なぜ自己分析で自己嫌悪?あなたの「強み」を知る簡単なやり方

キャリア小町その15

巣ごもりばかりだった春、猛暑に苦しんだ夏を経て、過ごしやすい秋が到来し、今後のキャリアや転職について相談に来る人が増えています。新型コロナウイルスによる影響は大きく、とりあえず退職してから次の就職先を見つけようと考えていたのに思うようにいかず、「自己分析」を何度も繰り返しては自己嫌悪に陥っている人もいました。

同期トップで抜てきされた自信

9月下旬、相談に訪れたのは、今年の3月に大手飲食チェーンを辞めたという優子さん(28)。「転職活動がうまくいかない」と悩みを打ち明けました。都内の有名女子大を卒業後、新卒で入社。アルバイトの応募が殺到するという人気のカフェで店長を任されていました。

「店内の雰囲気はおしゃれですし、スタッフも仲が良く、とても働きやすい職場でした。でも、もっと自分の英語力を生かし、国際的な舞台で活躍したいという思いが強くなったんです」と優子さん。同期の中で一番早く店長に抜てきされるなど、仕事ぶりや実績に自信がありました。

「会社を辞めて2~3か月は、行ったことのない国へ旅でもして見聞を広げよう。それから再出発を」と気楽に考えていたそうです。ところが、新型コロナの緊急事態宣言で、旅行どころか転職活動もままならない状況に。

オンラインで転職活動をスタートしましたが、憧れていた商社や観光などの求人はどんどん減っていきました。焦る気持ちから、慌てて何社かに応募をしたものの、内定はもらえませんでした。「店長の経験で培ったリーダーシップやマネジメントの強みがある。英語力だって人並み以上なのに……」

「GoTo内定」で支援して!

こんにちは、「キャリア小町」オーナーの土屋です。世の中が「GoToトラベル」「GoToイート」などと盛り上がっているのに、転職活動まっただ中の人たちは「GoTo内定」で支援してほしいと必死です。優子さんのように、離職から時間がたてばたつほど、不安や焦りが大きくなるのも理解できます。

ただ、誰も予測できなかったこのような環境下においては、企業側も状況をくみ取ってくれます。離職期間、休職期間が長く空いてしまっても、それほど気にする必要はありません。「転職活動が思うようにいかないのは、優子さんだけじゃありません。焦る気持ちを落ち着かせ、転職に向けて冷静に準備を始めましょう」と声をかけると、「ひとりでずっと不安でした」と声を震わせていました。

早く転職先を決めたいからと焦ってしまい、必要な準備もせずに応募しても、内定を得るのは難しいでしょう。転職のための準備というと、企業研究、面接対策、自己分析などを思い浮かべるかと思います。いずれも大切ですが、優子さんは、自己分析から導きだした「強み」について少し誤解があったかもしれません。

転職活動のスタートに欠かせない「自己分析」

転職活動をスタートする上で欠かせないことの一つが「自己分析」です。これは、自分自身について認識する作業です。過去の経験やエピソードを振り返り、自らの「強み」や「特徴」を具体的に導き出します。自分の持ち味を知るとともに、これからどうなりたいのかという志向性についても再認識していきます。

写真はイメージです

ところが、「強み」というのは、普段は仕事の成果を出すために自然に行っている特性であることが多く、本人にとっては当たり前すぎるがゆえに認識しにくいものなのです。改めて「自分の強みは何か?」と自問しても、なかなか気付けないのはそのためです。

自分の強みを認識する上で大切なことは、職務経験や専門スキルのみではありません。自分の強みとなる「ポータブルスキル」について紹介しましょう。厚生労働省はポータブルスキルについて、「業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力」と定義しています。これは、転職に向けた自己分析をするなら、きっと必要になる考え方です。

ポータブルスキルについて、もう少しイメージしやすい例を挙げましょう。

営業職の経験がある人は、顧客の要望を的確に捉える「質問力」や、じっくりと話を聞き、課題を抽出する力がたけていると言えるでしょう。一方、事務職なら、同じような業務を繰り返しながら作業効率を高める力を鍛えてきたはずです。こうした「力」はいずれも、ポータブルスキルなのです。

ポータブルスキルを大きく分類すると、「仕事のしかた」と「人との関わり方」に分けられます。経済産業省は「社会人基礎力」という言葉で、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つの力を提唱しています。

書店に行けば、「聞く力」「断る力」「悩む力」「鈍感力」など、「力」をタイトルにする本がたくさん見つかるはずです。自分の経験から培った「力」に近いキーワードを見つけ、自らの強みを表現するのに活用してみてください。

自分の強みを見つける3つの方法

【1】企業のホームページで言葉を探す

自分の強みを見つける方法はほかにもあります。応募したい企業のホームページをくまなくチェックして、自分を表すキーワードのヒントを探します。「世界を変える冒険」(ソニー)、「100年先の未来をつくる。」(三菱地所)、「ひとのときを、想う。」(JT)、「やってみなはれ」(サントリー)など、企業もそれぞれの「強み」や「特徴」を前面に押し出しています。「自分の特徴と似ているかも」と思える表現を見つけたら、参考にするのもいいでしょう。

【2】求める人材の「応募条件」を書く

自己分析というと、「他人に言えるような特別な能力も特徴もありません」と謙虚になる人が多くいます。そういう場合は自分のやってきた仕事について、採用側になったつもりで理想の人材の「応募条件」を書いてみる方法があります。これまで携わってきた業務を振り返り、どういう人が向いているか、どんな能力やスキルが必要なのか、「求める人材」を書き出してみてください。「若いスタッフに指導ができる」「いつも笑顔で接客できる」「困っている人がいたら放っておけない」――。こんな人を採用したいと書き出した条件は、自分が当たり前に発揮してきた「強み」かもしれません。

【3】自分について、耳を傾ける

今の自分と過去の自分を比較するという方法もあります。過去の自分に聞いてみるのです。「入社した当時はできなかったこと」「社会人になって変わったこと」「仕事でうれしかったこと」など。それらは、成長した自分の「強み」の一つです。それでもまだ、「自分のことはよく分からない」なんていう場合は、誰かに「私の強みって何だと思う?」と率直に聞いてみることです。聞く相手を間違えなければ、ポジティブな表現で教えてもらえるはずです。

写真はイメージです

自己分析だけでは足りない

今回は、自己分析の方法を紹介しましたが、それだけでは不十分です。自分はこんなことをがんばってきたので、こんな「強み」や「特徴」があるというだけでは、独りよがりになってしまいます。

大きな荷物を収めるしっかりしたかばんを探しているのに、店員に流行の小さなバッグを薦められてもピンと来ませんよね。こうしたズレが採用の現場では多く見受けられます。

もし、応募者の考える「自分の強み」を、企業が求めていなければ、どんなに熱量が高くても採用担当者に伝わりません。募集ポジションに対し、企業が必要としている能力や経験、特徴が必ずあります。「自分には求められている力がある」というアピールが内定のカギとなります。

次回は、転職活動に向けた準備として、「自己分析」に続き、企業のことをしっかり知るための「企業研究」のポイントを紹介します。

※「キャリア小町」は架空のサロンですが、実際の相談をもとに事例を紹介しています。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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