あなたの周りに「路線」はいる? 人の評価は難しい

タカラヅカが教えてくれたこと(5)

 先々のトップスター候補とみられる人を、タカラヅカファンは「路線」と呼びます。「〇〇さんは路線だから」「いや、路線に見えたけど、はずれたんじゃない?」というように。

 誰もがスターの路線に乗れるわけではありません。ただ、結果としてトップになる人は、若い頃から頭角を現し、実力と人気を得て目立つ役もつく。そして、その経験によってさらに成長していくように見えます。運も力も必要ですが、それに加え、「将来のトップとして育てよう」という、組織の意思のようなものがうかがえます。

登用され磨かれていく

 その人が路線なのかどうか。一つの目安は「新人公演」でしょうか。本公演の期間中に1回だけ、同じ作品を若手の配役で上演するのです。ここで主役、つまり通常は組のトップが演じている役を充てられると、かなり期待が高まります。ほとんどのトップスター、トップ娘役は、新人公演で主役を経験しているようです。

 各組のトップに次いで目立つ扱いをされているスターは2番手と呼ばれ、3番手、4番手と続くように見えます。実は、各組のトップスター、トップ娘役は歌劇団が正式に発表しますが、2番手以下は制度化されたものではなく、位置づけは曖昧なのです。重要な役がついたり、ポスターの写真が大きくなったりすると、ファンの人たちはよく「番手が上がる」と表現し、そうした人たちが「路線」であるとも言えるのですが、全員が順調に階段を上り続けるわけではありません。このあたり、カイシャと一緒ですね。

 そして、「路線」は誰が見ても「路線」なのか、「この人が路線?」と首をかしげることはないのか、ということも気になります。タカラヅカを見続けていると、自分の好みは別として、「ああ、この人はそのうちトップに立つだろう」というのは、だいたいわかります。歌、ダンス、演技、容姿などすべてが完璧ではなくても、高水準でバランスが取れ、しかも華がある(エンタメの世界ではよくこうした言い方をします。詳しくは別の機会に)。そうした誰もが納得できる人材は確かにいます。

 一方で、「路線なのかもしれないけど微妙」と思う場合もありますが、そうした人も活躍の場を与えられるとなぜか変化し、スターの輝きをまとっていく感じがするのです。歌劇団による登用(先ほど、大変さらりと「組織の意思」と書いてしまいました)と、ファンやメディアなど外部評価のズレが仮にあったとしても、時間がたつにつれ修正されていく。いや、自身の努力によってそのズレを修正できる人こそが「路線」なのだと思います。

可能性にかける

 長年、企業の中で人の評価をしてきました。また、他の評価者の評価プロセスや結果を検証した経験もあります。そこでわかったのは、絶対的なプラス評価というのは、評価者の違いなどによるブレはあまりないのです。つまり、誰もがうなずけるスター候補はいる、ということですね。評価がブレる「微妙」なタイプについては、何が欠点であるか、克服は可能かどうかを見極め、本人の努力を促すのも一つの方策。配置替えや人事異動が功を奏することもあります。

 いずれにせよ、人の評価や育成はほんとうに難しいもの。でも、だからこそ「人は変わる」という可能性に賭けてみたい気もするのです。タカラヅカでもカイシャでも。

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太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。