なんとなくブラック? 会社に「やりがい搾取」される3つの理由

キャリア小町その6

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛やテレワークなどで、働き方や生活スタイルががらりと変わり、「これから、どうなるんだろう」と不安を抱える人は少なくありません。一方で、オフィスを離れ、在宅勤務の環境に身を置いてみて、改めて自分自身のキャリアを見つめ直す人もいます。

5月中旬、「キャリア小町」のオンラインカウンセリングに訪れたのは愛さん。有名私大の教育学部を卒業し、都内のビルメンテナンス会社に勤めて4年目の26歳です。800人規模の会社の経営幹部は全員男性、管理職も女性は数えるほどしかいません。真面目な性格の愛さんは、「会社の期待に応えたい」「周囲に認められたい」とバリバリと働いてきました。

自分の未来が描けない

ところが、新型コロナの影響で在宅勤務に切り替わり、テレワークにすっかり慣れてしまった愛さんは、ふっと自分の将来を考えるようになったそうです。「どんなにがんばっても、今の努力がどんな未来へつながっているのか分からない」。大学生時代に学生団体を自ら設立するなど、行動的だった愛さんは、入社直後から会社に期待され、2年目にして営業から経営企画部に異動になりました。ただ、経営層も管理職も男性ばかりの会社で、女性の自分がどのようなキャリアを積んでいけるのか未来が描けないと言うのです。

「会社から求められる人材になりたいと考え、がむしゃらに働きました。夜遅くまで残業が続いても弱音を吐かず、休日出勤を命じられても嫌な顔一つしませんでした。つらいと思うこともありましたが、自分の企画が採用されればうれしくて。でも、ネットニュースで『やりがい搾取』や『ブラック企業』という言葉を見るたびに、『なんとなく、これって自分のことかも』と考えるようになったんです」

こんにちは、「キャリア小町」オーナーの土屋です。がんばり屋さんの愛さんは、持ち前の前向きな性格で多忙な業務を乗り越えてきたのでしょう。「長期的なキャリアが描けない」という相談は、若い女性から多く寄せられる内容の一つです。特に、経営層、管理職が男性ばかりの職場においては、仕事をずっと続けたいという女性が必ずといっていいほど陥る悩みなのです。

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だから「やりがい搾取」に陥る

〈1〉選択肢が見えていない

「未来が描けない」理由の一つは、「選択肢を知らない」または「選択肢が見えていない」からです。会社の中だけではなく、会社の外にも自分の興味のあるコミュニティーや活動を通して、幅広いネットワークを築き、なりたい自分の姿、やりたいことを見つけていきましょう。

私自身を振り返ってみても、「人との出会い」がキャリアをひらく大きなきっかけになったと感じています。積極的で活発な愛さんですから、情熱を傾けられる活動やコミュニティーなどに自ら門をたたき、人とのつながりを作っていただきたいと思います。

もし、転職活動に踏み出すとしても、まず、自分が情熱を注げる仕事内容や職場環境を具体的に考えることです。社会にどんな活動・仕事があるのか、そして、どのような会社があるのかを調べることです。自分のやりたいことが転職という形で実現できるのか、または、社会的な活動として会社に所属しなくてもできることなのか、ぼんやりとでも未来のイメージを現実に落とし込んでいきましょう。

〈2〉自分の持ち味に気づいていない

愛さんは、人の期待に応えることで喜びを得るタイプです。だから、「会社に求められる人間になろう」「周囲に評価される人材になろう」とがんばってきました。学生時代は、多くの場面で「正解」があって、その「正解」に向かって努力する姿勢が褒められ、「正解」にたどり着けば高く評価されました。ところが、キャリアにおいては、「正解」なんてなく、評価されるポイントも、景況感や時代背景、また、会社の上司によっても変わってしまう可能性があります。

だからこそ、自分の持ち味や強みを知り、それを生かせる環境に身を置いてください。上司の指示に素直に従ったり、周囲の期待に応えたりするのは悪いことではありませんが、そればかりでは、「やりがい搾取」や「ブラック企業」のわなにはまってしまう可能性があります。自分自身が強みや持ち味を生かせていると感じられれば、きっと周囲からも輝いて見えるはずです。

業種や職種が変わっても通用する「ポータブルスキル」 という概念があります。例えば、愛さんの場合は「行動力」「成長意欲」「達成意欲」「貢献心」など、数え上げればきりがありません。普段、自分では当たり前に使っている力なので、その持ち味に気が付かないものかもしれませんね。

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〈3〉将来が見えず不安になっている

近年のキャリア理論の中で最も支持されている「プランド・ハプンスタンス」という考え方があります。日本語では「計画された偶発性理論」と訳されています。変化が激しく、先が読みにくい時代において、明確なキャリアプランは必ずしも必要ではなく、キャリアの8割ほどが「予期しない偶然の出来事や出会い」から切りひらかれていくというものです。

数か月前に立てたプランが、まったく機能していない今の状況を考えれば、この理論を強く実感できるかと思います。若い女性たちには、キャリア形成を「あせらず、あわてず、あきらめず」の三つの「あ」を伝えています。たとえ今、10年後、20年後をはっきりとイメージできていなくてもいいのです。

一つ階段を上れば、そこで新しい景色が見えます。「人生100年」と言われるようになり、70代で現役ということも珍しくありません。20代の方はこの先、50年近く働き続ける可能性があります。自分の持ち味や強みを知って、それを生かせる仕事でなければ、「自分らしい人生」から遠ざかってしまいます。

多くの人が「将来のプランや計画がないと不安」と考えがちですが、「明確なプランはなくて当たり前」なのです。ただし、この理論の大切なことは、「何も行動せずじっとしていても、向こうからすてきなきっかけや出会いがやってくるわけではない」ということです。「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」の五つのキーワードを意識して、自ら行動してみること。これが、この理論の実践には欠かせません。

自らの転機となるような、「予期しない偶然の出来事や出会い」に果敢に向かっていきましょう。

※「キャリア小町」は架空のサロンですが、実際の相談をもとに事例を紹介しています。

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土屋美乃
土屋 美乃(つちや・よしの)
国家資格キャリアコンサルタント、エスキャリア代表取締役

1983年東京・八王子市生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。営業や自社の新卒採用担当として、転職や就職という人の人生の転機に関わる。リーマンショックを機に、転職のみをゴールとせず『自分らしく生きる』ことをテーマとするキャリアコンサルタントとして独立。2011年東日本大震災後に自らの天職を形にすべく、エスキャリアを設立。主にライフイベント期の女性のキャリア支援を行う。

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