日本酒バーの女将も…二つの仕事で伝えたいこと オイシックス・ラ・大地 小川佐智江

働く女のランチ図鑑

 有機や特別栽培野菜など、安全性に配慮した食品の宅配会社「オイシックス・ラ・大地」で採用・広報を担当している小川佐智江さん(30)。同社での仕事の傍ら、元ミス日本酒の経歴を生かし、日本酒バーの女将おかみとしておすすめのお酒をふるまっています。そんな小川さんの本業と副業、多忙な毎日を支えるランチの様子にせまります。

会社の魅力を伝える

 新入社員説明会で話をしたり、求職者向けのブログを更新したりするのが、小川さんの採用・広報担当としての仕事。「会社の魅力を伝えるため、なんでもやっています」

 頻繁に開催されるエンジニアやデザイナーの勉強会などのイベントでは、小川さんが自社のキッチンを使って料理を作り、懇親会の場で参加者にふるまうこともあるそう。

 大学では食品栄養学を学び、栄養士の資格を持っている小川さん。「実家暮らしのため、普段は料理をしないのですが、ここではひたすら皮をむいたり、切ったり。栄養士っぽいなと感じます」

カルシウムはバッチリ「小海老めし」

 小川さんのランチは、本社内で販売されている日替わり弁当。同じものが東京駅構内で同社が運営する総菜店「大地を守るDeli」でも販売されています。

「小海老めし」960円 

 コクのある甘辛ダレがかかったサクサクの小海老えび揚げが、ご飯の上にたっぷりとのっています。「味付けがおいしいし、カルシウムもとれるので、たまに買って食べています」

 普段は仕事が忙しく、デスクで仕事をしながら弁当を食べている小川さん。コンビニやスーパーで弁当を買うこともありますが、栄養バランスなどを考えて、自社の日替わり弁当を選ぶことが多いそうです。

日本酒の魅力に目覚める

 小川さんのもう一つの顔、それは日本酒バー「MYSH Sake Bar」の女将です。日本酒との出会いは、大学生の頃。通っていた大学には日本酒を学べる醸造科学科があり、日本酒好きの友人がたくさんいました。彼らからおいしい日本酒を教えてもらい、その魅力に目覚めたといいます。

 大学を卒業後、業務用食品の卸売会社に就職。2015年にミス日本酒に選ばれると、会社を退職して約1年間、日本酒のおいしさを広めるために活動しました。「『日本酒、好きですか?』と聞くと、『あまり詳しくないんですが……』と返されることが多いんです。本来は嗜好しこう品なのだから、おいしい!好き!でいいはずなのに、なぜ詳しくなければいけないのかと思いました」と小川さん。「もっと気軽に楽しんでもらえたら」との思いから、イベントに出たり、日本酒の歴史や作り方を勉強したりして、その魅力を発信しました。

日本酒以外の可能性を探る

 ミス日本酒の活動が終わり、コンサルティング会社で働いていた時に、ある酒蔵から「一緒に働きませんか?」と誘われたといいます。「日本酒は好きだけど、酒蔵で働いたら、そこのお酒に限定されてしまう」と悩んでいたときに、「日本酒のおいしさを広めたい」というビジョンが一致する人と出会い、日本酒バーを開くことで意気投合しました。

 一方で、「日本酒以外の可能性を探りたい」と考えていたこともあり、兼業が認められているオイシックスに入社し、ここで働きながら日本酒バーの運営に携わることを決めたのです。

土曜の夜はバーの女将に

 オイシックス・ラ・大地の仕事は月曜から金曜日。毎週土曜日に、バーのカウンターに立ちます。午後3時から仕込みを始め、閉店の午後11時まで店で働いています。まさに二足のわらじの生活。「採用・広報の仕事をしながら女将もやるので、正直大変です」と話します。

日本酒バーでの様子(小川さん提供)

 ただ、大変なことだけではなく、得たこともあったそう。「日本酒バーの従業員は15人ほど。副業の人とアルバイトの人がほとんどで、仕事のモチベーションやお客さまに出したいお酒もみんなバラバラ。その中でどうやって良いチームワークを作っていくのか。考え方やものの見方、コミュニケーションの取り方の勉強になります」
 オイシックス・ラ・大地が定める社員の兼業・副業の条件は「本業によい影響を与えるもの」。現在、600人余りの社員のうち、十数人が副業・兼業をしています。コンサルタントやエンジニア教室の講師など、職種は様々だそう。

ステキなものを多くの人に伝えたい

 オイシックス・ラ・大地の社員がお客さんとして来てくれることもあります。採用・広報の仕事と、日本酒バーの仕事は一見、全く違う仕事に見えますが、小川さんの中では、共通した思いがあります。オイシックス・ラ・大地で扱っている野菜は、バーで扱っているお酒と同じく、おいしくて自信を持っておすすめできるもの。「心から『好きだな、ステキだな』と思ったもの、それに関わる人を、多くの人に知ってもらいたい。やっていることの根本は同じなんだと思います」

 改めて小川さんに「食」について聞きました。「以前は『食べた物が体を作る』栄養面での食に関心がありましたが、今は、おいしいものを好きな人と囲む食体験に関心が強くなってきました。改めて『食』が持つ影響の大きさを感じていますね」と話してくれました。

30歳になって吹っ切れた

 小川さんは昨年、30歳という節目の年を迎えました。「20代の時は、『こうじゃなきゃだめだ』とか、自分のことを追いつめていましたが、30歳になって吹っ切れました。自分は何が好きで、何をやりたいのか。もっと自分に素直になって仕事を楽しんでいきたいです」

(取材・文/山口千尋、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ