組替え=人事異動 トップを支える人材はどこから

タカラヅカが教えてくれたこと(13・・・

タカラヅカでは時々「組替え」があります。いわば人事異動です。雪組から花組へ、というように所属が変わります。若いときの異動もあれば、中堅でも、そして、ある組の2番手が別の組に異動してトップに就任するという例も結構あります。生え抜きから長が持ち上がらず、なぜか他の部署からやってくるという、民間企業でよくあるあのパターンですね。

何のための組替えか

カイシャの異動とはやや異なり、組が変わっても職種や業務が変わるわけではありません。では、何のために組替えをするのでしょう。「人材の不均衡を修正するため」と「人材の育成のため」と推測されます。例えば、これから4番手、3番手あたりに上がっていく人材がやや過剰な組と、足りない組があるとしたら、そこを調整する必要があります。中核になるメンバーの個性やタイプのバランスを正すこともあろうかと思います。少し環境を変えた方が伸びる人材もいるでしょう。外部からはうかがい知れませんが、人間関係のトラブルなどに起因する組替えもあるのかもしれません。

トップを支える人材を異動させる例もあります。同期や年次の近い後輩などで、個人的にも親しく、舞台上でも、舞台を離れても、文字通り「支え」になる人材を持ってくるのです。支える側は、2番手、3番手の位置づけではなく、「別格」と呼ばれる実力派のベテランが多い印象です。

前述したように、その組でずっと育ってきたトップというのはむしろ少数派で、だいたいは異動を経験してくることが多いのです。たぶん、孤独なのだと思います。気心の知れた人、そしてもちろん、仕事上でも手助けしてくれる人が近くに必要なのでしょう。

トップを支えるのにふさわしい人とは?

「支える」側はどうなのでしょうか。別格として役付きも良くなりますし、キングメーカーと言っては大げさですが、ともに協力してひとつのトップスター像を作り上げていく喜びもあるはず。組のまとめ役としても期待されるでしょう。内閣でいえば、官房長官の役回りですかね。

一方で、この場所にいる限り、トップの羽を背負う可能性は低いことは認めざるを得ません。支えつつ、支えつつ、いつかその日が来るのを夢見ているのでしょうか。もしくは、まったく違うミッションがあるのだと割り切るか。ちなみに、日本でこの30年間、官房長官は計28人いたのに、この中から総理になったのは、わずか3人です。

トップにとって、「近くで支えてくれる人」は不可欠です。トップと一言でいいましたが、大きな組織だけではなく、ほんの数人の小さな組織であったとしても、リーダーにはそういう人が必要です。ただ、往々にして「知った人間」を連れてきてしまう。それが良いのかどうか、私自身もしばし考え込むことがあります。「人間は、知っている人間しかわからない」というのはたぶん真実。ただ「気心が知れている」「何でも言える」関係だけで組織を取り回していると、遅かれ早かれ他のメンバーとの間に深い溝ができてしまう気もします。

孤独に耐える力。たまたま周囲にいる「知らない人間」の中から、信頼に足るサポート役を探し出す眼力、育て上げる腕力。そうした力があればねえ。「お友達組織」から脱却するためには、力と覚悟が必要なのでしょうね。

連載「タカラヅカが教えてくれたこと」一覧

太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。