「3K」のイメージ変えたい…「けんせつ小町」の決意 清水建設・星千紘

働く女のランチ図鑑 vol.22

人手不足が深刻な建設業界で今、女性の担い手「けんせつ小町」を増やそうという動きが活発になっています。「建設業界」と聞くと、体力的にきつく、屈強な男性が働く職場をイメージする人も多いはず。では、実際はどうなのでしょうか。大手ゼネコン「清水建設」(本社:東京都中央区)で施工管理を担当する星千紘さん(28)に、働き方やパワー源のランチについて聞きました。

工事現場の”指揮者”

「施工管理は、オーケストラの指揮者のような役割」。星さんはそう表現します。建物の施工計画の策定から、建設現場の安全、品質管理まで、工事全体を監督しなければいけません。納期に間に合わなかったり、予算を超えてしまったりすることの許されない、責任の重い仕事です。

計画通りに作業が進んでいるか、人手は足りているか、作業員は規則にのっとって安全に働いているか――。こうしたことの確認のため、星さんは、現場と事務所を1日に何度も往復します。

現場には、配管、電気、塗装といった多くの業者が出入りしており、彼らをまとめていく必要があります。現在、東京都内で建設中の29階建てのビルの工事では、星さんをはじめ、清水建設の社員10人ほどが協力して、20社300人以上の指揮を執っています。

「施工計画や設計図があるといっても、建物は全て人の手によって造られます。全員に『どのように施工してほしいのか』を正しく伝えることに、いつも頭を悩ませています」と星さん。写真やイラストを使って作業説明を行い、打ち合わせの回数を増やすなどして、全員が同じ作業イメージを持てるよう、日々工夫を凝らします。

作業員と一緒にパワーランチ

ランチタイムは、現場周辺のレストランを利用したりコンビニを利用したりと、現場によって過ごし方が変わります。今の現場は、2階部分に仮設の売店とイートインスペースが設けられているため、売店の厨房ちゅうぼうで調理された料理をその場で味わえます。

お気に入りは、「麻婆マーボーライス」。男性向けのボリュームたっぷりな一品ですが、「辛いもの好きですし、事務所との移動も多くておなかがすくこともあり、ペロリと平らげちゃうんです」と笑います。

いつもは、気を張り詰めて働いている作業員たちも、ランチはほっと一息つける時間。イートインスペースには、和やかな空気が流れています。女性専用の休憩室も用意されていますが、星さんは毎日、イートインスペースで一緒に食事します。

「一緒にご飯を食べていると、『最近、困っていることがあるんだよね』『この前、こんなことがあってさ~』と、悩みや本音を話してくれることもあるんです。現場の生の声を聞くためにも、ランチは大事な時間です」と教えてくれました。

「建物づくりは、究極の単品生産」

星さんは、物心ついた頃から、家族と焼き物市に足を運んだり、美術館で彫刻作品を眺めたりと、ものづくりに興味のある子どもでした。

いつしか、船舶やビルなど大きな建造物が好きになり、都内の大学院で、建造物の意匠設計について学びました。

学生時代の楽しみは、ゼミ旅行だったという星さん。レンタカーを借りて1週間ほど、全国各地のユニークな建築物を見学して回る旅を行い、時には1日に4か所ほどを巡ることもあったそう。旅先で建物を見て、工事に携わった人の話を聞くうちに、建設業界を志すようになりました。

「建物づくりは、究極の単品生産。ひとつとして同じ建物はなく、工程や技術を全部まねて造ることは不可能なんです。フレッシュな頭で、柔軟に考えて追求していく姿をかっこいいなと思ったんです」と振り返ります。2015年、清水建設に入社しました。

けんせつ小町に優しい清水建設

「きつい」「危険」「汚い」の「3K」と揶揄やゆされることもある建設業。同社は、夏場でも下着が透けない素材の女性用作業服を作成し、出産や育児で一度退職した社員を再雇用する制度を設けるなど、女性の活躍推進に力を入れています。

14年度には、「19年度までに女性の管理職を3倍、女性技術者を2倍にする」という目標を設定。いずれの目標も達成し、現在、女性管理職は105人、女性技術者は571人に上っています(2019年4月現在)。

そうはいっても、現場に出る女性社員が、男性との差を感じることはないのでしょうか。星さんは、「『女だからできない』と思うことはありません。むしろ、施工管理だからこそ、自分の差配で現場を働きやすい環境にできるんです」と明かします。

作業員用の施設の設営やスタッフの手配なども、施工管理の仕事です。例えば、女性用休憩所を設置する許可をもらい、着替えの場所やドレッサーの配置などを提案することもできれば、ゴミやほこりで現場が汚れていると感じたら、スタッフに清掃を依頼することもできます。

「機材面でも技術がどんどん進化して、女性向けの製品も登場してきています。女性が働きやすいということは、男性ももっと働きやすくなるということ。自分たちの力で、業界全体の3Kのイメージも変えていくことができるはず」。星さんはそう力を込めます。

現場に立ち続ける

まだ独身ですが、子育てしながら時短勤務で施工管理を行う先輩女性や、彼女たちへの協力を惜しまない周囲の様子を目にし、結婚・出産を経ても働き続けたいと考えています。今は、国家資格の「1級建築施工管理技士」を取得して、現場で任せられる仕事の幅を広げたいと、資格取得に向けて勉強に励んでいます。

「私の考えた計画に沿って、人が動き、建物が出来上がっていく。それが、現場管理の醍醐だいご味です。ずっと現場に立ち続けて、いつか一人で大きな現場をとりまとめられるようになりたいですね」

(取材・文/メディア局編集部 安藤光里、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ