【フェムテック起業家に聞く】mederi 坂梨 亜里咲さん

mederi(本社・東京都渋谷区)は、妊娠時に備えたカラダづくりプロダクト「Ubu」やPMSや生理で悩む女性に、ピルという選択肢を提供するためのオンライン診療サービス「mederi Pill」を展開している。mederiの創業者である坂梨亜里咲さんに話を聞いた。

自身の不妊治療経験から生まれたプロダクト

――坂梨さんご自身の実体験をもとにつくった「Ubu」、そこからさらに女性たちへ寄り添うことを目指した「mederi Pill」に対する思いを教えてください。

2020年の創業以来、これから先の人生で妊娠を望む女性に向けて、妊娠に備えた身体づくりのためのサプリメントやチェックキットの販売を「Ubu」というブランドで行ってきました。その中で「妊娠できることは当たり前だ」と考えている女性がものすごく多いことに気づきましたし、私も昔はそう思っていました。ただ、私は妊娠したいと思ったとき、望み通りに子どもを授かることができないという経験をしたことで、同じような思いをする人がひとりでもいなくなってほしいという思いからサービスをスタートさせました。

毎日飲みやすいように工夫されたサプリメント「Ubu」

「必ずしも望み通りに妊娠できるわけではない」ことを知ってほしいと考えたとき、実際に妊娠・出産を検討している層だけではなく、10代のいつか子どもを授かるだろう層へ向けて、情報を発信したいと思いました。しかし、サプリメントやチェックキットは妊娠に向けた身体づくりという意味が強いので、このサービスで10代へメッセージを届けるのは難しいと感じ、彼女たちが自分事化しやすい商品を考えた結果、オンライン診療によるピル処方のサービス「mederi Pill」をスタートすることにしました。

――10代への情報発信を考えたとき、ピルの服用を親世代から止められることは今でも多いと聞きます。ピルの服用に関する知識不足や偏見が残る中、若い世代へのアプローチについてどのようにお考えですか?

ピルに対する偏見というのは、この事業を考える際にも課題になっていることの一つでした。なので、「mederi Pill」をプレローンチする際にも、まずはピルについて知ってもらうコンテンツを設けて、クイズに回答していただく流れにしました。そういった機会がないと、なかなか自らピルについて学ぶ機会はないと思ったからです。

今回のキャンペーンでは、親御様からお子さんに服用させたいという問い合わせもありました。少数ではありますが、親世代からのアプローチができる時代にもなってきているなと感じています。ピル=避妊と考えている方がまだまだ多いと実感していますが、スタートトゥデイ社長の前澤友作さんなど事業を支援してくださっている影響力のある人が、PMSについてSNSを通じて発信してくださっています。こういった影響力のある人の協力もお借りして、きちんとした情報を知れる機会を増やしていきたいと思っています。

――ピルについて正しい知識を知ることが重要なんですね。

そうですね。私たちの事業の中でも正しい知識を知ってもらうということを非常に重要視しています。「mederi Pill」では、ピルをお届けする際に、知識ブックを同封しています。知識ブックの中では、イラストなどを使用してわかりやすくピルの理解を得てもらえるよう工夫をしています。同じように「Ubu」で販売するサプリメントをお届けする際にも妊孕(にんよう)力にまつわる知識ブックを入れています。私たちはピルやサプリメントなどのモノを届けているようで、正しい知識を届けるという感覚で事業づくりをしています。

「mederi Pill」キット。中には持ち歩きやすい専用のピルケースやピルについてのガイドブックが同封されている

――前澤さんの支援は資金面以外でも大きな力となっているんですね。支援はどのようなきっかけからスタートしたのですか?

昨年の1年間は、「Ubu」の商品をゼロから作って販売していましたが、社長業の一環で資金調達をしつづけた1年となりました。「Ubu」がスタートする直前に、前澤さんの支援についての募集をTwitterで発見し、「おもしろそう!」と思って応募しました。なので、計4331件の応募があったと公表されていますが、皆さんと同じように応募して選考されたんです。

――その中でも唯一の女性という感じでフォーカスされることも多いと思いますが、ご自身としてはどのようにお考えですか?

前澤さんの中では、女性だから男性だからというテーマはなく、その事業が本当に世の中の役に立つことなのかということを意識して選ばれていると思います。

――ご自身の実体験をもとに「悲しむ女性がひとりでも少なくなるよう、情報発信をしたい」というところがサービスを始めたきっかけになるんですね。

そうですね。昔は「かわいくなりたい」や「きれいになりたい」といったルックスのことばかり気にしていました。でもいざ、この人と生涯を共にしたい、家族を持ちたいというパートナーと巡り合ったときに、妊娠や出産に対してこんなにもお金と時間がかかるという事実に驚きました。私は自分自身の人生について入念に計画を立てていたはずですが、計画にはない想定外のことに出会ってしまったんです。だからこそ、私の体験をもとにしたサービスが女性たちへの啓蒙にもつながればいいなと思っています。

起業家として考える女性のキャリアと妊娠・出産との両立とは

――坂梨さんも人生計画にはない想定外のことに出会ってしまったとのことですが、女性がキャリアを考えていく中で、妊娠・出産についてどう向き合っていくべきだと思いますか?

今は世間的にキャリアに年齢は関係ないというふうに言われていて、社会全体として女性が働きやすく、活動しやすいようになってきていると私自身も感じています。一方で、妊娠や出産は年齢制限があります。35歳から確実に妊孕力にんようりょくは下がってくるっていう医学的なデータもあるので、将来妊娠したいと考えている人は、35歳までにどうやってキャリア設計をしていくかということを考える必要があるなと思っています。

――キャリア設計をしっかりしていても、思い通りにいかない人も多いと思います。そういったときはどのように向き合い、考えれば良いと思われますか?

不妊治療にも共通しますが、A案がベストだと思っていてもB案やC案など他の選択肢を用意することが重要だと思います。A案と決めていてその通りに進まないと絶望感や失望感は大きくなると思いますが、B案やC案などリスク回避策として次の候補が用意できていることで、うまくいかないときも自分の気持ちの整理をして未来に向かいやすくなると思います。私は不妊治療を始めて、自分の心を守るための予防線を張るようになりました。

――不妊治療は精神的にもかなり大変だと思いますが、坂梨さんご自身が心の健康を保つために気を付けていたことは何ですか?

終わりどきを決めるのは重要だと思っています。私は26歳から不妊治療を始めたので、30歳後半になるまでに授かれなかったら、卵子提供による妊娠など次のステップへ進むことも視野に入れています。不妊治療は先が見えず、自分でタイミングを決められないことがつらいと感じています。なので、夫婦で話し合い、パートナーの理解を得ることが何よりも重要だと思います。私たちも本当に子どもが欲しいのかというところから話し合いました。そこから自分自身の気持ちの整理ができ、つらい時はケーキを食べて寝る!と少し気持ちの切り替えができるようになりました。

自身の不妊治療について語る坂梨さん

理想のかかりつけ婦人科医の見つけ方

――坂梨さんは昔から定期的に婦人科に通われていたとお伺いしたのですが、「かかりつけ婦人科医」についてはどのようにお考えですか?

私は、高校生のときからずっと婦人科に通っていました。ただ、上京してからは通う婦人科を引っ越す先々で12年単位で変えてしまったことは後悔しています。もしも、同じところに通い続けていたら、身体のことで早く気づけたこともあっただろうなと思っています。婦人科は、女性の健康にとって必要なものだと考えているので、長く付き合える信頼できる医師と診断が必要だと思います。

――私も上京してから信頼できる医師に出会えず、診断結果を蓄積したほうが良いことは理解していますが、通う婦人科をかなり短いスパンで変えてしまっています。坂梨さんはどのようにご自身に合う婦人科を見つけられましたか?

婦人科を選ぶときは、本当に通いやすさが重要です。ジム感覚というと語弊があるかもしれませんが、私にとって婦人科はジムや習い事に近い感覚で、まずはどれだけ自分にとってアクセスの良い居場所にあるかを重視するべきだと思います。仕事で忙しいとかプライベートを充実させたいとか、230代の女性にはいろんな思いがあると思うので、まずは本当に通いやすく、自分にとって親近感のある場所で選んでほしいです。

もちろん症状によって先生の得意・不得意な分野があるので、私は医師の経歴も拝見させていただくようにしています。不妊治療を始めて気づきましたが、生理やPMSについてはどの先生もスキルセットをお持ちですが、不妊や子宮の病気の話などになるとやはり先生方の専門分野があるので、そこに注目することはとても重要だと思っています。

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