「予測できない時代」に「目標の呪縛」から逃れる目標の立て方

キャリア小町その21

古くから「一年の計は元旦にあり」と言われ、新しい一年の計画や目標は、年の初めにきちんと立てるべきとされています。みなさんは、2021年を素晴らしい年にするために、どんな目標を掲げましたか。例年と異なるコロナ禍の年明けは落ち着かないまま過ぎ、計画なんて立てられなかったという人も少なくなかったかもしれません。

「目標」の呪縛

この時期にテレビなどで芸能人やスポーツ選手のインタビューを見ると、必ずといっていいほど「どんな一年にしたいですか」「今年の抱負を教えてください」といった質問が投げかけられています。会社に勤めていれば、年間の売り上げ目標、新たな企画を行うスケジュール作り、課題解決に向けた計画作りなど、仕事には常に目標があります。逆に、目標がないと不安という人もいます。

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県に緊急事態宣言が出る事態になりました。それぞれが感染対策をすることは欠かせませんが、個人の力ではどうにもならないことが起きているのです。「ウィズコロナ」などと言われますが、それは「予測できない時代」の到来とも言えます。

先行きが見通せず、綿密に練り上げたスケジュールは破綻し、予定していた計画を断念したり、目標を何度も立て直したりする必要があります。当初の目標にこだわり、計画に固執しようとすれば、次々と生じる予測できない事態に身動きが取れなくなってしまいます。普段なら安心して仕事を任せられるような、まじめで責任感が強く、コツコツと業務をこなすタイプの人は特に、こうした「目標の呪縛」から逃れられない傾向があります。

写真はイメージです

予測できない時代の目標設定

それでは、「予測できない時代」の目標はどのように設定すればいいのでしょうか。

大事なのは、外から与えられる「目標」ではなく、自分の内側の心の声にきちんと耳を傾けることです。自分が願っている「理想」は何でしょうか。その「理想」に向けた「実現」ステップを行動に移していくと考えれば、不安や恐怖よりもわくわくした気持ちになりませんか。

ここで言う「目標」は、次の三つの視点で考えてください。

  • 〈1〉Having(何を得たいか、持ちたいか 成果目標) 
  • 〈2〉Doing(何をするか 行動目標)
  • 〈3〉Being(どうありたいか あり方目標)

Having(何を得たいか、持ちたいか 成果目標)とDoing(何をするか 行動目標)を実現していく上では、願ってから実現するまでに時間的なギャップが生じます。つまり、「○○がほしい」という願いがあっても、それを手にするまでには、自分の裁量で手に入れられるものにせよ、物理的な時間がかかります。

 例えば、「今年こそはダイエットで理想体重の自分になる」(Having)と願ったとします。そのために、「毎日スクワットを30回する」(Doing)と決めて実行しても、目標達成には一定の日数が必要です。

ここで、Being(あり方目標)が重要な意味を持ちます。「理想の体重を実現したワタシは、どんな状態でありたいのか」という視点です。「理想体重の自分になる」という目標を実現するための行動で、次のようなすぐに実現できることがあります。

・活力がみなぎり、健やかな気持ちを持てる
・健やかな気持ちになると、他人に優しくできる
・理想に向かって行動している自分に自信が持てる

状況が次々と変化する時代においては、綿密な計画を遂行することでたどりつく「達成目標」よりも、計画を実行することで得られる「あり方目標」を持つほうが、モチベーションの維持や士気向上に効果的です。

「目標」を具体化する「憧れ」の存在

とはいえ、多くの人が「月間の販売数」や「前年比120%」などの達成目標にとらわれてきたはずです。そこで、Being(あり方目標)を持つ具体的な方法を紹介します。

まず、「憧れ」の感情を深掘りしてみることです。「憧れ」とは、童の心と書くように、子どものころのような純粋な気持ちで、「かっこいい」「あんなふうになりたい」と感じる気持ちです。

すぐには思い浮かばないという場合は、「憧れ」の存在を見つける三つのコツがあります。

  • 〈1〉家族や親戚、会ったことのある人物
  • 〈2〉心ひかれるアニメのキャラクターや歴史上の人物
  • 〈3〉会ったことはなくてもテレビやSNSなどで知っている人物

たとえ実在する人物でなくても、「憧れ」として理想像となります。そして、思い浮かべた存在について、「憧れ」の要素を一つひとつ分解し、言葉にしてみます。

写真はイメージです

私自身の「憧れ」を例にしてみましょう。まず浮かぶのは「祖母」です。戦後をたくましく生き抜いた、とても優しく、芯の強い女性です。

次に思い描いたのは、ジブリアニメの「風の谷のナウシカ」のヒロイン「ナウシカ」です。行動を共にするキツネリスの「テト」にかまれたナウシカが、「痛い」と責めるのではなく、「怖くないよ」となだめたシーンはとても印象的でした。自分が傷つけられても、相手を思いやれる強さを感じました。

もう一人、上皇后美智子さまも憧れとして頭に浮かびます。直接お目にかかる機会はありませんが、テレビなどで拝見する姿は、その場にいらっしゃるだけで周囲の人々を癒やす雰囲気をお持ちです。

このように、憧れの存在を分析してみると、私は「優しさ」「強さ」「癒やし」という要素を理想としていることが分かります。イメージした理想の自分を意識して行動をすれば、きっと「祖母のような優しさ」や「ナウシカのような強さ」に近づくことができると信じています。

「今年の目標や計画をしっかりと立てなきゃ」と焦る必要はありません。自分の中にある「憧れ」に向き合い、理想へ向かって行動を始めてみてください。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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