが! 実家は熊本県で、私は動揺して頭が真っ白に。そのとき、同僚のA子さんが、「関下さん、○○時発の熊本行きの飛行機に間に合うから、チケット手配しようか?」と声をかけてくれたのです。その言葉を聞いた上司が、私の仕事を引き継ぎ、帰省の指示を出しました。
2つ年上のA子さんは真面目を絵に描いたような人で、人を寄せ付けないオーラがありました。私はA子さんが苦手で、ずっと避けていました。そんな彼女が、真っ先に手を差し伸べてくれました。彼女の機転に助けられたのです。忌引明けで職場に復帰したときも、「大丈夫?」とさりげなく声をかけてくれ、どれほど感謝したことか。いつかきっと恩返しをしようと心に誓いました。
ギブ&テイクで広がる人脈(ネットワーク)
窮地を誰かに助けられたときや、ちっとも大丈夫じゃないときに「大丈夫?」と声をかけてもらった瞬間は、まるで神様に出会ったようにうれしいものです。そして、「次は私が何かでお返ししよう」と思うのは自然なこと。親切にしてもらったら(テイク)、相手にも恩返しする(ギブ)。それが、よりよい人間関係の第一歩につながります。お互いを避け続けていたら、何も生まれないのです。
A子さんに恩返しがしたくって、何かと気遣ううちに、彼女の周りともつながりができていきました。名前だけは知っていたけど、面識のなかった別部署の人たちと知り合いになりました。
電話やメールのやり取りだけで、同じ会社なのに顔を知らない人っていますよね。同じエレベーターに乗り合わせても、顔を知らなければあいさつもできません。そんなコミュニケーションのロスはもったいない。顔を知っていればあいさつができ、名前と顔をしっかり覚えてもらうことで、仕事がしやすくなることだって現実に起こります。
正確な情報をタイムリーにつかむ
同僚といってもいろんな人がいます。年齢、性別、出身地、入社年度、専門スキルのレベル、学歴・職歴のバックグラウンド、属している派閥など……。一人として同じ人はいません。「あの人はこんな人」という、噂話だけをよりどころにしないで、その人自身に関心を寄せてみてはいかがでしょう? 思いがけず自分との共通点が見つかるのも楽しいものです。
それに、正確な情報をもとに動かないと痛い目に遭うこともあります。たとえば、B子は口が堅いから本音で相談できるけど、C子に話すと上司に筒抜けになる――。わかっていたら、C子には話さなかったのに~。ネットワークから外れていると、こういうことも起こりかねません。正確な情報がタイムリーに入ってこないため、仕事がうまく進まないこともあります。「上司に言われてない」とか「私は聞いてない」では、自分のアンテナが立っていないと言っているようなものです。
「好き・嫌い」だけで人間関係を選んで働ける職場なんかありません。自分が楽しく働くための工夫をしていくことが必要です。「同僚」との適度なコミュニケーションは、職場で過ごすうえで避けて通れない人間関係です。一匹オオカミを気取っていると、損をしますよ。自分の社内のネットワークを広げていけるチャンスはいくらでもあります。
社内のネットワークを広げるチャンスは逃すな!