あなたは「トップに立つ自分」を想定できるか

タカラヅカが教えてくれたこと(3)

 春になると、宝塚音楽学校の合格発表や入学式がニュースとして取り上げられます。タカラヅカの舞台に立つには、音楽学校に入り、2年間の課程を終えることが条件。募集要項には「受験時に中学卒業あるいは高等学校卒業、または高等学校在学中の方」とあるので、受験できる機会はわずか4回ということでしょう。10代の半ばで決意を固め、ここを突破しないことには、夢の舞台には立てません。

 音楽学校を経て歌劇団に入団した生徒たちは、花、月、雪、星、そらの5組に分かれて活動します。それぞれの組に主演男役=トップスターがおり、その人を中心に芝居やショーは構成されています。相手役は、主演娘役=トップ娘役と呼ばれます。トップスターになるのは、入団して10~15年ぐらいの時期です。トップ娘役はもう少し早くて5~10年ほどでしょうか。相撲の横綱と同様、いったんトップになると下りることはありません。ただ、一般的には数年で退団し、後進に道を譲ります。

 身近に合格経験者がいないので(4回不合格だった友人はいるのですが)、その気持ちを正確に推し量ることはできません。ですが、たぶん音楽学校に入学できた時点では、ほとんどの人が「トップに立つ自分」を想定し、そこを目指して頑張ろうと思うのではないでしょうか。

 ひるがえって一般社会ではどうか。日本の高度経済成長期には、社長であるか部長であるかは別として、組織の「長」を目指すことに一定の価値が付与されていました。低成長に移ってからも、その空気はしばらく残っていた気がします。男子たるもの、人の上に立たねば、という空気が。

 そう、「男子たるもの」なのですね。多くの女子は長らく、トップに立つ自分を想定できませんでした。先達の女性管理職が少ないなど、理由はさまざまでしょう。「想定する」とは、必ずしも強く望んだり、目指したりすることではありません。好むと好まざるとにかかわらず、自分が人の上に立つ可能性を認識するかどうか。そうした認識を持って日々を過ごすうちに、望ましい上司のあり方を自分なりに考える。さらには経営戦略や組織の形、人材育成の方法など、ちょっと「上から」の視点でものをみる訓練ができるはずです。

 男性たちは(その人がトップの器であるかどうかはともかく!)、若い頃からこうしたシミュレーション訓練をしてきています。自分自身を含め私が見てきた少なからずの女性は、それができていませんでした。「想定」をしないまま「登用」だけされ、うまくいかないと、「やはり女は管理職に向かない」と言われる。これは理不尽ですね。

 もちろん、誰にとっても「長」が最良のゴールであるなんていうのは、高度成長イケイケ時代の価値観に過ぎません。ただ、せめてこれからの若い世代は、タカラヅカの生徒のように、まずは「トップに立つ自分」を夢見て初舞台を踏んでほしいのです。

 そして、仕事をしていく過程で、自分の適性や志向がわかると、組織の中での自分の役割がはっきりしてきます。「立ち位置」もまた、タカラヅカが教えてくれること。それは次回に。

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太田姫いのり(おおたひめ・いのり)
タカラヅカ愛好家

 東京都出身。タカラヅカの初見は、(たぶん)1968年新宿コマ劇場雪組公演。その後、今はない松竹歌劇団のレビューにもはまり、伝統芸能から小劇場までさまざまな舞台を見てきた。情報通信業のそこそこ大手で働き続け、現在は上位幹部職員。