SDGsが求める性と生殖の国家戦略…女性を守る2つの前提とは?

働く女性とSDGs

妊娠、出産について、SDGsはどのように考えられているのでしょうか?

SDGsは、これからの暮らし方・働き方に欠かせない世界の共通目標として注目を集めています。でも、どうやって関わればいいのか分からないという人も多いのでは? 働く女性がこれだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんがシリーズで解説します。今回は「女性と健康」について考えましょう。

【質問】
70代女性。40代の一人息子の結婚が決まりました。相手の女性は30代後半。息子は子供が欲しいと言っていますが、40歳近い女性の初産は考えられません。体のことも心配ですし、不妊治療となれば、お金もかかり、つらい思いをするのではないでしょうか。息子に「早く孫の顔が見たい」と言っていたのを反省しています。

30歳を超えた第1子出産の平均年齢

息子さんの結婚というおめでたい話ですが、それでも心配事は続くのですね。確かに、35歳以上で初めての妊娠は「高齢初産」と分類され、出産に関するリスクが高まると言われています。また、そもそも妊娠しにくくなることも知られています。最近では、子宮や卵巣に関する病気や不妊症の患者も増えています。

日本をはじめ先進国では、女性の高学歴化や社会参画が進むとともに、晩婚化・晩産化が進みました。内閣府の少子化社会対策白書には、日本で第1子を産んだ母の平均年齢は上がり続けており、1975年には25.7歳でしたが、2011年に30歳を超え、ここ数年は31歳に近づきつつある状況が報告されています。

厚生労働省の人口動態統計によると、2019年に生まれた第1子は約40万人おり、このうち、ほぼ半分の49%が30代での初産でした。さらに細かく見ると、30代後半は17%、40歳以上は5%を占めています。つまり、初産だった女性の5人に1人以上が30代後半以降ということですから、「40歳近い女性の初産」が「考えられない」とは思わなくてよさそうですね。

第一子出産の平均年齢は30歳を超えています
第1子を出産した母の年齢分布(厚生労働省「令和元(2019)年 人口動態統計(確定数)」第4表より)

不妊治療に関しては厚労省が、赤ちゃん全体の約6%が体外受精などの生殖補助医療により誕生していると発表しています。ところが、「第1子のうち何%が不妊治療の結果誕生したのか」「年齢別の不妊治療中のカップル数」など、詳しく知りたい内容については、必ずしも情報が十分とは言えない現状です。

菅政権が力を入れる政策の一つに不妊治療対策があります。今後、当事者が知りたい情報や調査結果がまとまって出されることに期待したいものです。もちろん、不妊治療は男性も当事者ですから、女性だけでなく、男性に関するデータも欲しいですね。

出産について世界と日本で異なる事情

SDGsで不妊治療はどのように扱われているのでしょうか。17のゴールのうち、3番目に「すべての人に健康と福祉を」と掲げられた目標があります。ここに、「2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする」と、妊娠・出産に関する内容があります。

なじみのない言い回しばかりで、ちょっと分かりにくいかもしれません。この目標が達成できているかを測る指標として、「近代的手法によって、家族計画についての自らの要望が満たされている出産可能年齢(15~49歳)にある女性の割合」「女性1000人当たりの青年期(10~19歳)の出生率」が挙げられています。これらの指標が意味することは、世界と日本でやや事情が異なります。

全世界でみると、1人の女性が生涯で産む子どもの数は、2018年の平均で2.4人です。世界銀行が1人当たり国民総所得に基づいて分類した、日本を含む高所得国は1.6人ですが、中所得国が2.3人、低所得国で4.6人となっており、貧しい国ほど出産する子どもの数が増えます。

低所得国では、若い女性が早くに出産することで、教育を受ける機会を失っているという状況が問題となっています。そのため、「計画的に子どもを産めるようにしたい」とは、女性の意思を反映させた適切な避妊によって子どもの数を抑えることを意味します。これが世界の現状なのです。

一方、日本の状況を照らし合わせると、「家族計画について自らの要望が満たされている」とは、「子どもを欲しい人が産めるようになっている」と言い換えてよいかもしれません。

女性をサポートする「フェムテック」

最近では、妊娠のタイミングを逃さないようにしたり、月経のサイクルに伴う体調の変化や産後の心身の変化をきめ細かくケアしたりするなど、性や生殖に関する様々な新製品・サービスが登場しています。このようなテクノロジーを活用して、女性特有の悩みを解決しようというビジネスは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせて「フェムテック」と呼ばれ、注目されています。

ただ、女性が性や生殖、不妊などについて不安を感じるとき、「情報が少ない」「相談しにくい」といった感覚もまだまだ根強いでしょう。正しい知識と「相談していいんだ」という意識の二つが重要なのは、所得水準に関わらず世界共通です。

「仕事が忙しくて考える暇なんてない」などと自分の健康がおろそかになっていたら、黄信号が点滅している状態かもしれません。女性をサポートする新たな技術やサービスに関心を持って、自ら調べるということも健康への第一歩となるでしょう。そして、何よりも悩みや不安を一人で抱え込まないようにすることが、SDGsにつながっていくと言えそうです。

SDGsが掲げる17のゴール
SDGsが掲げる17のゴール

SDGsSustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「飢餓をゼロに」「人や国の不平等をなくそう」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「図解SDGs入門」(日経BP)。