【働く女性とSDGs】コロナで進む「女性不況」の背景にある不平等

働く女性とSDGs

なぜ女性は貧困に陥りやすいのか。SDGsに照らして日本総研の村上芽さんの解説

SDGsは、これからの暮らし方・働き方に欠かせない世界の共通目標として注目されています。でも、自分がどう関われるのか分からないという人も多いのではないでしょうか。働く女性が、これだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんが解説します。6回目のテーマは「女性と貧困」です。

【質問】
飲食店で働く30代の母と2人で暮らす女子中学生。大学進学の夢がありますが、最近、母から「高校は就職に強い商業科がいいんじゃない」と言われました。新型コロナウイルスの影響で、母の勤務時間や収入も減っているみたいです。苦しい家計を考えれば、塾に通いたいなんて言ってはいけませんね。

コロナ禍が、外食や観光関連産業などを直撃しています。こうした対人サービスの多い業種で休業や営業時間短縮が起こると、時給で働く非正規雇用の労働者から仕事がなくなってしまいます。

そして、ダメージを受けている業種は、もともと女性の多い職場でもあることから、悪影響を受けるのは女性が多い、という結果になってしまっています。相談者のお母さんもその1人なのでしょう。

野村総合研究所が今年3月に発表した推計では、全国のパート・アルバイトのうち女性103万人、男性43万人が、「シフト勤務が半分以下に減る」「休業手当を受け取れない」など、失業に近い状態にあるとされました。

このような事態は、海外でも「彼女(she)」と「不況(recession)」を組み合わせて「女性不況(she-cession)」という言葉が生まれるなど、各国に共通しています。

働く女性の人数やその収入は、これまで増えてきましたが、それが一気に後退してしまった状態だといえます。 この状態に対して、政府は支援を増やすことを検討しています。急場をしのぐことに加え、そもそもなぜ女性の方が影響を大きく受けてしまったのか、という背景について分析し、どうすれば改善できるのか、考える必要があるでしょう。

女性の給与は男性の75%

日本では、人口に占める働く人の割合を示す「就業率」が、女性の場合、2001年の57%から2019年には71%とぐっと上昇しました。ところが、所定内給与(残業などの手当を除いた給与)をみると、女性は男性の約75%で推移しており、25%近い差があります。

これは、グラフで示したように、先進国の中でも日本は男女の給与に大きな差があるのです。つまり、働く女性は増えたけれども、男性と比較すると賃金の低い人が多い、ということです。

女性と貧困をテーマに解説。男女の給料格差を示した国別に示したグラフ。コロナで女性が経済的な影響を受けやすいのはなぜなのでしょう?
国別にみた男女の賃金格差(単位:%)(経済協力開発機構 Gender wage gapのデータより)

この辺でSDGsをみてみましょう。SDGsでは8番目に「働きがいも経済成長も」という目標があり、そのなかに「働きがいのある人間らしい仕事」というキーワードが示されていることは、連載2回目の「育休取得率は女性も低かった…SDGsの『人間らしい仕事』とは?」の中で触れました。

「働きがいのある仕事」という言葉には、働きに見合う十分な収入があるという意味も込められています。また、「同一労働同一賃金」とも書かれており、男性でも女性でも同じ仕事に対しては同じ賃金であるべき、つまり、上記のグラフは本来ゼロになるべきということを意味しています。

放置される「成果の不平等」

今回は、SDGsの10番目にある「人や国の不平等をなくそう」という目標も紹介したいと思います。この中には、「差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する」とあります。

後半で指摘されているのは、「機会均等を確保」と「成果の不平等を是正」です。「機会均等」とは、「女の子/男の子だから、こういう勉強をすべきだ、仕事につくべきだ」などといった偏見をなくし、誰にでも挑戦するチャンスがあることをいいます。さらに、成果についても、なるべく不平等にならないようにしようと言っているのです。

日本で、女性の賃金が男性と比べて低い状態が続いていることや、コロナの影響で女性が仕事を失いやすい状況になっていることは、ここでいう「成果の不平等」が放置されているともいえるでしょう。

女性の占める割合が高い仕事は、仕事全体の中で比べると賃金が低いという実態もあります。例えば、女性が経済的に自立し、長く働き続けやすいイメージがある教師は、同等の大卒者に比べて賃金(男性も含む)が低い、という調査もなされています。これも日本に限らない先進国の状況です。

暮らしの経済的な基盤である仕事や給与についてみていくと、貧しくて困っているという状態を単に個人の選択の結果と済まさずに、社会全体で考えていく必要がある気がしてきませんか。

経済的な理由で進路を悩んでいる学生の方には、コロナも家庭の事情も自己都合ではないのだから、困っていることや助けが必要なことを、周囲にぜひ積極的に伝えてほしいと思います。

SDGsが掲げる17のゴール
SDGsが掲げる17のゴール

SDGsSustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「飢餓をゼロに」「平和と公正をすべての人に」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「図解SDGs入門」(日経BP)。