トップと組長 タカラヅカ流ツートップ管理術を学ぼう

タカラヅカが教えてくれたこと(6)

 「〇〇君は〇年入社。高校は〇〇だから、〇〇さんと同窓だね」というように、カイシャにはよく、社員の入社年次や出身地などを熟知している人がいますよね。そうした方がもしタカラヅカファンになったら、「宝塚おとめ」は必携だと思います。年1回発行される全歌劇団員の写真入り名鑑で、ファンは略して「おとめ」と呼びます。一人一人の出身地や出身校、初舞台、演じたい役、好きな食べ物などが掲載されています。

組織管理をする「組長」

 タカラヅカの各組は、トップスターを頂点としたピラミッド構造であるかのように見えます。しかし、「おとめ」のページをめくると、各組の最初に掲載されているのは、トップスターではなく「組長」という別の人です。その下に「副組長」もいます。最新の2019年版によると、5組の組長のうち最も初舞台が早い人は1984年ですから、舞台歴35年ということになります。他の方もおおむね20~30年のキャリアを持つベテランで、各トップスターよりも5~15年ほど先輩にあたります。演技力のある脇役や、歌やダンスの名人など、トップには立たなかったが、長年、舞台をきりっと締める役割を果たしてきた人が組長になっている印象ですね。

 劇団ホームページの「宝塚用語辞典」によると、組長とは「その組の最上級生で、組の生徒達(組子)の指導者として公私の面で面倒をみている」とのこと。なるほど、10代、20代が多数を占める女性ばかり70人余りの組織で、「公私」両面に目配りし、相談に乗るのは、並大抵のことではありません。舞台人としてのキャリアはもちろん、人柄や見識を併せ持った人が選ばれるのでしょう。

 トップスターが舞台活動でのリーダーだとすれば、組長は組織管理上の長だと言えます。実際のところ、宝塚歌劇は阪急電鉄の一部門が行っている事業なので、会社側の担当者が「プロデューサー」として各組に配置されているようです。ただ、現実の運営体制やそれぞれの役回りは、外からはよくわからないので、とりあえず各組にトップスターと組長がいるツートップ体制、もしくは複線型の管理体制だという言い方にとどめておきましょう。

 そして、この方法、けっこう良いと思いませんか。カイシャ組織では一般に、部長とか課長とか、一部門に1人のリーダーを置きますね。では、どんな人材が選ばれるか。いくつかのパターンがあると思うのです。

管理職にもタイプがある

 能力が高く経験も豊かで、大きな業績をあげてきたエースが管理職に就くことはよくあります。「トップスター型」と言えるでしょうか。若手の目標となり、士気も上がるかもしれませんが、歯車がずれるとうまくいかないことも。優秀な人ほど、自分が成しえてきた水準を部下に求めてしまい、「なぜできないのか理解できない」のです。

 一方で、内外への気配り目配りにけたタイプの管理職もいるでしょう。こちらは「組長型」ですね。安定的な組織運営はできるのですが、大きなビジョンを提示したり、新しい挑戦を後押ししたりということは後手に回りがちかもしれません。

 2タイプのリーダーが連携して組織を率いると、それぞれの長所を伸ばし、短所をカバーできる気がします。あ、でも2人の関係が上手に構築されていないと難しいかも。そのあたりのコツも、タカラヅカの各組を率いるツートップの方々に一度うかがってみたいものです。

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太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。