日本茶の需要を創造したい…業績好調のヒミツ 吉村・小城東

働く女のランチ図鑑vol.24

日本茶などのパッケージを手がける「吉村」(本社・東京都品川区)。社員200人余りの企業ですが、子育て中の女性社員らを活用したダイバーシティー経営に力を入れ、近年売り上げを伸ばしています。同社の営業部で活躍している小城東さん(25)に、仕事の内容や、元気の源となっているランチについて聞きました。

慣れないハンドルを握り、営業へ

吉村は、アルミ製のお茶のパッケージのメーカーとして、業界トップシェアを誇ります。昨年10月から営業部に所属している小城さんは、顧客に商品をただ売るだけでなく、パッケージデザインや、それに合わせた売り場づくりなど、販売方法も一緒に顧客に提案しています。

担当は、埼玉・群馬エリア。「お茶と言えば静岡を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、埼玉県には狭山茶、群馬には梅田茶など、おいしいお茶がたくさんあるんですよ」と小城さん。東京の本社から埼玉、群馬の日本茶専門店などへ、慣れないハンドルを握って車で営業に出かけることも多いといいます。

女性社長が振る舞うランチ

そんな彼女の元気の源になっているのが、社長の橋本久美子さんが社内のキッチンで作る昼ごはんです。名付けて「くみこばぁば食堂」。橋本さんのランチがある日は、事務所の入り口に「開店」の札が掲げられるため、社員は午前中からソワソワしながら楽しみにしているそうです。

メニューは日によって変わりますが、主食のご飯ものに副菜が数品、汁物1品が並びます。小城さんのお気に入りは、切り干し大根とツナの炊き込みご飯。「一人暮らしで、普段は外食や総菜を買って食べるのがほとんど。食堂だと野菜がたくさん食べられるし、家庭的な味付けでほっと安心するんです」と言います。


ランチの仕込みを手伝うことも

食堂が開店する日、橋本さんは午前7時半くらいから仕込みを始めます。小城さんも「早く起きられた時」には手伝うことも。野菜の皮をむきながら、橋本さんと「私、結婚できるかな」などと、とりとめのない話をしているそうです。

ランチ作りに取り組む社長の橋本久美子さん

仕事の時の橋本さんは厳しく、橋本さんの求めに応えられない自分のふがいなさに涙することもありますが、ランチの時は別。「仕事やプライベートのことなどを気軽に話しています。会社の社長と社員というよりは、『優しい親戚』みたい」だそう。

付加価値を付けて売り出す

その橋本さんが進めているのが、様々な立場の人が活躍できる「ダイバーシティー経営」です。その取り組みの一つとして、縦割りだった企画・製造の体制を見直し、企画のリーダーが商品開発から販売まで責任を持つ「ブランドオーナー制」を取り入れました。子育て中で労働時間に制限のある人や勤続年数の少ない人でも責任ある立場に就くことで、誰にも遠慮せずにアイデアを出し、業務を進められるようになったといいます。

この取り組みが功を奏し、オリジナルの猫のキャラクターをあしらった日本茶のパッケージ、注ぎ口にフィルターがセットされて水出し緑茶が簡単に作れるワインボトル形の茶器など、包装資材メーカーという枠組みを超えたヒット商品が続々と生まれたのです。

ペットボトル入り飲料の普及などによって、家庭でお茶をいれることは少なくなっていましたが、付加価値を付けた商品を売り出すことで、お茶を飲んだり、プレゼントしたりする機会が増え、利益をあげることに成功しました。

入社半年でブランドオーナーに

小城さんも、入社半年でブランドオーナーに抜てきされました。任された仕事は、小売店などが商品に貼り付けるラベルのセルフプリントサービスをもっと使いやすいものにすることでした。

始めに取りかかったのは、同サービスのホームページのリニューアルや、注文システムの見直しでした。「どれも初めて挑戦することばかりで、先輩方に聞きながら『本当にこれでいいのかな?』と手探りの毎日でした」。

新たに生まれたサービスの名前は「イグアナ」。ガラパゴス諸島のイグアナのように、サービスが独自の進化をし続けるという願いを込めて名付けました。「お客さんからも『なんでイグアナ?』と興味を持ってもらえるので、この名前にしてよかった」と話します。

小城さんならではのオリジナリティーも出しました。「和風っぽくてかわいいかも」と考え、他社ではあまり扱っていなかった、凹凸のある和紙素材のラベルを取り入れたのです。多くの小売店から好印象をもたれ、「狙いが当たって本当によかった」と喜びます。

お茶のパッケージに関する仕事がしたい

宮崎県出身の小城さん。実家では家族全員がお茶をよく飲んでいました。大学で消費者心理学を学び、卒論はお茶のパッケージをテーマに執筆しました。「コンビニで一番売れているペットボトル飲料は日本茶。『緑色のラベルが多いけれど、これを白色にしてみたら売り上げはどう変わるのか』と考えるのが楽しかった」。パッケージに関する仕事を希望して就職活動をしていた時に、吉村のことを知ったといいます。

決め手はインターンの時に出会った女性社員でした。育児休業から復帰して間もないのに、管理職としてバリバリ働いている姿を見て、「この会社なら結婚して出産しても活躍できる。自分もこの人みたいになりたいと感じた」と言います。

再びブランドオーナーをめざす

入社から3年たち、「またブランドオーナーに挑戦してみたい」と意欲を見せる小城さん。「前は自分の感覚で進めていたけれど、今度は営業で得たお客様の声を、商品開発に生かしてみたい。そして、日本茶の需要をもっと創造したい」

(取材・文/メディア局編集部 山口千尋、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ