【働く女性とSDGs】なぜ管理職に女性を増やす必要があるのか?

働く女性とSDGs

SDGsの17の目標。大手小町で連載している「働く女性とSDGs」

SDGsは、多くの企業が注目するビジネスや暮らしに欠かせない重要な国際目標です。でも、よく分からないという人も多いのでは? 働く女性がこれだけは知っておきたいSDGsについて、日本総合研究所の村上芽さんが説明します。1回目は「仕事と女性」について。

【質問】
金融機関に勤める30代女性。上司から「女性幹部を増やしたいから、期待しているよ」と言われました。仕事はがんばりたいと思っていますが、結婚や子育てなどを考えると会社を辞めないとも限りません。女性の活躍はSDGsの目標の一つとなっていますが、どうも実感が持てません。

女性管理職の割合が意味するもの

上司から「期待されている」のはうれしいことですね! 昇進するチャンスがあれば、ぜひ、挑戦しましょう。金融機関に勤めているということですから、役職があることで仕事はもちろん、社内制度改革など様々なことに取り組みやすくなるのではないでしょうか。

女性が管理職になることを、SDGsではどのように捉えているか見てみましょう。SDGsで掲げられている17の目標の5番目に「ジェンダー平等を達成しよう」があります。さらに、この目標を達成するための「ターゲット」という詳しい項目が九つあり、その中に「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」と記されています。

管理職に占める女性の割合は、ここで指摘されている「意思決定への参画」や「平等なリーダーシップの機会」を示す分かりやすい指標の一つと考えられます。SDGsの観点で言うと、昇進は性別にかかわらず、リーダーシップを発揮する機会であり、会社の中で大切な決定をする際に意見ができる可能性が高まるということです。

女性の存在が薄い「意思決定」

大切なことを決める「意思決定」の場で、女性の存在が薄いのが日本社会の現状です。総務省の労働力調査(2019年)によると、人口の半数は女性であるにもかかわらず、「仕事の上で、リーダー的な役割にある」と定義できる女性の割合は、たった14.8%です(これをまとめて「管理的職業従事者」=グラフの下から2番目=といいます)。

仕事別女性の割合を示すグラフ、大手小町「働く女性とSDGs」
仕事別女性の割合(%)(内閣府「男女共同参画白書 令和2年版」I-1-14図。*管理的職業従事者は総務省「労働力調査」、**社長は株式会社帝国データバンク「全国「女性社長」分析調査(2020年)」)

このような状況について、どう思いますか。「それっておかしい」と疑問を持つ人もいれば、「仕方がない」と受け入れる人もいるでしょう。消費に関する調査では、家計を握っている割合でいえば、「女性が高く、男性が低い」という“意思決定”の結果もあります。「私は、職場ではヒラだけど、家では財務大臣だから」という女性も結構いるかもしれませんね。

でも、です。消費者としてのパワーは重要ですが、世の中の仕組みを作るには、それだけでは足りません。商品やサービスを作っている産業界の意思決定も大事だし、そもそも、社会の方向性を決める政治家の意思決定も非常に重要なのです。

政府は2003年時点で、「20年までに、指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度」を目標としていました。それから17年が過ぎても、女性の割合は14.8%にとどまり、目標の半分にしか届きませんでした。昨年12月に閣議決定された政府の「第5次男女共同参画基本計画」では、その目標が「20年代の可能な限り早期に」と、達成時期が先送りされてしまいました。

女性の活躍を期待する理由

指導的地位に占める女性の割合について、仕事別に見ると、20%を超えているのは、参議院議員、裁判官、小学校の教頭以上、記者(新聞など)が挙げられます。記者は管理職かどうかは関係なく、社会への影響力のある仕事として「指導的地位」に含まれています。裁判官も同様に司法試験に合格し、修習を終えたばかりの「判事補」が含まれた数字です。

管理職のイメージにぴったりな小学校の教頭以上は24.1%に上り、健闘しているように見えます。しかし、小学校の教員の62%を女性が占めていることを考えると、お寒い状況と言わざるを得ません。

会社に勤める女性が昇進を打診されたら、責任が重くなることに緊張し、仕事と家庭の両立に戸惑いを抱くかもしれません。しかし、女性の活躍を期待しているのは、会社や上司だけではありません。後輩の女性社員、さらにいえば、これから社会人になる大学生や子どもたちにも関係があります。チャンスのある人は、まずそれをいかすことが大切だということをSDGsが示し、女性たちの背中を押してくれているのです。

SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで採択された、30年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」など17のゴールと169のターゲットで構成され、経済、教育、環境、人権などについて、政府、企業、市民がともに取り組む課題が示されています。

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村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー

京都大学法学部卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総合研究所入社。ESG(環境、社会、ガバナンス)投資の支援、気候変動リスクと金融などが専門。著書に「SDGs入門」(共著、日経文庫)。