アストロスケール エンジニアが目指す「宇宙ゴミ」のない未来

働く女のランチ図鑑vol.48

衛星管制システム エンジニア 小堀加奈絵(36)

広大な宇宙空間には、10センチ以上の「スペースデブリ」が2万個以上も漂っているといわれています。スペースデブリとは、壊れた人工衛星の破片やロケットの先端部分といった「宇宙ゴミ」のこと。秒速約8キロの速さで、地球の周りを回っています。

そのスピードは弾丸より速く、1分で東京から大阪まで到達できる速さ。稼働中の人工衛星や宇宙船とぶつかれば、大きな事故につながる恐れがあるのです。

世界の民間企業に先駆け、人工衛星を使ったスペースデブリの除去サービスの開発に取り組んでいるのが、「アストロスケール」です。私は、地上エンジニアの一人として、除去実証衛星の管制システムを整備しています。

「ぽくない」おかゆランチ

社員一人ひとりの裁量が大きく、忙しい日も少なくありません。特に最近では、今月20日に行われる除去実証衛星「ELSA-d」の打ち上げに向けて、慌ただしい日々を過ごしています。

このプロジェクトでは、スペースデブリに見立てた機器を、軌道上で「ELSA-d」から分離。「ELSA-d」は、カメラの映像などをもとに再び機器に近づき、最後は強力な磁石を使って回収します。除去サービスの実用化に向け、絶対に成功させたいプロジェクトです。システムの運用リハーサルや打ち合わせなど、毎日最終調整を重ねています。

疲れて食欲がないな……と感じた時に向かうのが、おかゆ専門店「CAYU des ROIS(カユ・デ・ロワ)亀沢店」。入社したばかりの時、女性の先輩に勧めてもらいました。おかゆなのに、おかゆっぽくない味付けが魅力です。

お気に入りは「POPEYE(ポパイ)」というメニューです。ちょっとクリーミーで、一口食べると、ホウレンソウの甘さと風味がしっかり口に広がります。カリカリに焼いた肉厚ベーコンがのっているので、おなかもいっぱいに。栄養が足りない時には、サラダも注文します。体に優しいだけでなく、満足感のあるランチを楽しめます。

一つの人工衛星に関わる多くの専門チーム

「ELSA-d」プロジェクトでは、イギリスと日本の衛星管制センターが拠点になります。人工衛星を開発するチームや、地上システムを整備するチーム、実際にシステムを運用するチーム。一つの人工衛星を管制するために、国をまたいで様々な分野のスタッフが関わっています。

各分野のプロフェッショナルと働けることはやりがいである一方、密に情報共有しながら仕事を進めなければならず、コミュニケーションの難しさも感じます。以前、実際に「ELSA-d」をシステムにつないでデータを送受信するテストをした時のこと。「ELSA-d」から送られてくるデータを受信・解析し、それが管制センターの大きなモニターに映し出されるはずでした。ところが、日本ではデータを受信できませんでした。

多くのシステムや機器が連動しているため、原因はすぐに分かりません。「そもそも衛星から送られてきたデータは合っているか?」「使用した仮想プライベートネットワーク(VPN)に問題はないか」。それぞれの担当チームとやりとりしながら、時間をかけて原因を探っていきました。他のテストでは、一つの原因を特定するために数か月かかったこともあります。

海外のチームとは時差もあるので、時には、やきもきすることも(笑)。ただ、新しいシステムを設計する以上、様々な問題が出てくるのはしょうがないことです。「優先順位を決めて、一つずつ解決していくしかない」と、なるべく冷静でいるようにしています。

一冊の本との出会い

高校の頃、物理が好きでした。世の中で成り立っているものが、物理の方程式で表せるのが面白かったのでしょう。学校の図書館で、理論物理学の専門書などを借りては、読みふけっていました。

卒業後は大学の工学部に進み、数値解析などを勉強しました。「すでに完成した事業を仕事にするより、発展途上の面白い仕事をしてみたい」と就職先を考えた時、高校の頃に読んだ一冊のSF小説を思い出したのです。

それは、アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」。作中に描かれる宇宙の旅や生活は、当時の自分の生活とはかけ離れていましたが、「技術が進歩したら実現できるだろうなあ」とわくわくしながら読んでいました。

大学を卒業した2007年、宇宙システム開発を行う大手企業に就職。いろんな技術が身につくにつれ、裁量の大きな仕事をしてみたいと思うようになり、18年、アストロスケールに転職しました。小さい会社なのに地球規模の問題に取り組む姿勢に感動したし、この会社はもっと大きくなるだろうという予感があったのです。

持続可能な宇宙環境を夢見て

高校の時に夢見た宇宙での生活は、フィクションではなく現実的なものとして捉えられつつあります。テレビ中継やGPS、気象観測……人工衛星は、もはや私たちの暮らしの重要なインフラを担うようになりました。そんな中で、スペースデブリ問題の解決は、今後いっそう重要になってくるでしょう。除去サービスのビジネス化を急がなければいけません。

スペースデブリを減らせば、人工衛星やロケットを安心して飛ばせる宇宙空間になる――。そんな持続可能な宇宙環境を夢見て、システムの技術開発を進めていきたいです。

(取材・読売新聞メディア局 森野光里、撮影・稲垣純也)

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生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

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稲垣純也
稲垣 純也(いながき・じゅんや)
カメラマン

1970年愛知県生まれ東京在住。篠山紀信氏に師事。2002年独立。雑誌やWebを中心に主に人物撮影。得意分野は女性ポートレイト。

Junya Inagaki