PayPayで受け取れる! 解禁なるか、給与のデジタル払い

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お給料の受け取りと言えば、銀行口座を利用するのが一般的ですが、今年からその常識が覆るかもしれません。というのも、スマートフォンの決済アプリなどで給与が受け取れる可能性が高くなってきたからです。今回は、注目の「給与のデジタル払い」について解説します。

銀行口座を介さず、スマホ決済アプリに振り込み

給与のデジタル払いは、厚生労働省の審議会で論議が進められており、政府が近々解禁するものとして話題になっています。ソフトバンクは先日、解禁を見据えて、キャッシュレス決済「PayPay(ペイペイ)」を使って、社員に10万円の特別手当を支給しました。

デジタル払いが解禁されれば、企業は、従業員の給与を銀行口座を介さず、資金移動業者として登録しているPayPayや楽天ペイなどのスマホ決済アプリなどに振り込めるようになります。

給与を受け取る側としても、これまでは「給与を受け取るのは銀行口座」が常識でしたが、選択の幅が広がりそうです。

そもそも、給与の支払いについては、労働基準法24条で「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されています。法律をもう少し細かくみてみると、「(1)通貨」で「(2)直接」、「(3)全額」を「(4)毎月1回以上」、「(5)一定期日に」支払うこととされていて、これを「賃金支払いの5原則」といいます。

政府は現在、給与をデジタル払いにできるようにするほか、支払い頻度なども柔軟に決められるよう検討しています。

給与の一部受け取りが現実的

キャッシュレス推進を図る政府の後押しもあり、最近は若い世代を中心に、スマホ決済を利用している人が多いですよね。読者の中にも、「給与がPayPayや楽天ペイで受け取れたら便利!」と思っている人は少なくないのではないでしょうか。

銀行口座を介さずにスマホ決済アプリなどに直接給与が振り込まれれば、銀行口座やクレジットカードなどからチャージする手間が省けます。また、普段使いのスマホ決済アプリに給与が入金されれば、買い物もスムーズ。買い物をするたびにポイントもたまって、さらにお得ですよね。

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一方で、もしも給与の全額をスマホ決済アプリで受け取るとなると、クレジットカードの利用代金や公共料金、家賃など、銀行口座から引き落とされる費用の支払いに困ります。また、給料日に銀行口座から積立定期預金をしている場合などには、計画的に貯蓄ができなくなる可能性もあります。

そのため、デジタル払いでは、スマホ決済アプリで買い物をする代金分など、給与の一部を受け取る形で利用するのが現実的かもしれません。

実際、デジタル払いが解禁になっても、原則として銀行口座への振り込みとデジタル払いを併用することになる見込みです。例えば、25万円の給与のうち、20万円は銀行口座に、5万円は決済アプリに振り込んでもらうというイメージです。

給与をデジタル払いするうえでの注意点は?

給与のデジタル払いには、他にも注意すべき点があります。一番懸念されるのが、自分が使用しているスマホ決済などの資金移動業者が経営破綻してしまった場合です。

例えば、銀行や他の金融機関が経営破綻した場合には、「預金保険制度」が適用になり、「預金口座の元本1000万円」まで保護されます。金融機関は、そのために保険料を負担し、厳しい自己資本規制も課されています。

一方、スマホ決済などの資金移動業者は、利用者の資金の全額を供託などで保全する必要がありますが、取扱額が日々変動していることから、タイムラグが生じ、経営破綻時には保全額が十分ではないこともあり得ます。仮に払い戻せる場合でも、返金までに半年程度かかるとされています。

また、電子マネーを狙った不正や犯罪も懸念されます。記憶に新しいのが、NTTドコモの「ドコモ口座」を巡る不正引き出し事件です。ハッキングなどによる資金の不正流出やセキュリティーの不備による不正送金をどう防ぐかも課題でしょう。加えて、アカウントが乗っ取られてしまった場合の補償についても、早急に整備を進める必要があります。

いずれにせよ、今後、デジタル化の流れは加速することでしょう。給与のデジタル払いについても、注意点やデメリットもよく理解したうえで、生活の中に上手に取り込んでいきたいものですね。

高山一恵さん
高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャルプランナー

 慶應義塾大学卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画。2015年から株式会社Money&Youの取締役。結婚、出産、夫の転勤など人生に多くの転機が訪れる女性にこそお金の知識が必要と考え、講演、個人マネー相談のほか、雑誌の記事執筆やテレビ番組出演など精力的に活動している。著書に「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)、「ゼロから始めて2時間で一生困らないマネープランができる本」(彩図社)など。