青山フラワーマーケット エロティシズムや愛…追求する美の本質

働く女のランチ図鑑vol.47

パーク・コーポレーション 青山フラワーマーケット
ブランドクリエーター室 米野瑠璃(29)

淡いピンクのスイートピーや、フリルのような花びらがギュッと詰まったラナンキュラス、小さな花をいくつも咲かせるヒヤシンス――。春といえば、優しい色合いでかわいい花々を思い浮べる人が多いのではないでしょうか。

でも、春って、深い紫色の花が一番出回る季節なんです。そんな魅力を知ってもらいたいと、店頭で今配っているパンフレットには、あえて紫の花を生けたスタイリッシュな写真を載せました。

右が、現在店頭で配布されているパンフレット

「青山フラワーマーケット」を創造する

ブランドクリエーター室は、ブランドのイメージを統一し、新しい価値を生み出すのが役割です。例えば、季節の商品や新しい店舗の内装など、「青山フラワーマーケット」という名前で世に出るものは、全てクオリティーをチェックします。さらに、商品開発の担当者やデザイナーらと一緒にパンフレットに載せるブーケなどを作って撮影したり、季節限定の商品を試作したり。業務は多岐にわたります。

仕事をする上で、大切なのは「常に新しい花の魅力を提案すること」。ただ、ブランドイメージも保たなければならないのが、難しいところです。「どんな花瓶を使えば、ブランドの世界観を表現できるか」「新しいデザインのクリスマスブーケに、私たちらしさをどう盛り込むか」などと、いつも頭を悩ませています。

大皿に盛った、ボリュームたっぷり「サラダランチ」

外食やコンビニ弁当で食事を済ませてしまう日が多く、栄養が偏りがちです。野菜不足だなと思った時には、「Nid CAFE(ニド・カフェ)」(東京・青山)の「サラダランチ」を注文します。

会社から5分ほどの場所にあるカフェのサラダランチは、とにかくボリュームたっぷり。直径30センチほどの大皿に、サラダやおかずが盛りつけられています。メニューは日替わりで、この日は、パン、ゆで卵、鶏ハムなどが載っていました。

気づけば一日中、会社にこもっていることもあり、ランチは大切なリフレッシュの時間です。本社の近くにはギャラリーやショップがたくさん並んでいるので、器や家具の展示がある日には、ランチ帰りに勉強がてら、お店に立ち寄ることもあります。

花にひかれたきっかけは、美学の研究

2010年に早稲田大学に入学し、サークルにも入らずに4年間、「美学」の研究に没頭しました。ある文献には、踊りを舞ってトランス状態になった少女が、花の名前をつぶやき続けるというインドネシア・バリ島の伝統行事のことが載っていました。美の本質を考察する美学では、エロティシズムや死、愛の象徴として頻繁に花が登場します。

「ファッションや癒やしにとどまらず、人間の深い部分とつながっているのでは」。そう考え、次第に花に引かれるようになりました。大学卒業後は、フラワーアレンジメント教室などを展開する企業に就職。「一回どっぷりと生花業の現場に浸って、もっと花のことを知りたい」と、16年、青山フラワーマーケットを展開する「パーク・コーポレーション」に転職しました。

大変さは想像以上…でも、花を見れば疲れが吹き飛ぶ

生花店には、華やかさと同時に「力仕事」のイメージがありました。体力のない自分に務まるのか……と不安を抱えつつ、いざ店頭に立ってみると、その大変さは想像以上でした(笑)。

花を傷めてしまうため、店内のエアコンはつけられません。夏は汗だく、冬は凍えながら店頭に立ちます。花をお湯で洗うわけにはいかないので、真冬でも使うのは水だけ。雪の降る日は、会社から支給されたカイロを5、6個貼っているにもかかわらず、あまりの寒さで歯の根が合わず、電話口でうまくしゃべれないこともありました。販売する花瓶も、まとめて運ぶと米俵ほどの重さになります。

3年目には、店長を経験。花の仕入れのほか、収支の計算やアルバイトのシフト管理も自分で行うため、それまでとは違った苦労がありました。

本社に異動した今も、忙しさはあまり変わらないかもしれません。これまで何度も「なんでこんなに大変なんだ!」と驚いたけれど、やめたいと思ったことは一度もなくて。どんなにヘトヘトでも、仕入れた花が届くと「あぁ、かわいいなあ」と疲れが吹き飛んでしまうんです。まるで、花の魅力に取りつかれているみたい。同じ大変さで他の商品を扱う仕事だったら、とっくにやめていたでしょう。

日常の花をもっと自由に

青山フラワーマーケットのコンセプトは、「Living With Flowers Every Day(=毎日を花と生きる)」。色々な種類の花を束ねたブーケもキレイですが、日常に一輪の花を取り入れてほしいという願いが込められています。

新型コロナの影響で、歓送迎会や卒業式、入学式が相次いで中止になり、例年よりブーケの需要は低迷しました。その一方で、暮らしに花を求める人は増えています。

ストレスが重なる今だからこそ、花そのものの美しさを感じ、選ぶ楽しさを知ってほしい。花の生け方も、組み合わせ方も自由です。もっと気軽に花を手にとってもらえるよう、これからも新しい提案を続けていきます。

(取材・読売新聞メディア局 森野光里、撮影・稲垣純也)

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生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

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稲垣純也
稲垣 純也(いながき・じゅんや)
カメラマン

1970年愛知県生まれ東京在住。篠山紀信氏に師事。2002年独立。雑誌やWebを中心に主に人物撮影。得意分野は女性ポートレイト。

Junya Inagaki