私は舞台のどこにいる? 組織の中での立ち位置を知る

タカラヅカが教えてくれたこと(4)

壮麗なフィナーレ 並び方に着目

 劇場に足を運んでいて、長年タカラヅカを見てきて良かったとつくづく思うのは、私の場合、あの豪華壮麗なフィナーレのひと時です。全出演者70人余りが大階段を下りてきて、大きな羽根を背負ったトップスターを中心に並び、銀橋ぎんきょうをパレードする・・・。

 大階段って何? 銀橋って何? そうですね。タカラヅカのフィナーレを語るには、まず舞台構造上の特徴を説明しなくてはなりません。

 宝塚大劇場と東京宝塚劇場には、舞台いっぱいに設置できる巨大な階段形の装置があります。劇団のホームページにある「宝塚用語辞典」によると、この大階段が最初に登場したのは1927年と歴史は古く、現在の段数は両劇場ともに26段だそうです。また、銀橋とは、オーケストラボックスと客席の間にある通路状の舞台のことです。

 フィナーレでは、大階段の上から全員が順々に下りてきます。そして、客席に張り出した銀橋を渡ると、さらに演者と客の距離は縮まります。大きさ、高さ、遠近感を巧みに使った演出ができ、なおかつ一人一人の姿がしっかり見えるという効果もあるようですね。

 最後には、トップスターを中心に、両脇がトップ娘役と2番手男役(これも独特な用語ですが、説明は機会を改めて)、続くスターとベテラン陣が舞台の最前列に並びます。2列目以降は中堅から若手となり、初舞台生などはまだ階段上。ただし、若手でも、先々のスター候補として抜擢ばってきされると、階段下りの順番や組み合わせも変わり、最前列の中央近くに顔を出してくるのです。ファンはこうした変化に着目します。

 つまりその時その組織においての、人材活用の状況が一目で俯瞰ふかんできる。それがタカラヅカのフィナーレなのですね。

自分の役回りを見定める

 属している組織の中で、自分がどんな役回りをするべきなのか迷うとき、私はこのタカラヅカのフィナーレの光景を重ねてみます。自分はまだ階段の上の方にいる若手なのか、トップに近づいてきているのか。そして、トップを目指していると思っていたけど、自分の役回りはどうも違う、スターを支える渋い脇役として生きよう――と思い至るかもしれません。

 前回書いたように、まずは「トップに立つ自分」を想定して初舞台を迎えるのは、組織人として必要な訓練だと思います。ただ、時がたち、その道に習熟すればするほど、自身の適性もわかり、トップ以外の多様な道があることにも気づきます。「この仕事は好きだし、それなりに評価もされたい。可能な範囲で組織の階段を上りたい。でも私はこのあたりで落ち着くのが良いのかな」と、自分の最終的な立ち位置を見定める時期は誰にもやってきます。たぶんタカラジェンヌもそうなのでしょう。

  トップへの道を歩まなかった人たちも、それぞれ魅力的で個性があり、多くのファンがついています。最前列の端の方で、悪役を得意とする中堅が満面の笑みで手を振っている姿を見ると、ああ、タカラヅカのフィナーレはいいなあと、改めて思うのです。

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太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。