悩ましい部下 指導するにはコツがある

楽しく働くための社内政治力

 「芸は身を助ける」ということわざがあります。

 私の趣味は「生け花」。華道歴40年、「芸」と言うにはまだまだですが、何事にも飽きっぽい性格の私でも、生け花のお稽古だけは細々ながら続けています。

 生け花ネットワークの広がりは、組織の中で仕事をする上で大いに役に立ちました。いま、学生たちを教える立場になったことを考えても、このことわざは当たっているのかもしれません。

 「生け花」に興味を持ったのは、子どもの頃。母が生け花を習っていて、小さな頃から家の中に花が飾られていました。狭いアパートの窮屈なスペースに置かれた、華やかな生け花は、幼い私の心にインパクトを与えたのでしょう。花によって漂う香りが違うこと、色彩で季節感が表現できること、花がやがてしおれて枯れていくさまに命のはかないことを感じました。そして、無関心を装いながら、母が花と向き合う時間を大切にしていることを感じ取っていたのです。

 もし、母に「あなたも生け花を習いなさい」と強要されていたら、私は「花嫁修業的なお稽古事なんて、まっぴら!」と反発したことでしょう。母が熱心に稽古している姿を見て、「私もお花を生けてみたいな」と自然に興味を持てたのです。

 何かに熱心に取り組む姿は、側にいる人にも着実に伝わります。これも「人の育て方」の一つの側面ではないでしょうか。

学ぼうとする上司の後ろ姿に心が動く

 自分ができないことを相手に強要しても反発されるのがオチ。これは親子関係だけでなく、上司と部下、先輩と後輩にも当てはまります。部下や後輩は、身近な先達の後ろ姿をしっかり観察しているものです。

 人を育てるには、まず自分を育てることから始めてはどうでしょう。

 外資系の銀行勤務時代、上司に強い不満を持ったことがありました。同じ部門の別セクションにシステムトラブルが発生し、そのセクションは顧客対応に追われて、毎日残業が続いていました。そこで、私たちのチームも応援することになったのです。私は、自分の仕事以外に余計な仕事が増えたことに不満を持ち、貧乏くじを引かされたと、不運を嘆きました。

 ある日、「そろそろ、別のチームと交代してもいいんじゃないですか? 私たちだけがこんな目に遭うのは不公平です」と、上司に進言するつもりでした。そのとき、上司の机に積んである貿易関連の専門書に目が留まったのです。本には、たくさんの付箋が貼ってありました。上司は、トラブルが発生した部署の仕事を徹底的に学ぶため、専門書を読み込んでいたのでしょう。少しでも応援に出向いた先の力になろうと、努力を積み重ねている上司の姿を垣間見て、私は自分が恥ずかしくなりました。

 私は不満ばかり募らせ、自分から行動も起こさず、努力もしてなかったのです。そこで、私は気づきました。「貧乏くじ」ではなく、「チャンス」を引いたのだと。せっかくだから、新しい分野を学んでおけば、きっとあとから役に立つと。「仕事の守備範囲を広げちゃお!」と思えたのです。

 人を育てるには、まず、自分を育てよう!

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関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
著作家・キャリアカウンセラー

 亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「伸びる女の社内政治力」(さくら舎)、「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)「伸びている女性がやっている感情整理の新ルール」(KADOKAWA)、「シティバンク人事部で私が学んだ一生使える「気づかいの基本」が身につく本」(大和出版)「仕事も人間関係もうまくいく!マナードリル」(総合法令出版)「反学歴の成功法則」(経済界)などがある。

伸び悩む女の独りごと~異文化の交差点