別にこのままでいい…それでもキャリアカウンセリングを受ける理由

キャリア小町その17

働く女性が自分のキャリアを考えるとき、「転職」を思い浮かべることがあるかと思います。「このまま今の仕事を続けるべきか」「思い切って会社を辞め、別の会社へいったほうがいいのか」。実際は、転職だけにとどまらず、キャリアを考えることは仕事を含む人生全般の方向性について思い描くことです。

「そもそも、キャリアカウンセリングとはどういうものなのか。いまひとつ何をするのか分からない」という声を聞くことが多くあります。どうしても、転職を前提としたサポートをするというイメージが強くなっているようです。

キャリアカウンセリングは、単に個人と職業をマッチングするだけのものではありません。その人の過去の経験をひも解き、本来の持ち味を引き出し、今後の人生全般に生かしていくものです。今回は、キャリアカウンセリングについて、分かりやすく説明していきたいと思います。

キャリアというほどの仕事じゃない

2020年も残すところ2か月を切り、「今年の新語・流行語」や「今年の漢字」が気になる頃になりました。自らの仕事や生活を振り返り、やり残したことはないかと思いを巡らす人も多いのではないでしょうか。大手アパレルショップで接客一筋という洋子さん(35)は、新型コロナウイルスの影響で一時休業や時短勤務を経験しました。「接客のプロとして経験を積んできました。でも、こんな状況では将来に不安もあります」と語り始めました。

洋子さんは「キャリア小町」の存在を知っていたものの、実際に相談をするまでに数か月も悩み続けていたそうです。「私の経験やスキルなんて接客業だけですし、キャリアと言っていいものなのか……。いろいろと調べていくうちに、『キャリアカウンセリング』を知ったのですが、周囲で利用したという話も聞かないし、どうしたらいいものか悩んでいました」

こんにちは、キャリア小町オーナーの土屋です。洋子さんのように、「キャリアカウンセリングって、そもそも何を相談するところ?」「転職を決めていないと受けてはいけないのでは?」「私なんてキャリアと言えるほどの仕事をしていない」などと考え、二の足を踏んでいる人は少なくありません。

洋子さんは、「相談内容や目的がはっきりしていないけれど、このままもやもやした気持ちでは新しい年を迎えられない」と、思い切ってキャリアカウンセリングを受けることを決断したのです。

写真はイメージです

キャリアの「健康診断」を受ける

キャリアカウンセリングは、職業のマッチングや転職だけをゴールとはしません。その人の持つ価値観、志向性、「なりたい自分」を明らかにし、自分らしく、幸せなキャリアや人生を描くサポートをしていくものです。

日本においては、自分の本心を第三者に打ち明け、相談するというカウンセリング文化は未成熟です。そのため、あらゆる悩みについて一人で抱え込んだまま、いつまでも解消できないということになりがちです。

16年4月、「キャリアコンサルタント」という新たな国家資格が職業能力開発促進法で規定され、誕生しました。それまでも、キャリアカウンセラー、キャリアアドバイザーという名称の資格や検定はあり、キャリア支援の専門家はいました。就労支援、職業選択、キャリア設計などについて、国がキャリア支援のプロフェッショナルを育てるという狙いがあります。

ちなみに、キャリアという考え方が広まってきたのは、比較的最近のことです。かつては、職業の選択肢も少なく、進路、就職、転職で悩むことが多くあったわけではありません。「いい大学」を出て「いい会社」に入り、終身雇用が当たり前という時代でした。女性は、結婚や妊娠を機に退職するケースがほとんどでした。異動や昇格もほぼ決まった道筋がそれぞれの会社にあり、自らのキャリアを考える必要がありませんでした。

ところが、終身雇用の崩壊、就職氷河期、リーマン・ショック、コロナ・ショックなどを経て、個人の「働く」を取り巻く環境は劇的に変わりました。企業に入れば、その後は安泰といった時代は終わったという認識が広まっています。その一方で、自分自身のキャリアについてはどう設計すればいいのか分からず、迷う人が増えています。

キャリアを取り巻く環境が大きく変化する中で、求められているのは、「自分自身で自律的にキャリアを切り開くこと」とされています。定期的に体の健康診断を受けるように、キャリアについてもカウンセリングを受け、“健康チェック”を行ってはいかがでしょう。

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「働くこと」の悩み、多くは職場や家庭

とはいえ、「カウンセラーに何を聞いたらいいのか」と困ってしまう人もいます。実際にどのような相談事があるか、いくつか例を紹介しましょう。

 ・どんな仕事に適性があるのか

・今の会社でこれからどんなキャリアを描いていけばいいのか

・出産や育児などを経て、将来どのような働き方をしていけばいいのか

・仕事を辞めてから何年もたつが、もう一度働くにはどうすればいいのか

・夫の転勤で仕事を辞めるか悩んでいる

 キャリアカウンセリングは、1対1の面談形式で行われます。キャリアカウンセラーがカウンセリングの様々な技法を用いて質問をします。一つひとつの問いかけに答えるプロセスを通して、相談者は「何を大切にしたいか」「選択の軸はどこにあるか」「自分らしさとは何か」などを見つめ直し、こんがらがっていた心の中を少しずつ整理していきます。カウンセラーとの対話の中で、悩みや課題がクリアになれば、自ら意思決定や職業選択ができるようになります。

これから就職する学生でも、就職して間もない新入社員でも、キャリアを積んできた女性でも、「働くこと」にまつわる悩みは、職場の人間関係や家庭の事情が原因となっていることが少なくありません。「転職したい」と言っても、その理由は人それぞれです。いずれにせよ、これからの道を選ぶとき、自分の強み、特徴、経験、志向をいったん見直し確認することができれば、自信を持って前へ進むことができます。

※「キャリア小町」は架空のサロンですが、実際の相談をもとに事例を紹介しています。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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