並び順は年功と成果のミックス 年次が「逆転」してもうまくいくワケは

タカラヅカが教えてくれたこと(12・・・

年1回発行される「宝塚おとめ」は、全歌劇団員の写真入り名鑑です。ページをめくるとまず「生徒一覧」として、各組ごとに名前がずらりと並んでいます。並び順には一定の決まりがあり、「おとめ」以外の発行物などでもこれが基本となります。

名簿の並び順は?

まずは入団の順。年齢が下でも先に音楽学校に入った方が先輩になります。今は〇〇期というように創立以来の数字で表すことが多いですね。創立105周年になる今年の初舞台生は105期となります。

そして、同期同士の並び方は、なんと成績順なのです。五十音順で並ぶのは音楽学校へ入学するときだけで、あとは試験の成績で並び順は替わるそうです。そして、入団後も研1、研3、研5のときに試験があり、そこでシャッフルされるのだとか。厳しいですね。

研5以降は試験がないのですが、その代わり最後の試験の成績による順番がそのあともずっと踏襲されるとのことです。これもさらに厳しい…。

カイシャの人事制度に重ね合わせてみると、「基本は年功序列なのだが、成果主義も導入され、評価による順位も公表される」といったところでしょうか。ただし、成績上位でなくてもトップスター、トップ娘役になっている例はたくさんありますから、「登用や抜擢ばってきは、順位とひもづいてはいない」ということになります。

「逆転」はしばしば起こる

年功型の人事管理が崩れつつある今のカイシャ組織では、後輩が上司になるような「逆転」がしばしば起こります。役所などではまだ年次と職位が連動している場合が多いようですが、民間企業ではそう珍しいことではなくなってきました。

タカラヅカ流の良いところは、若手でも路線スターになったり、良い役が付いたりという現実の「逆転」が起こっているにもかかわらず、年次×成績という並び順の原則は崩れない点でしょうか。成績順とはいえ、それは入団5年目までのこと。むしろ、その後の努力によって道はいくらでも開けると明示されているように思えます。そして、例えば、タカラジェンヌのトークやインタビューなどからうかがえるのは、舞台上の立場にかかわらず、年次が上の人間にはつねに敬意が払われていることです。

これ、とても大切なことだと思うのです。人事制度を理解し、社会の変化を受け入れたとしても、「逆転」について心理的な抵抗感はまだまだ強いでしょう。「後輩の下で働くのは嫌だ」「昔の先輩が自分の下に来たのでやりにくい」などの声もよく聞きます。

仕事場のモラール(意気、士気、風紀)を保つために、管理的な立場の人間がひとつ心がけるとしたら、「かりに職位が上になったとしても、年次が上の人たちに対して敬意をもって接する」ことではないでしょうか。また、逆に、後輩のもとで働く立場になっても、同様に相手を尊重する気持ちは必要でしょう。年次が下のトップスターを、脇役のベテラン陣がうまくもり立てているように。

舞台の中央を目指して個々人が激しく競うタカラヅカで、たぶん現実には、人間関係の葛藤や軋轢あつれきも少なからずあるのだろうと思います。並び順の原則とお互いの敬意が保たれることで、そうしたきしみが緩和されているのかもしれません。ここにも学ぶべきポイントがありそうです。

連載「タカラヅカが教えてくれたこと」一覧

太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。