イマドキ新人のトリセツ…ソロキャンプ型なのに孤独が離職リスク

キャリア小町その26

やる気まんまんの新入社員。イマドキ新人は分からないという声も聞かれます。

「職場の困った人間関係」を考えるシリーズの最後のテーマは「令和時代の新人」です。「イマドキの新人の考えていることはさっぱりわからない……」。4月に新入社員を迎えた会社で、教育担当や面倒を見る役割を担った人の中には、そんな悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。

今春大学を卒業し、社会人になった新入社員の多くは199899年の生まれ。同学年の有名人と言えば、広瀬すず、橋本環奈、齋藤飛鳥、長濱ねる、鞘師里保といった逸材ぞろいで、芸能界では「奇跡の世代」とも呼ばれています。彼女たちと同年代の「イマドキ新人」の傾向と対策を理解することで、将来の戦力として育てるのはもちろん、職場全体の雰囲気をアップデートするチャンスと捉えてはいかがでしょう。

2021年の新入社員は「ソロキャンプ」タイプ

企業の人事担当者や大学のキャリアセンター職員らへのアンケート、企業の採用状況などを踏まえ、その年の「新入社員のタイプ」を発表している産労総合研究所(平盛之代表)は、2021年4月入社の新入社員に「仲間が恋しい ソロキャンプタイプ」と名付けました。

コロナ禍で孤独な就職活動に不安を抱えつつ、試行錯誤しながら、たくましく難局を乗り越えた新入社員たちの奮闘ぶりを、最近ブームとなっている1人でキャンプを行う「ソロキャンプ」に見立てたのです。オンラインを活用した就活は、周囲の目を気にせず、自分のペースで取り組める気楽さを見出す人も少なくありませんでした。その一方で、孤独の寂しさも強く感じ、仲間や社会とのつながりを強く求める傾向があります。

2021年の新入社員は「ソロキャンプタイプ」。写真は1人でキャンプを楽しむ女性、ソロキャンプの様子です
写真はイメージです

企業の採用広報活動が始まる大学3年の3月以降、彼らの就活は新型コロナウイルスの感染拡大とともに始まりました。合同企業説明会や就活セミナーなどが相次いで延期や中止となり、急きょオンラインによる説明会や面接に切り替わるなど、柔軟な対応が求められました。

採用人数を大幅に減らした業界もあり、志望企業を変更せざるを得なかったり、モチベーションを維持できずに就活を断念したりする学生もいました。例年とは異なる採用プロセスだったため、達成感や手応えを感じられず、自らの選択に迷いを抱えたまま入社した新入社員もいるでしょう。

就活を通して身に付く社会のルールやビジネスマナーも、オンライン就活が主流だったために十分ではない可能性があります。

スマホでSNSや動画が当たり前

新入社員が育った環境を考えると、対面によるリアルなコミュニケーションよりも、文字やスタンプなどを用いた非対面のコミュニケーションが多くなったことが挙げられます。スマートフォンが当たり前の彼らは、ツイッターやインスタグラム、YouTubeなどで情報を収集するのみならず、自ら発信もします。

インターネットに慣れ親しんでいる彼らは、誰かに質問をしたり、自ら尋ねたりするよりも前に、グーグルで検索するのが癖になっています。そして、検索で得られた“答え”を、自分なりの解釈で理解したような気になっているきらいがあります。

電話さえも煩わしいと感じ、LINEでやりとりするのが当たり前です。苦手な相手との関係構築を避け、面倒な人間関係はスルーしてきました。その一方で、心理的安全性が約束された家族や特定の仲間との関係は濃密です。親や友人の期待に応えたいという気持ちが強く、「褒められたい」「感謝されたい」「必要とされたい」という承認欲求が原動力となることも少なくありません。

誰かと深くつながりたいという願望を抱えつつ、他人のプライベートに踏み込んでいくほどのモチベーションも経験も持ち合わせていません。そのため、なんとなく遠慮がちな関係性に終始してしまう葛藤も抱えています

イマドキ新人は「素直で真面目だけど・・・」

いわゆる「ゆとり世代」の新入社員は、個性や自分らしさを重視する教育環境で育っています。誰かに勝ちたいとがむしゃらに取り組むというより、「自分が期待されている」「自分の力が必要とされている」と感じられるほうが、積極的になれるのです。

「褒められたい」「期待に応えたい」という気持ちが強いあまり、間違いや失敗には臆病です。「正解」のない質問をされたり、業務の指示が明確でなかったりすると、とたんに尻込みしてしまいます。自分の判断が求められるような場合は、注意や叱責を受けないように無難にまとめようとしがちです。

「素直で真面目だけど、言ったことしかやらない……」。イマドキ新人がこんなふうに言われるのは、彼らの長所と短所を端的に表しているためでしょう。

イマドキ新人を戦力にする方法

イマドキ新人が、指示された以上のことをやるのは苦手でも、「素直で真面目」なので、指示する側が期待するゴールを明確に示すことで、業務はきちんと行われる可能性があります。

彼らは、自分を理解してくれた相手やお世話になった人に対し、「この人の役に立ちたい」という思いを強くします。日頃から、新人に「ありがとう」「助かった」などの承認や励ましの言葉をかけてあげることが大切です。LINEで何げない会話を積み重ねることで、注意やアドバイスも聞き入れられるようになります。

逆に、仕事に目的意識が持てず、誰かのためにというモチベーションもなければ、イマドキ新人はあっさりと会社を辞めてしまいかねません。人当たりがよく真面目なだけに、悩みを打ち明けられる関係性が作れずに孤独を感じたら、職場に自らの存在価値を見いだせません。

周囲は、突然の離職はイマドキ新人らしい奇っ怪な行動と映るかもしれませんが、彼らにはそれなりの理由と経緯があるのです。

新入社員を叱責する上司。叱られることは期待しているという意味だそう
写真はイメージです

仕事に「正解」は見つけられない

指導担当者は、学校の試験のような「正解」を仕事では見つけることができない、ということを新人に繰り返し伝えてください。仕事では、その時々の「最適解」にいかに近づけるかということが大切なのです。

もっとも、最初から「最適解」を見つけられる新人なんていません。分からないことは周囲に相談し、一つひとつ課題を乗り越え、時には失敗することがあっても、前に進んでいくことです。

上司や先輩からの注意や叱責は、「期待している」という意味でもあるということを理解してもらえれば、イマドキ新人のモチベーションがなえることはないでしょう。

会社は、幅広い世代が一緒に働く場。世代間ギャップがあるのは当然で、いつの時代もイマドキ新人は、理解不能に思われる存在です。それでも、必ず彼らのどこかにある「やる気スイッチ」を見つけて可能性を伸ばすことが、かつて「イマドキ新人」だった上司や先輩たちの役割でもあります。

「さっぱり分からない」と切り捨てるのではなく、新たな価値観や考え方に触れるチャンスと捉えると、職場の活力にもなります。

自分らしい働き方や生き方を考える「キャリア小町」。キャリアコンサルタントの土屋美乃さんが、仕事の悩みや転職の不安などについて働く女性にアドバイスします。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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