【働く女性とSDGs】なぜ都会の若い女性が「飢餓」のリスク?

働く女性とSDGs

SDGsの目標に「飢餓をゼロに」があります。都会に暮らす若い女性が栄養不足になるのはなぜでしょう?

SDGsは、これからの暮らし方・働き方に欠かせない世界の共通目標として注目を集めています。でも、自分にどう関係があるのか分からないという人も多いのではないでしょうか? 働く女性が、これだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんが解説します。5回目のテーマは「女性と栄養」です。

【質問】
地方在住の30代男性。都内のIT企業に勤める遠距離恋愛中の彼女がいます。新型コロナウイルスの影響でしばらくデートを控えていました。先日、久しぶりに会った彼女がやせ細っていて驚きました。在宅勤務で深夜まで仕事をすることもあり、半年で10キロほど減ったそうです。「ダイエットになった」と茶化しますが、一人暮らしの彼女がちゃんと食べているか心配です。

半年で体重が10キロ減というのは大きいですね。在宅勤務で食生活が乱れたり、気分が落ち込んだりするという話はよく耳にします。彼女の体調が心配です。さて、「若い女性がやせたこととSDGsに何の関係があるの?」と思われるかもしれません。その疑問を少しずつひもといていきたいと思います。

20~30代の女性5人に1人がやせ

 SDGsに17の目標があります。順番に見ていくと、最初に「貧困をなくそう」、2番目に「飢餓をゼロに」と続きます。国連の掲げる目標で「貧困」や「飢餓」というと、私たちはつい、途上国の課題だと思ってしまいがちです。

企業のSDGsの取り組み状況を調べた日本経済団体連合会(経団連)のアンケート(202010月発表)でも、17の目標の中で「取り組んでいる」という回答が少なかったのは「貧困」や「飢餓」です。

ところが、「飢餓をゼロに」の中身を詳しく見ると、「5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う」とあります。

前半は乳幼児のことですが、後半部分は若い女性や高齢者の栄養改善を求めています。では、日本の若い女性の栄養状態はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、やせている(BMI18 .5未満)女性の割合は、20代と30代のいずれも5人に1人程度を占めています。

必要な栄養の摂取状況について、よく指摘されるのが「鉄分」です。特に月経のある女性は、生理出血で鉄分が失われるため、10人に1人が鉄分不足や貧血と言われています。

食費を切り詰める都会の暮らし

やせすぎや栄養不足にならないためには、栄養バランスのとれた食事をすることです。そして、この食生活を支えるのに必要なのが食費です。

総務省の家計調査で2002年と2020年を比較すると、34歳以下の働いている単身女性は、1か月の消費支出が1万8000円近く減っています。食費は2500円の減少。被服費、交通・通信費、教養娯楽費などが軒並み減っている一方で、住居に関する支出は増加しました。

同じように仕事を持つ単身女性でも、3559歳では、2002年と2020年の消費支出にさほど変化は見られません。つまり、34歳以下の単身女性の暮らしで、支出全体に占める住居費の割合がひときわ高まったことがうかがえます。

この調査では都道府県別の詳細は分かりませんが、若い女性が都会に集中している傾向を反映しているのかもしれません。

日本総研の村上芽さんが解説する「働く女性とSDGs」。女性の支出状況の変化を示すグラフ
女性単身世帯(勤労者)の消費支出の変化(総務省「家計調査 家計収支編」第2表より)(左の数字の単位:円)

食費の内訳を詳しく見てみましょう。34歳以下の単身女性は、2020年に1か月の食費が約3万円でした。このうち、約12000円を外食で支出しています。とすると、残りの約18000円は自宅での食事と考えられますが、30日で割ると1600円。飲み物やお菓子も含まれます。どうでしょうか。かなり、切り詰めている感じがします。

2020年は新型コロナの感染対策による「巣ごもり消費」で、家庭で購入する生鮮野菜の量や金額が前年より増えました。この点についても、34歳以下の単身女性は、2019年の月1188円が1295円に増えただけでした。1か月に107円というと、モヤシなら2~3袋いけそうですが、それでもほんのわずかです。

体も心も元気な社会を目指す理由

若い女性のやせすぎや栄養不足は、日々の仕事や趣味をするにも体力的に不安があるばかりか、加齢とともにさまざまな病気にかかる恐れがあります。

これから妊娠・出産をしようとする人であれば、赤ちゃんが小さく生まれる低体重児につながる可能性があります。低体重で生まれる子どもは、ゆくゆく生活習慣病などのリスクが高いことも分かっています。

若い女性のやせすぎや栄養不足の背景に、食費をぎりぎりまで切り詰める暮らしぶりが垣間見えます。ひっ迫した生活で十分な食事やバランスの良い栄養が取れないといった、途上国の飢餓に似た深刻な社会問題が潜んでいるのです。

だれもが栄養をしっかりと取ることができ、体も心も元気な社会――。そんな当たり前と思える未来をSDGsが目標に掲げるのは、やはり現状に課題があるためかもしれません。

SDGsが掲げる17のゴール
SDGsが掲げる17のゴール

SDGsSustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「ジェンダー平等を実現しよう」「海の豊かさを守ろう」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「図解SDGs入門」(日経BP)。