男性ドライバーに負けない!「佐川女子」の自信 佐川急便・松浦由佳

働く女のランチ図鑑

 日本全国365日、客先へ荷物を届け続ける物流大手「佐川急便」。白と青のストライプのシャツを着たさわやかなイケメンが配達に来てくれる――と数年前、同社で働く男性社員「佐川男子」の写真集が話題になりました。宅配のドライバーといえば、男性のイメージが強いですが、同社では「佐川女子」も活躍しています。その一人、松浦由佳さん(28)は日々、東京都内で2トントラックを運転し、荷物を届けています。松浦さんに、仕事への思いやパワーの源について話を聞きました。

重い荷物も「いつの間にか持てるように」

 松浦さんは、トラックで荷物を運ぶ「セールスドライバー」。配達は基本的に1人で行うため、運転はもちろん、荷物の積み下ろしも自分で行わなければいけません。

 ペットボトル飲料が詰められたケースなど重い荷物もありますが、「コツをつかめば、いつの間にか持てるようになりますよ」と松浦さん。「きちんとしゃがんで、腰だけでなく膝も使うのがコツです」と教えてくれました。夜のジム通いや、仕事の合間の体幹トレーニングなど、普段からの体力づくりが欠かせません。

配達の七つ道具

PDT(一番左)や軍手、荷物の大きさを測るメジャーなど

 松浦さんの腰には、仕事に欠かせない道具が入った小さなカバンが二つ。中を見せてもらいました。
 なかでも大切なのは、荷物のバーコードを読み取るPDTという機器。この機器で伝票についたバーコードを読み込むことで、客がインターネットで荷物の配送状況を追跡できるという優れものです。また、松浦さんが「意外と大事」というのが、軍手。「つけないと手が汚れるし、一日中、荷物を持っていると手荒れがひどくなるんです」

「マシマシ」カレーでパワー補充

 力仕事をする松浦さんにとって、ランチタイムはパワー補給の大切な時間です。午前中、最後の配達を終えると、配達先の近くの飲食店に入ることが多いそう。

 この日は、いつもより控えめな量のカレーだったとのこと

 「食べるのが大好きなんです」という松浦さんが、よく食べるのがカレーです。ご飯を400グラムに増量して、チーズをトッピングするのがお気に入り。時間がない時には、牛丼がいいそうです。「いっぱい食べられるし、出てくるのも早い。なんでも『マシマシ』って増やしたくなっちゃうので、いつも肉増しにします」と言って笑います。

 休憩中に配達先のお年寄りとすれ違い、声をかけられることも。天気の変化や最近あったことなど、取り留めもない話ばかりですが、それもリフレッシュできる楽しいひとときです。

台車での配達から女性ドライバーへ

 小さい頃から運動が大好きだった松浦さん。中学生の時から、クラブチームでサッカーに没頭しました。東京女子体育大に進み、卒業後の2013年4月、クラブチームの先輩が働いていた佐川急便に入社しました。

 最初に担当したのは、「セールスデリバリー」という仕事。半径250~500メートルのエリアを複数人で受け持ち、台車で配達する業務です。

 その営業所で目にしたのは、女性の先輩がトラックを車庫入れする姿でした。「『あ、女の人でもトラックの運転ができるんだ』って、はっとしました」。そんな先輩の働く姿を見たり、トラックの運転席の隣に乗せてもらったりするうちに、次第にドライバーへの憧れが募っていきました。

 拠点にある荷物をチーム内で融通して運び切るセールスデリバリーと比べて、トラックを運転して荷物を配達するセールスドライバーは、担当エリア内の荷物は1人で運ばなければなりません。プレッシャーの増す業務ですが、「ミッションのようでワクワクしました。どれだけやれるか、腕試しをしたかったんです」。

 上司の後押しもあり、14年夏、念願のセールスドライバー職に就きました。

写真集の表紙に抜擢ばってき

 18年12月、同社の女性を取り上げた写真集「佐川女子」が、小学館から出版されました。3人が顔を寄せ合って笑う表紙の真ん中にいる女性が、松浦さんです。撮影することを知った時のことを、「驚いたけど、『佐川にもあんなに女性がいるんだね』って知っていただけるんじゃないかと思いました」と振り返り、「(本をきっかけに)佐川女子が増えたらいいなあ」と言って笑顔を見せます。

走れるエリアを広げたい

 ドライバー歴も4年を超えました。多い時には、1日で160戸を回ります。今では住所を見ただけで大体の場所がわかるので、どんな道順で、どの順番で回ったら効率よく運べるか、頭の中に地図を描いて考えながら、朝、トラックに荷物を積み込んでいくといいます。「体力勝負の仕事じゃない。頭の回転や要領の良さがあれば、男性にも負けません」と、言葉に力を込めます。

 そんな松浦さんが、今目指しているのは、次の役職「主任」へのステップアップ。主任に昇格すれば、走れるエリアも広がります。

 「女性だから楽で簡単なエリアを走らせてもらっている」と思われたくないという松浦さん。主任になってエリアを広げることで、「女性でも男性と同じところを走れることを示せる。それって、かっこいいなと思って」と目を輝かせます。
 「男性に負けたくない、勝ちたいですよね」
(取材・文/安藤光里、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ