割烹と芸妓文化をカジュアルに楽しめる福井の隠れ家スポットとは

さまざまなジャンルのシェフが注目している福井県の食材。古くは、御食国みけつくにとして豊富な海産物や塩を都に運んでいた歴史があります。食材はもちろんのこと、生産者や料理人の情熱とパワーは今も健在。注目の割烹料理店で、旬の味覚を楽しみました。

大吟醸のグラニテに心が躍るスペシャルな割烹料理

訪ねたのは福井駅からほど近い、かつて花街として栄えた浜町界隈。江戸時代から明治時代初期にかけて、一帯には料亭が軒を連ね、足羽あすわ川の河岸は舟遊びをする人でにぎわっていたといいます。当時は水運が盛んで、福井城下の船着き場があったことから「浜町」と呼ばれ、花街として発展したそうです。

開花亭sou-an
「開花亭sou-an」の外観に表現されているのは、福井の伝統的繊維産業をモチーフにした織柄

いにしえの風情を残す浜町にあるのが、割烹料理店「開花亭sou-an」。130年の歴史を誇る老舗「開花亭」の姉妹店です。「開花亭」といえば、「2010年日本APEC」の首席代表歓迎晩餐ばんさん会場にもなった、福井有数の料亭として知られています。女性に圧倒的な人気を誇るのは、その味わいを、肩肘はらずモダンな雰囲気で楽しめるからでしょう。

和の雰囲気を想像して伺うと、博物館のような建物に迎えられました。こんなお店なら、気負わずに入ることができます。空間デザインを手がけたのは、世界的な建築家・隈研吾氏。木格子で覆われた外観がとても斬新です。

モダン割烹と聞くと創作料理をイメージしてしまいますが、こちらでいただけるのは、伝統に基づいた日本料理。福井の旬を大切にし、二十四節記をモチーフにした料理を提供しています。

これらの料理を手がけるのは、「現代の名工」に選ばれた畑地久満料理長です。私は各地で何度か「現代の名工」の料理をいただいたことがありますが、その名を冠する人は何十年という経験を積んだ方がほとんどでした。畑地料理長は40代と伺ってびっくり。なんと、43歳で受賞したそうです。

左上から時計回りに、先付けの「たけのこの木の芽みそ掛け ほたるいか」、お造りの「甘鯛の昆布〆 菜の花しょうゆ」、焼き物の「真河豚の若狭焼き 白子 あぶりすがも」、食事は「大吟醸グラニテ蕎麦」。

料理は、先付けのホタルイカ、お造りの甘鯛あまだいの昆布じめ、焼き物の真河豚まふぐなど、厳選した福井の食材が続きます。料理がおいしいのはもちろんとして、越前漆器や越前焼など合わせる器も美しく、まるで一枚の絵を次々と鑑賞しているような気分になりました。お品書きからイメージしていた料理とはまったく違う見た目にも、ワクワクさせられます。

私が最も驚いたのは、福井名物のお蕎麦そばでした。一見すると、大根おろしをのせた越前おろし蕎麦ですが、蕎麦にのるのは大根おろしに見立てた大吟醸のグラニテ! フレンチの技法であるグラニテ(果汁やシャンパンなどを凍らせた氷菓)をお蕎麦と合わせていただくのは初めてです。おだしと大吟醸の香りと蕎麦の風味に、すっかり心が満たされました。

お腹が満たされた後は、テクノロジーを駆使したお座敷遊びを体験

「開花亭sou-an」では、料理のほかにもサプライズがありました。それは、シャンパングラスに注がれた「ESHIKOTO AWA 2018」。福井県永平寺町の老舗、黒龍酒造が作るスパークリング日本酒です。シャンパンと同じく瓶内2次発酵で生まれる泡はきめ細やかで、口当たりもよく、とてもよい香り。

 瓶内2次発酵は、福井県特産の笏谷石しゃくだにいしで作った貯蔵セラーで行っているそうです。製法といい環境といい、個性的なこのお酒は、わずか1500本しか出荷していません。ちなみに、次の発売は秋を予定していますが、すでに予約で完売しているそうです。

かつての和風旅館を改装した芸妓バー「浜町 日々」。入ってみればとても寛げる雰囲気

 お酒と美食に満たされた後は、ご近所を散策してみました。見つけたのは、伝統的な芸妓文化をカジュアルに楽しむことのできる隠れ家的バー「浜町 日々」。福井・浜町芸妓組合の理事長でもある今村百子さんが、限られた空間でしか披露されてこなかった芸妓の技を多くの人に広め、カジュアルに楽しんでもらいたいと立ち上げたお店です。

ちょっと奥まった玄関こそ敷居が高く感じますが、中に入るとスタイリッシュな雰囲気。金色に施されたステージでは、芸妓さんたちの日本舞踊や三味線、唄を楽しむことができます。

スクリーンに浮かび上がる芸奴さん。テクノロジーで味わう伝統が楽しい

素晴らしいのは、伝統を楽しめる空間でありながら、テクノロジーが駆使されていること。ステージには透過型スクリーンが設置され、様々な演出が行われるのです。たとえば、三味線を弾く芸奴さんがホログラム的に空間に浮かび上がっているように見えたり、スクリーンに小唄の歌詞が浮かび上がったりと、いわゆる「お座敷遊び」のイメージを覆します。それでいて、芸妓文化をしっかり楽しめるのだから、これは楽しい! 気になる料金は90分のフリードリンクで9900円(税込み)です。

「浜町 日々」は、「開花亭sou-an」から歩いて数十秒のところにあります。割烹料理を味わい、お座敷遊び。かつての花街で体験したのは、他ではなかなか楽しめない文化でした。

(取材・芹澤和美/写真・上田順子、協力・福井県)

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