「整備の現場はやっぱり楽しい」JALエンジニアリング 小田尚子

働く女のランチ図鑑

 日夜、世界中で人々の空の旅を支えている飛行機。JALエンジニアリングの航空整備士・小田尚子(おだ・なおこ)さん(34)は、飛行機が安全に、快適に飛べるよう日々、仕事に励んでいます。「お客様にすれば飛行機は安全に飛べて当たり前。一つ一つの仕事に責任感を持って取り組んでいます」と言葉に力を込めます。

飛行機の「頭脳」を点検

 小田さんは電装客室技術室に所属し、飛行機の電気機器関連の整備を行っています。職場は、羽田空港にある日本航空の格納庫。ある一定時間フライトした飛行機はここに入り、定期点検が人間ドックのようにじっくりと行われます。

 飛行機は、客室の壁を1枚取り外すと、中は無数の電線がつながっている機器がぎっしり。それらが正しく作動するのかをチェックします。最近、Wi-Fiが使える飛行機が増えましたが、そのための機器を取り付けるのも小田さんの仕事の一つです。

「整備中の機体の中に忘れ物をしてしまっては大変なので、機体に入る前後には必ず自分の持ち物をチェックします」

「電装は飛行機にとって『脳』みたいなもの。ここがちゃんとしていないと、飛行機は飛べないんですよ」と小田さん。

技術と知識以外に人間関係も大切

 仕事の後は、マニュアルを読み込み、その日の作業を振り返ります。最新の機体が導入されれば、その整備の勉強もしないといけませんが、「退屈することがなくて、ひとえに楽しいんです」と言って笑顔を見せてくれました。
 
 小田さんによると、整備の仕事には、技術や知識だけでなく、人間関係も大切なのだそう。「分からないことがあれば、ちゅうちょせずに周囲の人に尋ね、『こうしたほうがいい』と教わります。自分や仲間が失敗しないようにフォローし合うことが、失敗を防ぐ上でとても大切なんです」

現場はやっぱり楽しい

 2人の子どもを持つ小田さんは、4年続けて育児休業を取得し、今年5月に職場復帰。現在は時短勤務で働いています。「4年も休んでいると、工具の置き場所や仕事の進め方も全然違う。仕事と育児ですったもんだしているうちに、子どもが風邪をもらってきて……と、復帰当初はバタバタでした」

工具が並ぶ棚。整備する場所や用途によって細かく分かれていて、必要なものをここから持ち出して整備にあたります

 JALエンジニアリングで飛行機の整備にあたる整備士は約3000人。そのうち女性は150人ほどだといいます。仕事に復帰する際、子育てとの両立の大変さを考えて内勤という選択肢もありましたが、整備士に戻った小田さん。今、「やっぱり現場は楽しい」と感じているそうです。

 育休前とは、仕事の進め方も変わりました。「子どもが生まれる前は、自分の時間を自由に使うことができました。でも今は時間がないので、綿密に計画を立てるようになり、効率的に動くようになりました」

いつも心に飛行機が

 小田さんの実家は新潟県の米農家。振り返れば、幼い頃から飛行機に心を奪われ続けていました。

 農繁期に両親を手伝い、あぜ道でおにぎりをほおばりながら、大空を横切る飛行機を眺めたこと。アニメ「風の谷のナウシカ」で主人公のナウシカが乗る飛行機を見て、「本当に飛べるのかな」と疑問を抱いたこと。お寺の住職から太平洋戦争の話を聞き、「戦争で負けた日本は飛行機の開発が遅れている。このままじゃいけない」と危機感を抱いたこと。

 高校ではソフトテニス部の練習に明け暮れていた小田さんが進路を考えた時に「飛行機の整備士になりたい」と思ったのは、必然的なことだったのかもしれません。高校卒業後、埼玉県内の航空専門学校での勉学を経て、JALエンジニアリングに就職しました。「18歳の時からこれまで整備一筋。『なるべくしてなった』という気持ちです」。28歳の時、同じ整備士の男性と職場で出会い、結婚しました。

ランチの時も頭の中は仕事

 小田さんのいつものランチは、手作りのお弁当です。この日は、ごはんに煮物、ほうれん草の白和えなどのおかずが添えられていました。

小田さんのある日のランチ 

 「子どもが野菜を食べないので、どうにかして食べさせようと試行錯誤しているんですが……。なかなか食べてくれないんですよね」と苦笑い。自宅の食事で余ったおかずをお弁当箱に詰めているそうです。ただ、これだけでは足りないので、総菜パンや菓子パンをプラスしています。

 ランチの時間も上司や同僚たちと一緒で、考えるのは整備のこと。午前中の進捗しんちょく状況を上司に話し、ランチ後にどの作業から始めるべきかを確認します。仕事の段取りのめどがついてから、ようやく雑談が始まります。「ランチタイムは、休憩しつつ、次はどの作業をすべきかを考える時間ですね」

一等航空整備士に

 子育てに追われながら仕事に取り組む小田さん。子どもが肺炎になって入院した時など、「無理をさせているのではないか」と自分を責めたことは何度もありますが、「人生の半分は仕事をして過ごします。だから、『自分の好きな仕事ができるのは、こんなにいいことなんだよ』と、子どもたちに伝えたいです」。

 いつか、難関と言われる一等航空整備士の資格取得に挑戦したいそう。「今も最善を尽くしているけれど、資格を取ることで、もっと自信を持って飛行機を飛ばせるようになりたいですね」

(取材・文/山口千尋、写真/金井尭子)

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 生き生きと働く女性をクローズアップする「働く女のランチ図鑑」。職場での仕事ぶりや気になるランチの様子をお届けします。

金井 尭子(かない・たかこ)
フォトグラファー

 ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ舞台芸術学部卒業。 帰国後は都内の撮影スタジオに勤務し、2011年独立。得意分野は人物ポートレイト。 バンコク発のファッションブランドに夢中で年2回は必ず訪泰。 現在はフリーランスフォトグラファーとして東京をベースに活動している。ホームページ