人生にも戦略を カゴメ 曽根智子さん

成功をもたらしたこの一冊

食品メーカーのカゴメは、女性活躍推進に力を入れている企業として注目されています。執行役員の曽根智子さんは、東京本社や全国の支店などで女性社員が参加する“曽根塾”を開いています。そのテキストとして使っているのが、「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」(入山章栄著)。学び合いながら成長していく姿に、やりがいを感じているそうです。

女性リーダーに期待される三つの力をつける

――まず始めに、曽根塾について教えてください。

「次世代リーダー自主勉強会」の通称です。2017年6月に始めて、今は全国に計11グループあります。頻度は月に1回ほど。1グループ10人前後、20代~40歳前後の課長職手前の女性たちが参加者の中心です。

カゴメは、長期ビジョンとして社員から役員まで女性比率を50%にすることを目標に掲げています。私がダイバーシティ推進室長に就任した15年当時は、昇進試験を受ける女性がとても少なかったんです。意欲高く、楽しく働いてもらって、管理職を目指したい人には目指してもらえたらと考えました。

――勉強会では、何を学ぶのですか。

女性リーダーに期待される三つのスキル、コミュニケーション力、ネットワーキング力、俯瞰(ふかん)力の獲得と強化を目的にしています。プログラムは、私が作りました。人事や研修の経験はないんですけどね(笑)。リーダーとしての視座を獲得するといっても、なかなか一人では学べないので、仲間と一緒に実力を養い合う場になっています。

――具体的にはどのように進めるのでしょうか。

自身の業務紹介や、課題図書をテーマにしたディスカッションなどを行います。この本を課題図書にしている理由は、表現が平易で、とても読みやすいからなんです。網羅的で、経営ってこういうことなんだ、ということがわかります。勉強会のスタートでは、「働く女性の経営学」のパートから始めます。


――テキストは、経営学の本なのですね。

 <「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」(日経BP社)は、米国で経営学の研究に携わってきた入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授が、イノベーション、グローバル、ダイバーシティー経営、リーダーシップなどの領域についてわかりやすくまとめた書籍です>

その日の担当の人が、本の内容をパワーポイントにまとめ、5分程度のプレゼンテーションをします。その後、内容について意見交換をします。正解もありませんし、意見をとりまとめることもありません。さらに、上司や先輩を意識する必要もありませんから、自由に話せます。

普段の会議であまり発言しない女性も、「意見を言ってもいいんだ」「自分の話を聞いてもらえた」という体験を通して、業務でも活発に発言してもらえたらと考えています。

若手の成長にやりがい

――参加者が増えてきて、女性の活躍への手応えはありますか。

参加した女性たちは視座が高くなって、発言内容も変わってくるなど、メキメキ成長しています。ほんとうにうれしいし、楽しいですね。その成長にかかわれるのが、私のやりがいになっています。彼女たちの社内のネットワークも広がり、最近は、昇進試験を受ける女性も増えてきました。

――ご自身も若いころに、経営の本などを読んで勉強したのですか。

恥ずかしながら20代のころは、経営の本なんて読んでいませんでした。化粧品会社の広報担当になったとき、新しいミッションを与えられたのですが、知識も人脈もない。そこで、アパレル企業で広報をしていた大学の同級生と2人で異業種交流会を始めたんです。そうしたら、メーカーや流通、メディア関係者らで、あっという間に40人くらいに広がって。自己育成にものすごく役立ちましたし、一緒に年をとって、私の財産になっています。

なりたい自分は自分でつくる

――20代、30代の働く女性たちへのメッセージをお願いします。

「人生にも戦略を。なりたい自分は自分でつくるというもの」と伝えたいです。自分のやりたいことは何なのかを考え、どうなりたいのかを大切にしてほしい。そのときに、20年後にどうなっていたいかを考える。時間軸を持つことで、そこから逆算して、1年後にはどうなっていたらいいか、1か月後には……と考えていくと、今すべきことが見えてきます。日常に忙殺されてしまいがちですが、ぜひ、時間軸を持って考えてほしいですね。

――曽根さんの「なりたい自分」は?

私自身は、「日本の広報担当」になりたいですね。子供たちに暮らし続けたい国として選んでもらえるように、カゴメを卒業しても、自分のできる範囲で日本の魅力を発信したいんです。

――ワイン好きだそうですね。毎年、山梨・勝沼のワイナリーを巡る“曽根ツアー”を行っているとか。

若い頃に「イタメシ」ブームがあって、ワインを飲むようになりました。醸造家と話してみたくて、東京から行きやすい勝沼に通うように。かれこれ20年以上になるでしょうか。友人、知人と産地巡りをするのも、草の根的な日本の魅力を伝える広報活動だと思っています。

――ワイン関係で、おすすめの本はありますか。

愛飲家としてのキャリアは長いのですが、改めて勉強したくなって、渡辺順子さんの「世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン」(ダイヤモンド社)を電子書籍で読みました。ポルトガルやニューワールドも含め様々なエリアのワインがカバーされていて、歴史的な部分の記述もあり、おさらいできました。

私は日々、おいしいワインを飲むために働いているようなものです。

(聞き手・読売新聞メディア局 小坂佳子)

「成功をもたらしたこの一冊」シリーズは、こちらから。

曽根 智子(そね・ともこ)

 カゴメ 執行役員・健康事業部長兼女性活躍推進担当

 大学卒業後、ポーラ、ミキモトで広報宣伝を担当。2003年、カゴメに入社。広報課長、広告部長、IR部長、ダイバーシティ推進室長を経て、2016年4月、執行役員・ダイバーシティ推進室長に。18年10月より現職。