コーヒーに「いい感じ」で寄り添うフードとは…スターバックス・森賢子

働く女のランチ図鑑vol.27

ブラウンを基調にした店内でおなじみのスターバックスコーヒー。おしゃべりを楽しむ女性グループやパソコンに向かう男性会社員らの傍らには、カフェラテやフラペチーノなど人気のドリンクがあります。スターバックスコーヒージャパン(本社・東京都品川区)マーケティング本部に勤務する森賢子さとこさん(39)の仕事は、ドリンクだけでなくフードメニューを彼らにもっと楽しんでもらうことです。森さんに仕事への思いやランチタイムの過ごし方について聞きました。

課題はフードメニューの知名度

スタバは全国に1400を超える店舗があり、アルバイトなどの店舗スタッフは4万人に上ります。森さんは、フードメニューのマーケティングを担当。サンドイッチやマフィンなどのネーミング、パッケージのデザイン、店頭での陳列方法やPOPなどを考えるのが主な仕事です。

「ドリンクを買われる方や、店舗で過ごす空間を大事にされるお客さんにフードはどうあるべきか。あまり主張し過ぎてもいけない。コーヒーにいい感じで寄り添うにはどうしたらいいのか。机に着いてコーヒーをすすり、マフィンやサンドイッチを口に運ぶ。その一瞬が幸せなひとときになるには。そんなことを常に考えています」スタバで購入される商品はドリンクが中心。サンドイッチやマフィンなどを食べるというイメージを持っていない人もまだ多く、フードメニューの知名度をさらに高めることが課題の一つです。森さんは「ただ売り上げを伸ばすだけでなく、コーヒーにフードメニューを合わせるペアリングの楽しみ方を提案していきたい」と言います。

実際に店舗へ足を運び、そこで仕事をすることもあります。店舗スタッフと意見を交わし、お客さんの反応を見て、店内の雰囲気を自らの肌で知ることは、マーケティングの戦略を考える上で大事なことだそう。新商品を投入するときや、新たなプロモーションを打ち出す場合、森さんはこう考えるようにしています。「お客さんが求めていると信じられる根拠があるか」、そして、「スタバらしいか」。

来店客数や購入実績などのデータを分析するとともに、お客さんの声に耳を傾けるようにしています。そこにニーズがあるのか、スタバのブランドイメージに合致するか。それが決め手となるそうです。

「5年後、10年後にどうありたいのか」

大学で心理学を専攻した森さんは卒業後、ハーゲンダッツジャパンに入社し、営業などを担当しました。スーパーでアイスクリームの試食や陳列、販売促進業務などを経験。アイスを手にしたお客さんの笑顔を見るのが楽しかったといいます。その後、コンビニエンスストア・量販チェーンの営業サポートを任されるようになり、全国規模で販売促進の施策を打つといった業務にやりがいを感じるように。

入社から4年、27歳の時、「もっと体系的にビジネスの知識を身に付けたい」と思い、仕事を続けながら社会人大学院に通う決断をします。週に1、2回の講義に加え、仕事の後に同級生らと集まってディスカッションするなど、勉強漬けの日々を3年間続けました。「大学院に通う3年間は勉強優先、プライベートは二の次と覚悟していました。期限を決めていたので頑張れたんだと思います」。さまざまな業界から集まった仲間たちが働きながら勉強に励む姿にも刺激を受けました。

大学院を修了してから3年がたった2012年、マーケティングの人材を求めていたサンドウィッチ・チェーン「日本サブウェイ」に転職します。その後、大学院の同級生だった男性と結婚し、15年に長男を出産。仕事と育児を両立させる生活が始まりました。

20代半ば頃までは、将来のライフプランをイメージしたことはなかったという森さん。大学院で勉強する中で、「なぜ仕事をするのか」「5年後、10年後にどうありたいのか」ということを突き詰め、結婚、出産、育児、転職などのタイミングを考えるようになったといいます。

ランチタイムは「自分時間」

18年7月にスタバに入社してから1年が過ぎました。就業時間を選べる「フレックスタイム制度」や、社外でも仕事ができる「モバイルワーク」を活用しながら、フルタイムで働いています。同社には森さん以外にも、育児をしながら働くワーママやイクメンの男性社員も多くいます。

本社のある目黒駅周辺は飲食店が充実しており、ランチタイムは同僚と出かけることもあれば、ランチボックスを買って会社で食べることもあります。「会社では仕事中心、自宅では育児中心という生活ですから、ランチは貴重な『自分時間』です」。


森さんのお気に入りは、週1回限定で水曜日に目黒川近くに出店しているタイ料理店「コンタイ」の屋台。複数の中から好みのおかずを選べて、店員さんとの気軽な会話も魅力の一つです。社内でこの屋台の愛好家も多く、エスニックな香りに包まれながら会話が弾むそうです。

フードも自分好みにカスタマイズ

スタバのフードメニューは、サンドイッチ、デザート、焼き菓子など30種類以上あります。「スタバのカルチャーの一つにカスタマイズがあります。ドリンクと同じように、フードもホイップクリームやチョコレートソースをトッピングすることができます。ビスケットにホイップを添えて、キャラメルソースをかけるのもいいですね」と森さん。ちょっと意外なカスタマイズは店舗スタッフが熟知しているので、相談して挑戦してみるのも手かもしれません。

「フードを購入するお客さんは、まだ多くありません。コーヒーとスコーン、ラテにワッフル、フラペチーノとチーズケーキ……というふうに、お客さんが幸せな時間を過ごす方法を提案していきたい」

宣伝にテレビCMを利用しないスタバのポリシーを考えると、即効性のあるPR活動よりも、店舗の雰囲気作りや利用客の口コミ拡散など地道な活動が求められます。「食を通じて、お客さんの豊かな生活に貢献していきたい」。その夢を追い求める森さんの挑戦が続きます。

(取材・文/メディア局編集部 鈴木幸大、写真/金井尭子)

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生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ