ビジネスはドライではなく…「コンサル女子」の胸の内 アクセンチュア・久我真梨子

働く女のランチ図鑑 vol.8

 コンサルティングの仕事と聞けば、大企業の経営陣にさっそうとプレゼンをする‥といったイメージを抱く人も多いのでは。でも実際は、どんな仕事をしているのでしょうか。世界52か国に拠点を持つ外資系総合コンサルティング会社「アクセンチュア」のシニア・マネジャー、久我真梨子さん(40)の日常を取材しました。

「提言」では終わらない

 久我さんの担当業務は、企業などの人材や組織作りに関するマネジメント。クライアントが実施する研修の内容を作ったり、効率的な部署配置を考えたりする仕事です。「クライアントからじっくり話を聞いて、どうしていきたいのか、どこに問題点があるのかを探るようにしています」

 ある地方大学からの「新しい社会人向け講座を開きたい」という依頼に対しては、企業がどんな人材が必要としているのかを分析したうえで、授業の内容やコマ割、講師の選定、テキストの中身までを作成しました。「コンサルと聞くと『提言』のイメージが強いかもしれませんが、『提言』だけでなく、開発から運営なども含めて『実行』までをやるのが弊社の仕事ですね」。テキストのシナリオも細かく書き、「まるで脚本家になった気分」だったそう。

 これまで様々なプロジェクトに携わってきた久我さんですが、入社したばかりの頃は、クライアントとうまくコミュニケーションが取れずに悩んだこともありました。たどりついたのは、「ビジネスはドライではなくウエットでもいい」という考え。「正しいことを言っても相手に納得してもらえなかったら意味がない。まずは自分を知ってもらうために、自分のことを話して相手の気持ちをつかむようにしました」

ヘルシーなお弁当がお気に入り

 普段は複数のプロジェクトが同時進行していて、忙しさには波があるそう。ちょうど取材時は繁忙期でした。そんななか、久我さんがお気に入りのランチとして紹介してくれたのは、社内のカフェで販売されているお弁当です。

会社のカフェで購入したお弁当。カットフルーツを添えて 

 値段は500~600円ほどで、焼き魚やハンバーグなどメインのおかずが日替わりになっています。野菜がたっぷりで、ハンバーグに大豆ミートを使うなど、ヘルシーなところがお気に入りなのだとか。「朝が早いので、11時にはおなかがすいてしまいます。日替わり弁当は人気ですぐ売り切れてしまうので、早めに買いに行って、メールに目を通しながら食べています」

番外編

 仕事中はなかなか落ち着いてランチを取ることができませんが、自宅では、宮城県・福島県の生鮮品や加工品を使った食事を楽しんでいます。

味付けがしてある豚肉をうどんにかけて肉うどんに米粉を使ったから揚げ。小麦アレルギーの人も安心して食べられます

 実は、これらの食材はすべて、両県で農業を学ぶ高校生が、授業の中で開発したもの。アクセンチュアでは社会貢献の一つとして、自社のコンサルタントを両県の農業高校に派遣し、生徒たちに商品企画や事業計画、販売戦略の立案方法などの経営マーケティングを教えています。久我さんは2015年からこのプロジェクトに携わっています。

「利益を出すことの大切さ」を高校生に

 印象的だったのは、販売会向けの商品としてムースを製作する実習での出来事。最初に生徒たちが作ったのは、大きな容器にムースをたっぷり入れたものでした。ある時、「原価を抑えるために容器を小さくしよう」という声が上がりました。「『大きくて安い方がいい』と考えがちかもしれませんが、プロとして『利益を出す』ことを教えてきたので、すごくうれしかったですね」と振り返ります。

野菜の育てやすさや価格など、実際に即したカードになっている

 悪天候で屋外実習ができなくなった日などに、楽しみながら学べるよう、学校向けに農業経営を学べるカードゲームも作りました。決められた作物や土地、栽培方法などをカードで組み合わせ、売り上げを上げて収支を競います。「やんちゃそうな男子生徒が夢中になって、『農業はやり方次第でもうけられる!』と目を輝かせていたのが印象的でした」

 多い時は週1回、福島と宮城に通っており、地元野菜のおいしさを知ることができたそう。現在、授業は別のコンサルタントがメインで担当していますが、久我さんも販売会などには足を運び、生徒たちが手掛けた商品を楽しんでいます。

建築デザイナーに憧れた学生時代

 久我さんは福岡県出身。子どもの頃、黒川紀章さん(故人)がデザインした福岡銀行本店の建物が大好きで、デパート屋上のレストランでお子様ランチをほおばりながら眺めていたといいます。建築デザイナーを志し、大学の芸術工学部に進みますが、「残念ながらセンスがなかった」と苦笑い。

 就職先に悩んでいた時、思い出したのが、ある授業のことでした。「山の上の何もない所が示され、『ここにどんな建物を作るべきかと考えなさい』という課題が出されました。周辺の環境を分析したり、住民からニーズを聞き取ったりして、とても楽しかったんです」。建築デザインはだめでも、人から必要なことや困っていることを聞いて問題解決を図るのが好きだと気づき、コンサルティング業界を就職先として選びました。

役職に見合った価値を出す

 07年にアクセンチュアに入社後、順調にキャリアを重ねていった久我さん。社内結婚し、現在は妊娠7か月で、1歳6か月の女の子を育てています。久我さんがマネジャーからシニア・マネジャーに昇進したのは妊娠が分かってから。コンサルティング業界と言えば、実力主義でシビアなイメージもありますが、仕事が認められれば、妊娠や出産は評価に影響しないため、産休前の実績が認められて「産休中に昇進した人もいる」そうです。

 「昔は、昇進しても『うまくやれるだろうか』という不安な気持ちの方が強かったんです。でも、今なら役職に見合った価値を出せるはず。先に向けて頑張っていこうと思います」

(取材・文/山口千尋、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ