女一人ラーメンより苦痛な職場の「一緒にランチ」問題

ゆるキャリ女子の未来予想図6

読売新聞夕刊(7月16日)に掲載された発言小町のトピ「女性一人ラーメン笑われた」を興味深く読みました。夫が飲み会で不在だったため、夕飯時に一人でラーメン屋に行ったという女性。二十歳前後のカップルに「あの女の人、一人だよ。よく来られるよね」と笑われたそうです。男性なら一人でも何とも思われないのに、「女一人」となると、ぐっとハードルが上がることがあります。

淑女としてはどうなの?

私自身は、女性が一人でラーメン屋に出かけ、カウンターで麺をすする姿に、まったく違和感もなければ抵抗感もありません。一人で気の向くまま店に入り、気になったメニューを選び、とっておきの味を堪能、そして、その対価を支払う……。普段からそういう行動をしている私にとって、むしろ「女一人」が第三者のお笑いぐさになるなんて、どうも納得がいきません。

ただ、記事では、「女一人」に異議を唱える声も掲載されていました。

「夕食におひとりさまで女子がラーメン屋っていうのは淑女としてはどうなのかなぁ?」

「女性が1人で食事をするのはおかしくないけれど、場所や雰囲気を考えるのは必要かな」

誰にも迷惑をかけていないのだから、「他人がとやかく言う筋合じゃない」くらいに考えていた「女一人ラーメン」問題を巡り、様々な意見があることに改めて気づかされました。

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一人で映画に行ける女性は「猛者」?

レスの中で驚いたのは、「気になりますが、気にしない」と女性のおひとり様に肯定的な意見を寄せていた男性のコメントの後半の一文です。「ちなみに妻は、1人で映画館に行ける猛者で、そんなところにほれました」

映画は一人で見るほうが良いと思っている私には、驚きとともに新鮮な意見に思われました。まさか、私も“猛者”の一人だったなんて! 映画館へ誰かと連れ立って行けば、「この作品で退屈じゃないかしら?」「席はここらあたりでいい?」「何か飲みましょうか。ポップコーンはいかが?」などと、余計な心配や気遣いで面倒になります。映画の世界にどっぷりと浸れる至福の時間を邪魔しないで、と思うのは私だけでしょうか?

今月スタートしたテレビドラマ「偽装不倫」(日本テレビ系)にも、こんなシーンがありました。「東京はおひとり様に優しい。ラーメンだって女一人で食べられるし、一人焼き肉だって珍しくないし、一人カラオケも全く平気」。おひとり様を満喫する32歳独身の派遣社員・濱鐘子(杏)はこう言って、一人旅に出かけていくと恋に落ちるという展開が待っていたのです。

江戸時代から続く「世間体」は古臭い

おひとり様行動を実行に移すには、他人のことなんて構ってられないという都市部と、近所づきあいが濃密な地方では微妙に違いがあるのかもしれません。他人の目を気にする日本の文化は、武士が何よりも「世間体」を重んじた江戸時代から脈々と続いているそうです。

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作家でコンサルタントの佐藤智恵さんは、著書『ハーバードの日本人論』(中公新書ラクレ)の中で、「日本人はなぜ周りの目を気にするのか」に触れています。同書によると、江戸時代の武士たちは「戦っていない自分を世間がどう見ているか」が気になって仕方がありませんでした。この世間体を気にする習性は、その後、武士から町人や農民までに広がったとのこと。

もはや戦う必要がなくなってしまった武士の”自己承認欲求”が、いわゆる「世間体」だったのかもしれません。つまり、格好ばかりで実態は伴っていないということです。

「バリバリ働くキャリアウーマンらしく見えるか」

「料理も掃除も完璧にこなす妻として褒められるか」

「笑顔を絶やさない素敵なママとして映っているか」

あらゆる価値観が移り変わろうとしている令和の時代なのに、依然として他人の目の中で「世間体」を繕おうとするのは少々古臭い感じがします。

「いつも同じ人と一緒にランチ」気が抜けない

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女性は学生時代から、友達とトイレに連れ立ったり、女性グループで弁当を囲んだり、必ず登下校を共にしたりし、とかく群れることで安心感を得る傾向があるようです。私は高校時代、誰かと一緒にいることが苦痛でたまらない時期がありました。その場の雰囲気でうなずいてみたり、興味もないのに話を合わせてみたりしましたが、そのたびに心をすり減らす思いをしていました。

職場でも、いつも同じメンバーで「一緒にランチ」へ出かけていくという女性グループがいます。もちろん、ランチタイムはコミュニケーションの場として活用できるメリットもありますが、「いつも、いつも同じ人たちとランチに行かなきゃいけない」という同調圧力を感じるなら、それはかわいそうなことです。

同僚とのランチに加われば、「さて、何を食べようか」「じゃあ、どこへ行こうか」「今日は、中華なんてどう?」といったやりとりも、慎重に言葉を選ばなければなりませんし、食事中でも仕事やプライベートの愚痴や不満を聞かされるハメになるからです。たまには、勇気を出して「一人ランチ」という選択をし、自分だけの休憩時間を楽しんではどうでしょうか?

私は、自分の気持ちを偽って誰かと一緒にいるよりも、一人でいる方がずっと気楽なことに気づきました。アラサーの頃には、一人で海外旅行へ出かける楽しさを覚えました。時間の過ごし方も、訪ねる場所も、自由気ままに選べる一人旅はすべてが自己責任。そこで出会った人や景色のすべてが、自分の一部として成長の糧になると実感しました。

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波風を立てるのを嫌って「一緒にランチ」から抜け出せないという女性社員がいるように、「女一人ラーメン」を鼻で笑う第三者もいます。どちらも、江戸時代から受け継がれてきた「周りの目を気にする文化」のなれの果てなのかもしれません。

仕事に家事や育児で目がまわるような忙しい日々の中で、「一人ラーメン」だったら自分へのささやかなご褒美やちょっとした息抜きになりそうです。でも、職場の「一緒にランチ」は、ちょっと気が抜けそうにありませんね。

 誰かに自分を合わせなくてもいい。我が道を進みましょう!

関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
キャリアカウンセラー

亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「先輩に可愛がられ、同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる 職場で幸せになる45のコツ」(中央公論新社)「ダメ上司のトリセツ ―働く女子必読! 会社で地雷を踏まないために」(さくら舎)「伸びる女の社内政治力」(同)「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)などがある。

「伸びる女!」になる秘密

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