長すぎる試用期間 「本採用しない」と解雇された苦しみ

弁護士ドットコムニュース

採用面接だけでは、新入社員の適性は分からないものです。そのため、入社後しばらくは「試用期間」を設けている企業が珍しくありません。3か月や半年のところが多いようですが、期間は自由に設定できるものなのでしょうか。 

弁護士ドットコムには、転職した会社の試用期間が「1年間」だったという男性から相談が寄せられています。

 システム担当として入社しましたが、当初予定されていなかった仕事が次々に降ってきたといいます。試用期間が終わる1か月前に「契約を更新しない」と告げられ、「契約期間満了」になってしまいました。本人は「まったく納得いかない」と憤っています。

適性の有無ということなら、もっと早く判断できそうな気もします。これでは正社員(無期雇用)と偽って、1年間の有期雇用をさせられたとも言えるのではないでしょうか。試用期間の長さについて、光永享央弁護士に聞きました。

「試用期間中は正社員じゃない」は誤解

――試用期間中は正社員じゃないということなんでしょうか?

「試用期間とは、労働者を採用後、実際に業務に従事させながら、正規従業員としての適格性を判断するために設けられる期間のことです。 

法的には『解約権留保付労働契約』とされ、試用期間の当初から期間の定めのない通常の労働契約は成立しています。会社側が試用期間中の労働者の働きぶりを観察した結果、不適格と判断した場合に、本採用後よりもやや緩いハードルで解雇できるにすぎません。

つまり、試用期間と本採用後は別々の労働契約ではなく、試用期間も含めて一つの労働契約が成立していることになります。よく『試用期間中は正社員ではない』と誤解されていますが、れっきとした正社員であり、試用期間中も社会保険に加入させる必要があります。

その意味で、今回のケースで会社が試用期間後の『契約を更新しない』と表現したのは不正確です」

試用期間の長さ、ケースバイケース

――試用期間の長さに制限はないんでしょうか?

「実は、法令上、試用期間の長さに関して制限はありません。原則として入社時の労働契約で合意した内容によります。

そうはいっても、試用期間中は解雇のハードルが下がった状態ですので、労働者からすると不安定な立場ということになります。

したがって、試用期間の趣旨・目的に照らし、合理的範囲を超える長さの試用期間の定めは、公序良俗に反して無効となります(裁判例あり)」

――具体的にはどのくらいの長さなんでしょうか?

「試用期間としてどの程度の長さが合理的かは、職種等によって様々であり(たとえば教員は1年でも有効とする考えが多い)、一概には言えません。

今回の相談者の方が裁判で争う場合は、会社に対して、(1)適格性判断に1年も必要な理由、(2)判断の仕組み、(3)これまでの実績等に関する事実関係--を追及し、実は大した合理的根拠がないことを裁判所に印象づけることが有効です」

試用期間中の解雇、イメージほど簡単にはできない

――試用期間が終わるときの解雇について争うのは難しいのでしょうか?   

「法的には本採用拒否といい、通常の解雇の有効性判断の枠組み(客観的合理的理由と社会通念上相当性)をベースに、労働者の不適格性が解約を正当化しうるほど重大であることを会社側が立証できないかぎり無効となります。

あくまでケース・バイ・ケースですが、一般的イメージよりも労働者側の勝訴率は高いと思います。

また、会社が自ら試用期間を設定しておいて、試用期間の途中に解雇するのは、よほどの事情がないかぎり拙速と評価され、解雇無効と判断されやすくなります」

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