四国はおいしいものづくし! 骨付き鳥、ぬた…ご当地グルメを満喫

お遍路さんもちょっとだけ体験しながら、四国の4都市を巡る旅を紹介します。各都市を高速バスで移動する少しタイトな行程のなかで、体力の源となったのが各地のおいしいもの。その町に根付くグルメは、旅を何倍も豊かにしてくれます。

コーヒーの街・徳島市の絶品ブレンド

可否庵
徳島駅から徒歩10分ほど。外とは違う時間が流れているかのよう

カフェに立ち寄るのは、旅の楽しみのひとつです。街になじむカフェは、おいしいコーヒーだけでなく、その土地の風土も味わえます。

徳島出身のコーヒー好きの友人が教えてくれた「可否庵」へ。木枠の窓から優しく明かりがこぼれるたたずまいは、一人でもドアを開けやすい雰囲気です。アンティークや焙煎ばいせん道具がセンスよく飾られた店内に入ると、どこか懐かしいような、温かな空気に包まれました。

可否庵
カウンターの中に見えるのは、使い込まれたマグカップや食器

カウンターに立つのは、ひげの初代マスターと若い2代目マスター。1980年に創業して以来、ずっとここで変わらない味のコーヒーを提供し続けています。2人は義理の親子。2代目マスターは、奥様の父である初代マスターが守り続けてきた味を受け継ごうと、夫婦でお店に携わることを決めたのだそうです。コーヒーでつながる、そんな2人の関係もすてきです。

可否庵
コーヒーは砥部焼のマグカップとオリジナルの木のトレーでサーブ

コーヒー豆は10種類ほどあり迷いましたが、まずは、看板メニューの「可否庵ブレンド」をいただきました。スッキリとした味にいれるべく、ドリップの時間はわずか1分半。穏やかな口調でお話ししながらも、あっという間にコーヒーをいれる初代マスターの所作に、思わず見入ってしまいました。

苦みの強い深煎りが好きな私には物足りなく感じるかと思いきや、雑味がまったくなく想像以上においしい! 生豆からゆっくりと時間をかけて焙煎し、豆の水分を抜いているから、えぐみのないスッキリとした味わいになるのだそうです。「何杯でも飲んでほしいですからね」とマスター。このブレンドがとても気に入り、豆を購入して旅の後も楽しみました。

「市内には焙煎しているコーヒー店がいろいろあって、それぞれに個性とおいしさがありますよ」というマスターの言葉からも、街にコーヒー文化が浸透しているのがわかります。「可否庵」から歩いてホテルに向かう途中、自家焙煎を掲げるカフェを何軒も見つけました。東京で歩いていても、こんなにたくさん見つけられません。コーヒーを味わいに、またこの街を訪れたいと思います。

専門店が味を競い合う、高松市の讃岐うどんと骨付き鳥

高松市のグルメといえば、なにはともあれ讃岐うどん。ランチはもちろん、お酒を飲んだ後のしめ、子どもの離乳食(!)まで、うどんが根付いています。専門店もたくさんあり、麺やトッピングを選んで最後に会計するセルフサービスから、テーブルでオーダーするフルサービスまで、スタイルはさまざまです。

高松を初めて訪れた私は、まずはフルサービスの老舗を堪能することに。四国八十八か所霊場の第85番札所・八栗寺に車で向かう途中、参道にある「うどん本陣 山田家」で、定番の釜揚げうどんを味わいました。

香川のおでん
からしと白みそを合わせた甘辛のタレで食べるおでん

うどんが運ばれてくるまでの間は、別にオーダーしたおでんをつまみながら待つのが讃岐流です。前菜のようにおでんを食べる習慣には驚きましたが、甘辛のタレをつけておでんを食べながら待つ時間は、なかなか楽しいもの。

讃岐うどん
ふんわりとした食感が続く釜揚げうどん

釜からすくい上げた麺は、風味が高く、ふんわりとした食感。釜揚げうどんは水で締めていないので、時間がたっても弾力と風味が消えません。足で踏み、手で打つ地道な作業でできたうどんを、ゆっくりと味わうことができます。

もうひとつのご当地グルメといえば、骨付き鳥でしょう。香川県中西部の丸亀市発祥ですが、旅行者の多い高松市にも多くの専門店があります。年季の入った「骨付鳥」ののれんにひかれて訪ねたのは、居酒屋「蘭丸」です。香ばしい香りが食欲を誘います。

骨付鶏
おや(左)とひな。一見すると似ているけれど、食感の違いは歴然

朝引きの新鮮な鶏を使った骨付き鳥は、「おや(親鶏)」と「ひな(雛鶏)」の2種類。「おや」はかむほどにうま味を感じ、「ひな」はパリッと仕上げた皮とジューシーな味わいが特徴です。じっくりと20分ほどかけて焼くので少々待ちますが、この間に香川名物のしょうゆ豆(甘辛いしょうゆダレに漬けた煎りソラ豆)をつまみながら、ビールをちびちび飲むのも一興。

「ひな」は、一口かむとじゅわっと脂が染み出てきます。最初は「やや硬いかな?」と思った「おや」も、かめばかむほどうま味を感じて病みつきになりそうです。

松山市で味わう鯛めしとご当地食材のパン

瀬戸内海に面した松山市を代表する食材といえば、豊潤な海で育ったたいでしょう。一本釣りの天然モノから生産者が手塩にかけて育てる養殖モノまで、日本有数の鯛の産地として知られています。

数ある鯛料理のなかでも代表格が、鯛めしです。愛媛県の鯛めしには、丸焼きにした鯛と昆布を米と一緒に炊き込む「松山鯛めし」と、タレにつけた鯛の刺し身をご飯にのせた「宇和島鯛めし」の2種類があります。前者は愛媛県東部、後者は西部の郷土料理ですが、私が伺った鯛めし専門店「秋嘉」(松山市)では、両方ともメニューにありました。

鯛めし
鍋で炊き上げた松山鯛めしは、そのまま食べた後、だしをかけてお茶漬けにして、2種類の味を楽しめる


炊き込みご飯と聞いて野菜がふんだんに入ったものを想像していたのですが、「松山鯛めし」の材料は、昆布と鯛だけ。見た目はシンプルですが、鯛をほぐしてご飯と混ぜ合わせると、おいしそうな香りがふんわりと広がります。

明太子フランス
かつて松山市にあった人気ベーカリーの名物パンを受け継ぎ再現した「明太子フランス」

伝統的な鯛めしもありながら、松山市の新しい食文化となりつつあるのがパンです。松山市では、近年、おいしいパン屋さんが急増しているのだそうです。温泉どころの道後で朝からひっきりなしにお客さんが訪れていたのは、「ユノマチベーカリー」。彼らの多くが求めているのは、2種類の明太子をブレンドしてバゲットに挟んだ「明太子フランス」です。休日ともなれば400個近くも売れるというこのパンが欲しくて、私も朝一番に訪ねました。

バゲットからあふれんばかりの明太子スプレッドは、とてもまろやか。明太子の辛さに負けず、小麦の風味もしっかりと感じます。もうひとつ、迷いながらも選んだ「いよかんバゲット」は、水を一切使わずポンジュースだけを使用して作った生地に、伊予柑いよかんのピールを練り込んだもの。比較的日持ちがするので、お土産に購入しました。爽やかなみかんの風味と伊予柑ピールのほろ苦さが絶妙なバランスで、コーヒーにもよく合います。

個性的なパンが多く、価格は手頃。イートインスペースを利用する旅行者もいれば、お店の方と親しげに挨拶を交わす常連客らしき人もいる、老若男女に愛されるベーカリーでした。

高知市の真ん中にある屋台村風商店街で郷土食を謳歌おうか

うつぼの刺身
うつぼの刺身。このほか、天ぷらで食べるのも定番

魚好き、お酒好きの女性が圧倒的多数と聞いて、旅する前から食べることを楽しみにしていたのは高知市です。その期待は、裏切られることがありませんでした。

ひろめ市場のカツオのたたき
ひろめ市場「やいろ亭」は、地元のファンも多いお店

街の中心にある屋台村風商店街「ひろめ市場」では、かつおのタタキにぬた、ウツボなど、高知名物を存分に味わうことができます。ここは名前こそ市場ですが、郷土料理店やバー、スイーツショップ、地酒店や土産物店が軒を連ねる屋台村風商店街。観光名所ながら地元の人にも愛され、食事会の前にここで「ゼロ次会」をして、1次会に繰り出す人もいるのだそう。なんと羨ましい環境なんでしょう。

ぬた
ニンニクの葉を使ったご当地調味料の「ぬた」は、脂ののった魚によく合う

高知市に滞在した2日間、繰り返し食べるほど魅了されたのは鰹のタタキです。「初鰹」「上り鰹」と呼ばれる3~5月と、「戻り鰹」「下り鰹」と呼ばれる9~11月と、2回の旬があります。私は1月にいただきましたが、臭みはいっさいなく、香りがよく肉厚で、食べ応えのあるタタキを味わうことができました。分厚いタタキには同じく分厚いニンニクがたっぷりと添えられています。地元の方いわく、「高知はニンニク臭におおらか!」とのこと。ますます羨ましい。

脂の多いブリやハマチの刺し身などは、「ぬた」をのせて食べました。ぬたは、ニンニクの葉とみそ、酢、砂糖などを混ぜてペースト状にした調味料です。フレンチのソースのような鮮やかな緑色からは味が想像できませんでしたが、食べてみるとコクがあり、魚のおいしさを引き立てます。

他の地域ではなかなか見られない、個性的な食べ物がそろう高知市。日本酒が進む郷土食もたくさんあって、それもまた魅力です。次にまた高知市を旅するときも、おなかを空かせて行こうと決めています。

(取材・芹澤和美)

取材協力:四国四市観光誘致促進協議会
高知市公式ホームページ
松山市公式観光WEBサイト
高松市公式観光サイト
徳島市公式観光サイト

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