おごらず、人と比べず、面白がって、平気に生きればいい
これは、先月亡くなった女優・樹木希林さんの告別式で、娘の内田也哉子さんが喪主代理あいさつで、「いつか言われた母の言葉を必死で記憶から手繰り寄せます」と言って紹介した言葉です。
周りから何と言われようと、自分が譲れないこだわりを大事にし、自分らしく生きていきなさい、という樹木さんのメッセージは、働く女性に向けてのエールに思えてなりません。
2016年4月1日に「女性活躍推進法」が施行されてから2年半が過ぎようとする今、働く女性を取り巻く環境は、以前よりどのくらい改善されているのでしょうか?
漢字ばかりで威圧感がある名称の法律ですが、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。女性が希望に応じて職業生活で活躍できる環境を整備することを目的としています。
この法律の名称を聞いて最初から違和感を持ったのは、「活躍」という言葉です。「活躍とは何をもって活躍というのか?」ということです。大辞林によると、活躍とは、「めざましい活動をすること」。「めざましい」とは、目が覚めるほど素晴らしい、驚くほど素晴らしいという意味。そう簡単には変わらない男社会の中において、すでに十分に頑張って働いている女性に、さらにめざましい活動をしろとは酷ではありませんか? そう言いたくなるのは私だけでしょうか?
「活躍しましょう」を英語にすると「Be Active」。こちらのニュアンスの方が、「自主的に考えて動きましょう!」と自然に前向きな気持ちになれそうな感じがします。

仕事において達成感や満足感を抱く瞬間は、人によって違います。困難を乗り越えてチャンスをつかむことに生きがいを感じる人、誰かのサポート役に徹し、その人が成功することに喜びを感じる人、自分より家族の幸せを優先したい人など様々です。要は、「管理職に昇進するだけが『活躍』ではない!」と私は言いたいのです。
絶対に譲れないこだわり
人が何らかの職業上の選択を迫られたとき、最も大切な(犠牲にしたくない)欲求、価値観、能力(才能)を「キャリア・アンカー」といいます。これは、アメリカの心理学者エドガー・シャインによって提唱された理論で、キャリアにおいてよりどころとなる、船でいえば錨(アンカー)にあたるという考え方。
キャリア・アンカーには8つの「何があっても、これだけは譲れないこだわり」があり、人によってその優先順位は違うといわれています。
キャリア・アンカーの8つのこだわり
1.特定の仕事のエキスパートであること
2.責任あるポジションにつき組織の期待に応えること
3.自分のやり方、自分のペースで仕事をすること
4.安全で安定を感じられること
5.起業家マインド
6.社会への貢献指向
7.純粋なチャレンジ
8.ライフスタイル指向
さて、あなたの譲れないこだわりの第1位は何でしょうか?
リーダーになりたくないのは罪?
外銀勤務時代の35歳のとき、上司から、「なぜもっと“前”に出て、自分をアピールし、昇進しようと思わないのか?」とはっぱをかけられ、プレッシャーに感じたことがあります。今振り返ると、当時の私にとって、管理職になるよりも仕事のエキスパートになって、誰かの役に立つことの方にやりがいを感じていたのだと思います。
私にとってのキャリア・アンカーは「特定の仕事のエキスパートであること」、そして「自分のやり方、自分のペースで仕事をすること」だったのです。
ただやみくもに「活躍」しろと言われても困ってしまいます。「私は今、輝いているかも♪」と思える瞬間は、人によって様々なのですから。
人生は台本のない即興ドラマ。主演女優は「あなた」です
【あわせて読みたい】
「のどあめ事件」に学ぶ、ムダに敵を作らないためのマナー力
「ぎぼむす」の元キャリアウーマン・亜希子から学ぶ働き方
会社に行くのが毎日楽しい!? 社内恋愛のメリット、デメリット
お局様の冷たい仕打ちに、どう対処する?