人を育てるのが大好き…ママ店長の志 スープストックトーキョー・高砂恵

働く女のランチ図鑑 vol.19

 忙しい仕事や子育ての合間に、温かいスープでくつろぎのひととき――。そんな女性たちに人気のスープ専門店「スープストックトーキョー」(本社・東京都目黒区)の高砂恵さん(36)は、保育園と小学校に通う3人の子どもを育てながら、店長として店を切り盛りしています。仕事と子育てを両立するための工夫や、健康を支えるランチについて聞きました。

スタッフのスキルと働き方を理解

 スープストックトーキョーは、首都圏を中心に約70店舗を展開している飲食店です。メニューは、「オマール海老のビスク」や「東京ボルシチ」など、手をかけた本格的なものばかり。白色と木目を基調としたおしゃれな店内で、こだわりのスープを気軽に楽しめることから人気を集めています。

メニューの中でも人気の「東京ボルシチ」

 横浜ランドマークプラザ店の店長として、社員とアルバイトスタッフ約20人を率いる高砂さん。調理や接客のほか、スタッフの勤怠管理やシフトづくりも重要な仕事です。

 店で働く人は、高校生や主婦などさまざま。子育てとの両立に悩む主婦がいれば、通常よりシフトを減らしたり、アルバイトが初体験の高校生には自信をつけてもらうために仕事の目標を設定したり。ひとりひとりのスキルや働き方を理解するため、高砂さんはスタッフと話す時間を大切にしているといいます。

 「若いスタッフは、みんな我が子のような感覚で本当にかわいい。あの子たちには、店を卒業する時に『働いてよかった』と思ってほしいんです」と優しい眼差まなざしを向けます。

フルーツサンドでぜいたくな気分に

 店が最もにぎわう時間帯がランチタイムのため、高砂さん自身がゆっくりランチを取れる日は少ないといいますが、どうしてもリフレッシュしたい時には、ランチタイム終了後、お気に入りの「フルーツサンド」を食べに出かけます。

 同じビルの中にあるカフェ「果実園リーベル」のメニューで、フルーツサンド6切れと、フルーツ、サラダが一つのプレートに乗った盛りだくさんの一品です。


 高砂さんの子どもたちもフルーツが大好き。フルーツを買って自宅に置いていたのに、高砂さんの留守中に子どもたちが全部食べてしまっていた……なんてことも。だからこそ、ガラス張りの席でみなとみらいの景色を眺めながら食べるフルーツサンドは「フルーツも独り占めできるし、ぜいたくな気分になれるんですよ」。

「拡充隊」が待機、制度も充実

 飲食店の店長と聞くと、小さな子どもを抱えて働く女性には大変なイメージがあります。しかし、同社の柔軟な制度が、高砂さんの活躍を後押ししています。

 高砂さんは、時短勤務制度を使って午前10時から午後5時まで働いています。店舗の営業時間は、午前8時から午後10時まで。店長の自分が不在の間、店の様子は気にならないのでしょうか。

 「開店準備は信頼できるスタッフに任せています。私のほかにもう一人いる社員が、午後からの時短勤務で働いているので、閉店後の作業も心配いりません」

 同社では昨年、社員の年間の休日休暇日数を増やし、長期休暇も取得しやすくする「生活価値拡充休暇」制度が導入され、高砂さんも子どもと過ごす時間が増えたそう。また、店舗で急に人手が不足した場合に、応援に駆けつけてくれる専門チーム「拡充隊」がおり、ライフスタイルに合った働きがしやすくなってきているといいます。

自分がいなくても回る組織づくりを

 高砂さんは、仕事だけでなく、家庭でもまるで“店長”のように家事を切り盛りしています。

 保育園に通う子どもの送り迎えは高砂さんの役目。ただし、保育園から急な連絡があって迎えに行かなければいけなくなった時には、職場が保育園に近い夫が行くと決めています。土日は、子どもたちを夫に預けて仕事へ。下の子どもたちに朝ご飯を食べさせるのは、9歳になった長男の役目です。

 夫とお互いの仕事や学校行事などの予定を把握するため、スケジュール共有アプリなども活用しています。

 「全部を全力でやりたい。そのためには、職場も家庭も、私がいなくても回るような仕組みを作ることが大切なんです」。両立の秘訣ひけつをそう教えてくれました。

3人を育てながら店長に挑戦

 「仕事大好き人間」を自認する高砂さんですが、最初から店長になろうと思っていたわけではありませんでした。

 高砂さんは、秋田県出身。高校卒業後、都内の大学に進学しましたが、「都心にも、自然に囲まれた実家のような、ほっとできる場所があれば」と考えていたそうです。そんな思いから、次第にくつろぎの空間を与えてくれるカフェで働きたいと考えるように。スープストックトーキョーがカフェ事業を始めると知り、2005年、大学卒業とともに同社に就職しました。

 入社後、人事や研修の担当をはじめ幅広い業務を経験するうちに「サポートしながら人を育てることが大好きと気づきました」。3人目を出産した後は、店舗で店長を補助する業務を任されました。

 「3人の子どもを育てながら店長なんて無理だと思っていましたが、スタッフを育成する仕事は魅力的で。子育ての要領が分かってきたこともあり、店長をやってみたいという思いが強くなっていったんです」。上司に相談し、18年に現在の店舗で店長になりました。

70歳まで働き続けたい

 「店長の役割のほとんどは、スタッフを育てること」と言い切る高砂さん。育成力が評価され、店長と並行して、社内の新人社員や管理職などの人事研修も担当しています。

 高砂さんの目標は、70歳まで働き続けること。

 「仲間が笑顔で働いたり、仕事のやりがいを語ってくれたりする姿を見るのがうれしいんです。教えた子が成長して店を卒業して、また新しい子が入ってきて――。もう仕事に果てがないですよね」。ママ店長の志は、まだまだ道半ばです。

(取材・文/メディア局編集部 安藤光里、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ