女性の健康課題を社会が解決 広がる企業での取り組み

女性特有の健康課題はもはや女性だけの問題ではありません。社会がその解決策を担う取り組みも進んでおり、中でも健康経営の一環として企業内で積極的な動きも出てきています。

企業における従業員の健康に対する取り組みは過去メタボ対策が中心でしたが、労働人口総数の約44%(※)を占める女性の健康に対する取り組みにより積極的になることで、企業の更なる活性化につながるとされています。※出典:厚生労働省「令和元年版働く女性の実情」

働く女性を巡る健康課題

職場における女性の健康課題は多岐にわたります。日本女性の78割が何らかの症状を抱えていると言われている月経に関する不調や、妊娠・出産や更年期障害などライフステージに伴う不調などが挙げられ、さらに個人差も大きいため女性自身も対処法がわからないという課題があります。

また、企業においても生理休暇や検診・受診のための休暇制度の創設など女性特有の健康課題に対する取り組みは進んでいるものの、女性自身や周囲の知識不足によりなかなか制度の利用が進まないというジレンマも起こっています。

出典:平成31年3月 経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」

企業で進む先進的な取り組み

女性の健康課題を周囲に認知させることや女性だけではなく周囲の男性も含めてサポートすることを目的とした企業向けセミナーやカウンセリングサービスを提供する2社に取材しました。

体重計や血圧計のメーカーとして知られるオムロンヘルスケア株式会社は「オムロン式美人」プロジェクトを通じて女性の健康課題を解決する商品やサービス開発に取り組む元祖フェムテック企業です。

広報担当の石崎さんに、働く女性のヘルスケアについて、当事者の女性だけではなく、周囲の上司や同僚、家族も女性特有の健康課題について知ることの重要性を聞きました。

――女性の健康課題に取り組む「オムロン式美人」プロジェクトについて教えてください。

2009年に女性特有の健康課題を解決すべく、女性社員が自主的に始めたのが「オムロン式美人」のプロジェクトです。

プロジェクトを始めるにあたり、働く女性のヘルスケアについて調査を行っていく中で、現代の働く女性の環境が想像以上に過酷であること、20代~40代の女性の約8割が月経に関連する不調を抱えているなど様々な課題が見えてきました。

しかし、女性の健康課題はライフステージごとに変化することや、個人差も大きいことでなかなか女性自身もどうしていいのかわからないという方が多く、私たちは「女性自身が自分に合ったセルフケアを体得すること」が第一歩なのではないかと思いました。

――企業向けセミナーを始めることになったきっかけを教えてください。

「オムロン式美人」の活動の中で、女性が自身の健康管理のために使いやすい商品開発などをしてきましたが、徐々に女性の健康は女性自身だけの問題ではないということがわかってきました。

日本医療政策機構が行った調査では、女性に関するヘルスリテラシーの高さが仕事のパフォーマンスに関連するということがわかるなど、女性の健康課題を企業側や一緒に生活するパートナーも理解することで、健康経営や女性活躍推進にもつながり、社会にとっても良いということもわかってきています。

そこで始めたのが「働く女性のヘルスケアメソッド」という女性特有の健康課題や基礎知識を中心としたヘルスリテラシーを高め、自分に合ったセルフケア方法を見つけることを目的とした企業向けセミナーです。

「働く女性のヘルスケアメソッド」の様子(現在は集合形式ではなくオンライン形式で実施)

女性特有のヘルスケアについて、当事者の女性だけではなく、すべての人に分かりやすいセミナーを心がけています。

参加企業にも大変好評で、業務効率化や健康経営を意識されている人事部や保健師さんなどからの相談が多いですね。参加された女性からは「今まで女性特有の不調については相談しにくかったが、上司と一緒に参加したことで今後相談しやすくなる」や男性からは「同僚だけではなく、パートナーや家族の健康についての理解も深まった」という声がありました。

企業専属の「助産師」が企業と働く人々を総合的にサポート

個人や企業と助産師とを繋ぐシステムを運営する株式会社WithMidwifeは企業向けにオンラインで助産師が従業員の健康や子育ての相談に乗る事業「The CARE」を提供しています。「看護師資格と助産師資格を持つ助産師は、妊娠出産だけではなく、女性のライフステージ全体における健康課題に寄り添うことができる」と話す同社代表取締役岸畑さんに話を聞きました。

――企業向けに助産師がオンラインで相談に乗るサービスの提供を始めた背景を教えてください。

助産師の歴史を紐解くと、戦前は「産婆」として女性の妊娠出産を介助するだけではなく、性教育や更年期など女性の健康に関わる専門家として地域の女性を幅広くサポートする存在でした。助産師の大半が出産を介助する役割を担う存在として病院に就職するようになった現在も、妊娠出産だけではなく女性のヘルスケア全体の専門家であることには変わりありません。看護師資格に加えて助産師資格も持ち、保健師の資格を持つ者も多い助産師は医療・家庭・子育ての総合的な専門家として悩みを持つ従業員の包括的な相談に対応できます。

株式会社WithMidwife 代表取締役 岸畑聖月さん

――サービスの反響を教えてください。

実際に従業員の方々から寄せられている相談は自身の不妊や子育てについて、自身のメンタルヘルス、パートナーの健康についてなど多岐にわたります。助産師だからこそこれらの多様な相談にワンストップでサポートできると感じており、サービスを導入した企業からは、健康経営の観点だけではなく、従業員の離職・休職の防止につながったなどの声をいただいています。

――女性の健康課題をサポートすることの重要性をどのように考えられますか。

不妊治療と仕事との両立、子育てと仕事との両立が当たり前になっている中で、女性の健康課題が多様化してきていると感じます。

また、まだまだ女性の家庭内での役割が大きい現代では、女性の健康をサポートすることが結果的に周囲をサポートすることにつながる、ということも感じています。

結果的に従業員の離職・休職の防止にもつながっているなど、健康経営だけではないメリットも実際見えてきています。女性の健康課題を女性だけの問題としないことが、結果として大きな波及効果を呼び、社会全体が良くなっていくのではないかと思います。

より良い職場環境のために

社会がより多様化する中、互いを理解することで円滑なコミュニケーションが生まれ、より良い職場環境になることにもつながっていきます。

少子高齢化による働く女性の増加、さらに女性の役員登用が全世界的にも進む中、特に女性特有の健康課題を理解することは今後重要な因子となってくるのではないでしょうか。

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