社会保険の適用対象・年収106万円が「壁」と言えない理由は?

幸せを引き寄せるマネー術

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現在の社会保険制度では、一定規模以上の企業に勤めている場合、年収が106万円を超えると、その企業の厚生年金(社会保険)に加入する義務が生じ、パートナーの扶養から外れることになります。これが、社会保険上の「106万円の壁」と言われるものです。厚生労働省は、公的年金制度の見直しに向けて、厚生年金に加入できる人の範囲拡大を検討しています。前々回のコラムで、年収106万円は必ずしも「壁」とは言えないとお伝えしたこととも関係があるので、今回は「壁」を超える収入を得て、厚生年金に加入できることのメリットを考えてみます。

公的年金は亡くなるまでもらい続けることができる

公的年金に対する不安を感じる方は多いですが、最も注目すべき特徴の一つに「亡くなるまでもらい続けることができる」という性質があります。自分自身での備えだと、働き続けたり蓄財をしたりするのにも限りがあり、想定以上に長生きをした場合、お金が尽きてしまう恐れがあります。公的年金は、想定以上に長く生きた場合でも、一定の金額をもらい続けることができる「長生きに備える保険」のような役割を果たしています。

「保険」ですから、払った保険料のすべてが戻ってくるばかりとは限りません。短命の人も長生きの人もいる中で、考えていたより長生きした場合でも、一定額を受け取り続けることができます。自分がどちらになるかわからない以上、本来は損得で考える対象というより、もし長く生きたとしても、ある程度安心できる材料であると捉えるのが適切でしょう。

それでも損得が気になる場合、計算してみるのがお勧め

それでも、払った保険料以上に受給できるか気になる人もいるかもしれません。公的年金の給付額には、自分たちが支払う保険料の他に、税金も充てられています。また、厚生年金保険に加入している人は、自分が支払う金額と同額を、会社が保険料として支払ってくれています。税金や会社負担などがあるため、自分で払う保険料よりも、手厚い保障を受けられる体制にあるのが、公的年金です。

仮に、老後に受け取る老齢年金についてだけ計算してみます。2019年度の国民年金保険料は月額1万6410円です。40年間納め続けると、総額は約788万円になります。40年間保険料を納めた人の年金受給額は年額で約78万円。つまり、10年ちょっと受給すると支払った保険料を上回る計算になります。

厚生年金は、収入によって保険料や受給額が変わります。仮に生涯の平均でならすと、月15万円の収入を得続けた人の場合、2019年度の保険料は1万3725円。40年間に支払う保険料の総額は、約659万円になります。その結果、受給できる金額は年額約117万円で、5年半ちょっと受給すると、支払った保険料を上回る計算になるのです。

比較的多くの人が、支払った以上に受け取れる可能性が高いのではないでしょうか。加えて、体に障害を負った場合は障害年金を、家族を残して亡くなった場合には、家族が遺族年金を受けることもできます。保障の内容がより手厚いことから、やはり国民年金よりも厚生年金に加入できる方が、加入者にとって安心が大きいと考えられるのです。

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