どんな世界も「研7」で一人前? でも大抜擢も期待したい

タカラヅカが教えてくれたこと(10・・・

 唐突に野球の話題で恐縮ですが、大船渡高校の佐々木朗希ろうき投手が最近注目されていますね。160キロ台という超剛速球を投げ、「大器」「逸材」「至宝」などの言葉がスポーツ紙の見出しを飾っています。17歳、高校3年生。タカラヅカの音楽学校生と同じぐらいの年回り。来年もしプロの世界に入るとしたら、晴れて「研1」ということになります。

 あ、「研1」とは何かをまず説明しなくては。タカラヅカでは音楽学校の1年目を予科生、2年目を本科生、歌劇団に入って初舞台に立つ1年目は研究科1年生、略して研1と呼びます。そして2年目以降、研2、研3、研4……と続いていくわけです。退団まで一生徒として学び続ける、それがタカラジェンヌなのですね。

何年たったら一人前?

 新人公演といって、本公演と同じ演目を若手が演じる機会があるのですが、これに出演できるのは研7までと決まっています。また、阪急電鉄の社員扱いという立場だったのが、研6(以前は研7だったようですが)からタレント契約になるとも聞きます。つまりはこの6~7年目というあたりが、一人前とみなされるラインなのでしょう。そして、人によっては「スター路線」に乗った雰囲気が伝わってくる時期でもあります。

 今回は野球のたとえが多いですが、高卒、大卒、実業団経由など年齢差は考慮に入れず、プロ入団1年目を初舞台=研1とすると、研7は、例えば広島の鈴木誠也選手です。研4ぐらいで頭角を現し、立派な「路線」になりました。巨人の岡本和真選手はいま研5。まだまだ伸びしろがあるということでしょう。坂本勇人選手は13年目ですから、タカラヅカでいえばトップスター期。これも納得ですね。

 自分自身を振り返り、また周囲を見回して、ある程度仕事をまかされ、それなりの成果を出せるようになったのはいつごろだろうと考えると、やはり大卒入社で30歳前後の時期でしょうか。2年間の基礎教育を経て舞台に立ち、6~7年で一人前に育てられ、そのあたりで組織の中での役回りが定まってくるタカラヅカ式の人材育成は、新卒採用・長期雇用を前提とした日本型の組織に重ねても、ある程度妥当なシステムだと思えます。

かつてはあった大抜擢

 一方で、この方式だと、意外性のあるスターは生まれないのです。カイシャでもタカラヅカでも、1年目から大活躍、というのはまずあり得ない。以前のタカラヅカでは、天海祐希さんが研7でトップスターに、黒木瞳さんは研2でトップ娘役になるなど、早期の抜擢ばってきをしていたこともあったのですが、最近は堅実かつ慎重なスター育成を心がけているようです。また、10年ぐらい地道に脇役を務めていた人が、ある時、突然注目されてトップや二番手になるという例も、あまり見かけません。育成の過程で将来のトップ候補が定まってくると、たぶんその人を特別に育てるための配役や登用が行われ、「路線」と「その他」がくっきり分かれてしまうのでしょう。

 どんな組織でも、たまに新たなスターが「すい星のごとく現れる」と活性化すると思うのです。軋轢あつれきも失敗もあるでしょうが、その経験値が何かを変えていくことにつながるはず。大船渡高校の佐々木投手が来年プロ入りし、10代の「研1」エースとして、野球マンガのような活躍をする日を楽しみにしています。

関連記事
太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。