病気、ケガ、出産…公的医療保険でカバーされる保障は?

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新型コロナウイルスをきっかけに、民間の医療保険への加入を検討している人が増えているそうです。新型コロナは国の指定感染症になっているので、治療費は基本的に無料なのですが、今回のように私たちの健康を脅かす出来事が起こると、不安になり、急いで保険に入らなければと思ってしまう人も少なくないことでしょう。でも実は、公的医療保険は意外に保障が手厚いのです。民間の保険に加入する前に、まずは公的医療保険について知っておきましょう。

日本の公的医療保険の仕組み

日本では原則、すべての国民が生まれたときから公的医療保険に加入します。これを「国民皆保険」といいます。国民全員が公的医療保険に加入し、お金を出し合うことで、ケガや病気、出産などの医療費をみんなでカバーし合います。こういう仕組みがあるおかげで、病院に行って治療を受けた場合、自分が支払う医療費は、かかる医療費の1割から3割で済むわけです。残りは、公的医療保険などから支払われます。

公的医療保険はいくつか種類があり、対象者によって加入する保険が違います。30代働き女子が押さえておきたいのは、「健康保険」と「国民健康保険」の二つです。

健康保険は、会社員・公務員とその扶養家族が加入します。パートやアルバイトの人でも、一定の要件を満たすことで健康保険に加入します。

国民健康保険は、個人事業主やフリーランス、農業・漁業に従事している人、パートやアルバイトの人など、健康保険に加入していない人が加入します。今は会社員という人も、働き方が多用化してきたこの時代、今後フリーランスに転身するという可能性は十分にあるので、国民健康保険についても知っておきましょう。

健康保険でも国民健康保険でもカバーされる共通の保障は?

健康保険と国民健康保険では、加入対象者の他に、保障される内容にも違いがあります。まずは、共通で保障される内容を見てみましょう。

●医療費
病気やケガなどで病院に行き、治療を受けた場合の診察代や薬代は、基本的に健康保険でも国民健康保険でも3割負担になります。

●出産育児一時金
出産育児一時金は、妊娠4か月(85日)以上の人が出産したときに支給される一時金です。金額は1児につき42万円、産科医療補償制度に未加入の医療機関での出産の場合は40万4000円です。出産育児一時金も、健康保険、国民健康保険のどちらに加入していても同じ額が支給されます。会社員の妻で夫の扶養に入っているという場合には、夫の加入する健康保険から支給されます。

厚生労働省保険局によると、出産費用の平均(2012年度)は48万6376円となっています。ちなみに、一番高い東京都は約59万円、一番安い鳥取県は約40万円となっています。出産する施設や分娩方法にこだわりを持たなければ、出産育児一時金で分娩費用のほとんどを賄うことができます。

健康保険と国民健康保険で異なるのは

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●傷病手当金
傷病手当金は、健康保険に加入している人が業務外の病気やケガで連続する3日間を含む4日以上、仕事に就けなかった場合に、健康保険に申請すると支給されます。きちんと3日間、待機しないと支給されません。待機期間をクリアすれば、その後、同じ病気で飛び石で休んでも支給されます。

傷病手当金の1日当たりの金額は、標準報酬日額(1日当たりの平均給与)の3分の2。標準報酬日額が8000円の人の場合、1日当たり約5300円受け取れることに。この金額を最大で1年6か月間分、受け取れるわけです。

一方、国民健康保険には、この傷病手当金の制度はありません。

●出産手当金
出産手当金は、出産前42日と出産後56日の間、出産のため仕事を休み、給与が支払われない場合に支給される手当金です。こちらは健康保険独自の制度で、国民健康保険にはありません。

健康保険に加入していれば、支給日額に会社を休んだ日数分、受け取ることができます。

ちなみに、支給日額は、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した金額を30日で割り、その金額に3分の2を掛けた金額」です。

仮に支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額が25万円だった場合、支給日額は、5555円となります。産休を98日とると、「5555円×98日分」で、54万5000円近くもらえます。出産予定日より出産が遅れた場合は支給額が多くなり、早まった場合は少なくなります。

このように見てくると、健康保険と国民健康保険では、健康保険の方が保障は手厚いといえるでしょう。

病気やケガで働けなくなってしまった場合、収入が途絶えてしまうので、経済的に大きな打撃を受けることになりますが、会社員の場合、「傷病手当金」があり、出産で仕事を休む場合にも「出産手当金」という救済措置があります。

一方、個人事業主やフリーランスが加入している国民健康保険には、傷病手当金も出産手当金もありません。病気やケガ、出産などで仕事を休むとなった場合、医療費がかかる上に生活費もダウンしてしまうのに、何も保障がないのは厳しいですよね。ですから、個人事業主やフリーランスの人など国民健康保険に加入している人は、不測の事態が起きた時に備えて、自分自身でしっかり備えておくことが必要になります。

高山一恵
高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャルプランナー

 慶應義塾大学卒業。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画。2015年から株式会社Money&Youの取締役。結婚、出産、夫の転勤など人生に多くの転機が訪れる女性にこそお金の知識が必要と考え、講演、個人マネー相談のほか、雑誌の記事執筆やテレビ番組出演など精力的に活動している。著書に「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)など。