昨年、乳児を連れて議場に入り、物議を醸した熊本の女性市議(43歳)が、今度は「のどあめ」を口に含んで質疑をしたことで、他議員から批判の声を浴びせられました。結局、議事進行が約8時間も止まる騒動になり、女性市議に対する懲罰動議が可決され、女性市議は議会から退場させられました。
子どもを持つ働く女性の代表として、女性活躍推進の先頭に立って走ることを期待されている女性議員がのどあめごときで退場となったことに、私は情けなさと怒りを覚えました。しかしそれは、のどあめを食べたことがマナー違反だったからではありません。
「なんで、ここで突っ込まれるようなことやるかな!?」
のどあめの部分だけを切り取ると、「その程度のことで大げさな……」と思われがちですが、彼女のこれまでの言動が周囲の反感を買っており、皆が再び彼女に突っ込むべきタイミングを待っていたのではないでしょうか。彼女はスキを見せ、敵に攻撃のチャンスを与えたのです。
これとは対照的に、イギリスのメイ首相が演説中にせき込み、水を飲んで静めようとしたとき、財務大臣がのどあめを差し出し、彼女が笑顔になる映像を見ました。
私たちが目指したいのはこちらです。困った事態になったとき、足を引っ張られるのではなく、手を差し伸べてもらえる存在になりたいものです。
政治家に限りません。自分の仕事をスムーズに進めるためには、どのような職種のいかなるポジションの人にも、社内政治力が必要です。人を巻き込み、自分の力を発揮するには、とにかく「ムダな敵」を作らないことです。そのためには、人とのコミュニケーションの入り口で、まずは相手を気遣わなくてはいけません。
「今さら?」と言われそうですが、意外と侮れないのが「ビジネス・マナー」です。
職場でベテランになるにつれ、基本的なビジネス・マナーについては誰からも注意されなくなる傾向にあります。いつの間にか「自分流」が身につき、人に不快感を与えていないか。時には初心に戻り、自分を客観的に振り返ることも必要です。
たかが「あめ」というけれど
外銀時代、あめを口に入れたまま仕事をしていたA子(当時35歳)を思い出しました。彼女は、コンプライアンス上の問題がないかをチェックする部署のベテラン社員。A子は、電話の時もあめを食べながらしゃべります。電話越しにも「ゴロッ」という雑音が伝わり、「ああ、また何か口に入れてるな」というのがわかります。
私は「あなたはあめを食べながら話してもいい人なのよ」と小バカにされたような気がして不快でした。でも、彼女の方が社歴も長く、私は注意することができない立場にありました。
ある日、彼女が私の席まで来て、資料にある数字について質問しました。口にはいつものあめが入っています。この時、私の後方に座っていた上司が「ちょっとA子さん、口にものを入れて話すのはやめなさい! 相手に対して失礼です!」とピシャリと注意してくれたのです。
A子はプライドが傷ついた様子をおくびにも出さず戻っていきましたが、その後、態度を改めたようです。基本的なマナーを守れない人は、どんなに高い能力やスキルを持っていても、周りから尊敬を勝ち取ることはできないのです。
身だしなみもビジネス・マナー
「おしゃれ」と「身だしなみ」は違います。自分が主役の「自己満足」がおしゃれ。身だしなみは相手が主役の「マナー」です。マナーとは、相手に不快感を与えないことが重要。何を不快に感じるかは、その人によって違います。そこが厄介であり、面白いところでもあります。

たとえば真夏の暑い日、アロハシャツはクールビズの範疇に入るのかどうか。ある職場では許されたとしても、職場や立場によって通用しないことがあります。ここで「就業規則に禁止と書かれていない」からといって、アロハシャツにビーチサンダルで出社したら、社会人としての常識を疑われてしまうでしょう。こんなことで周囲の反感を買い、仕事に影響するのはいかがなものでしょうか。
まずは、その職場で良しとされる服装(文化)に自分を合わせましょう。そうでなければチームの一員として認めてもらえません。「郷に入っては郷に従え」の精神が肝要です。服装で自己主張するより、仕事の内容でアピールすべきです。
今回の「のどあめ事件」で学んだことは、「突っ込まれるようなスキを作らない」「職場で自己主張をするタイミングは、職場の一員として認められてから」です。
人のふり見て我がふり直せ
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