“人を大事にする会社”のホントのところ イケア・ジャパン大島真理

働く女のランチ図鑑 vol.6

 スウェーデン発祥の世界最大の家具・雑貨販売会社・イケア。倉庫のような広いその店舗を訪れると、数メートル四方の空間にベッドやテーブルなどを配置した「ルームセット」が目を引きます。イケア・ジャパン(千葉県船橋市)の大島真理さん(37)は、3人の子どもを育てながら国内9店舗のルームセットの配置デザインを統括しています。「北欧らしい家具と日本の住宅事情に合わせた部屋作りを心がけています」。大島さんはそう説明してくれました。

「理想の部屋」デザインを監修

ルームセットの一例(イケア・ジャパン提供)

 お店を訪れた人に「こんな部屋に住んでみたい」と思わせるルームセット。わずかなスペースですが、「お父さんは37歳で、年収はこれぐらいで、お母さんはパートに出ていて、子どもは2人いて、女の子は何歳で……と細かく設定されているんですよ」と大島さん。あるルームセットは、小学校1年生の子どもがいる設定で、親が宿題を見てあげることが多いと考え、ダイニングテーブルの上にノートや筆記用具を広げるなどのこだわりよう。

 お客さんに設定を明示しているわけではありませんが、「何十ものルームセットのうち、どれか一つでも見てくれる人の心に刺さればいいなと思いながら作っています」。

 ルームセットは、各店舗にいるインテリアデザイナーが工夫を凝らして作り込んでいます。大島さんも以前はインテリアデザイナーとして作る立場でしたが、今は全国の店舗のルームセットを監修する立場になって活躍しています。

部屋をおしゃれに見せるコツ

 天井が低く、押し入れがあるなど、欧米とは異なる日本の住宅事情と北欧家具をうまくマッチングさせるノウハウを見いだすのも大島さんの仕事です。「実際にご家庭におじゃまして、収納方法で工夫していることを聞いたり、家具の使い勝手の不満などについて聞き取り調査をしたりします」

 大島さんに簡単に部屋をおしゃれに見せるコツを教えてもらいました。「家具はナチュラルな色合いにして、小物でメリハリを。今の時期なら、クッションカバーを冬素材のものに変えるだけで印象がガラッと変わります」

社員食堂にはあの人気メニューも


イケア・ジャパンの社員食堂のビュッフェランチ。この日のビュッフェは、ミートボール、サーモンフィレ、マカロニポテトグラタン、ハンバーグ、サーモンマリネサラダ、エビとブロッコリーの彩りサラダ、スープ、味噌汁でした。

 社員食堂では、ビュッフェ、ヌードル、スペシャルランチの3種類があり、それぞれ日替わりで内容が変わります。大島さんがよく頼むのはビュッフェランチ(370円)。メインの肉料理や魚料理、副菜、サラダなどを好きなだけ取ることができるので、栄養・ボリュームが満点!イケアの店舗内にあるレストランで人気のあるミートボールも、社員食堂で食べることができます。

 ランチ時の同僚との会話は、「子どものことや最近遊びに行った場所など、仕事以外の話がメイン」だそう。会社には保育所も併設されていて、長女が通っていた頃はランチタイムの時間を利用して授乳をしに行っていたそうです。

福島からオクラホマへ…イケアとの出会い

 福島県白河市で生まれ育った大島さんは、「英語を使った仕事がしたい」という漠然とした思いを抱いて、高校卒業後、アメリカ・オクラホマ州立大学に進学しました。渡米して初めての一人暮らしを始めると、インテリアの魅力に目覚めることに。「部屋のカーテンやシーツを替えるだけで、気分が明るくなる。それが面白くて、大学でインテリアデザインを専攻することを決めました」

 イケアと出会ったのもこの頃。「初めて店舗を訪れた時は、すごくおしゃれで衝撃を受けました」。ちょうど就職先を決めるタイミングでイケアが日本に上陸することになり、イケア・ジャパンでインテリアデザイナーとして働き始めました。

「イケアのインテリアデザイナーは、デザインだけでなく、実際にルームセットを作ります。私も、マイ電動ドリルなどの工具を持っていますよ」と大島さん

状況に応じてキャリアを選択

 ライフスタイルの変化に合わせて、キャリアも大きく変わりました。特に2人目が生まれた時は、「仕事と育児の両立に不安があり、子どもと過ごす時間も取りたかった」と、マネジャーの職を外れることに。一般的な日本企業であれば、「降格」と捉えられてしまうかもしれませんが、「イケアの場合は、ジャングルジムみたいに、横に行ったり、下に行ったり、その時の自分の状況に応じてキャリアを選べるんです」と大島さん。実際、子育てが落ち着いた頃に今のポジションへの打診があり、悩みながらも引き受けることにしました。

異動、半年で妊娠判明

 ところが、異動して半年後に妊娠が判明します。会社は、半年間の育休を取ることを決めた大島さんの代わりに、ノルウェーから人材を呼び寄せました。「いないなら周りの人がカバーすればいい、ということはありませんでした」。社員の希望を聞き入れ、最大限のサポートをしてくれる会社の姿勢に、「ますます頑張らなきゃ」という気持ちになったといいます。

「全員正社員」で職場に変化

 2014年には「同一労働・同一賃金」「全員正社員」の制度が導入されました。大島さんは元々正社員なので、待遇は特に変わりませんでしたが、職場の雰囲気がすごくポジティブになったそう。「制度ができてから、『来年、再来年はこうしていきたい』といった長期的な話がしやすくなりましたね」

ライフスタイルの変化が成長に

 後輩から仕事と子育ての両立について相談されることもあるという大島さん。そんな時には、キャリアをスローダウンした自らの経験を伝えています。相変わらず家事、育児、仕事で忙しい毎日ですが、「ライフスタイルの変化によって、自分が出せる価値も成長していると感じています」。

(取材・文/山口千尋、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ