テニス界の女王、セリーナから学ぶ「怒る女」のメリット

楽しく働くための社内政治力

 まだ記憶に新しいテニスの全米オープン女子シングルス決勝。観客のブーイングが表彰式まで続くという前代未聞の出来事がありました。

 セリーナ・ウィリアムズ(米)が大坂なおみとの対戦中に審判に抗議した後、いったん冷静さを取り戻したように見えました。しかし、自分のプレーの不甲斐ふがいなさからでしょうか、彼女の怒りの矛先は再び審判に向けられました。セリーナは四大大会シングルス優勝23回など、テニス界に君臨する、まさに女王。これまで幾多の修羅場をくぐり抜けてきた彼女が、怒りの感情をコントロールできない姿に心を動かされました。

 私は、感情をさらけだした彼女に反感ではなく、むしろ共感したのです。大坂なおみの初優勝を祝福しつつも、セリーナの味方にもなりたいような感覚がありました。女王と呼ばれる人でも怒りを静めることは、こんなにも難しいものなのかと、女王を身近に感じたのです。

 「怒り」は我慢するのが美徳なのでしょうか?

 私は、そうは思いません。我慢ばかりしていては体に悪い。「怒る女」は面倒くさい、目障りな女と思われがちです。しかし、そのくらいの「存在感」をもって仕事をしていかないと、依然として変わらない男社会の中で生き残っていけません。

相手が管理職でも、怒るときは怒る!

 これは私の「怒り」の体験談です。

 外資系銀行へ転職後、ようやく仕事に慣れてきた30歳の頃。「ドカーン!」と怒ってしまいました。相手は別の部署の管理職の男性Aさん(40歳)。彼の部署から届くデータによって、私の仕事が成り立っていました。そのデータには不備が多く、そのたびに仕事が中断します。何度も「ここに気を付けてくださいね」と注意・指摘しても、Aさんはニヤニヤするばかりで、私の言葉を真剣に聞こうとしません。

 ついに、堪忍袋の緒が切れた私は、Aさんの席に出向いて大声で怒鳴どなりました。「私をバカにしてるんですかっ?!」。彼は私に圧倒され、「いや、あの、バカになどしていません……」と言うのがやっとでした。

 怒りを爆発させた日はスッキリしたものの、さすがに感情的になり過ぎたと反省した私は、翌朝一番に、Aさんに「昨日は言い過ぎました。申し訳ありませんでした」と冷静に伝えました。

 それ以降、データの不備は徐々に改善されました。仕事はスムーズに運ぶようになり、Aさんとも、彼の部署の人たちとも、わだかまりはなくなりました。どうやら、「あいつを怒らせると怖いぞ」と思われたのが、功を奏したようです。

侮れない女になることも大事

 職場の中で、いつも気持ちが安定してハッピーなんて、ありえません。何かしらにモヤっとし、イラっときたら、その怒りの炎はジワジワと熱く燃えあがります。やがてドカーンと、ため込んだものが噴出することもあるでしょう。

 しかし、小さいことでいちいち怒っていては、「怒り」の威力は発揮できません。いつもは、冷静に仕事をこなし、ここぞというときに「怒る女」に変身しましょう。「ここは怒っていい場面!」と見極めることが大事。「彼女を怒らせると怖い。侮れない人物だぞ」と思わせるのがポイントです。仕事で「かわいい女」を演じる必要はありません。

いつまでも怒りを引きずらない

 表彰式のセリーナは冷静さを取り戻し、ブーイングが収まらない観客を制し、大坂なおみへ祝福の態度を示しました。

 振り上げた拳を下ろすのは、とても気恥ずかしいことです。「あれだけ怒ってたのに、そんなに早く機嫌がよくなるのは変じゃない?」と思われかねないからです。でも、セリーナは温かい言葉で勝者を祝福してみせたのです。さすがは、女王の貫禄。これには、観客も惜しみない拍手を送るしかなくなりました。

 怒りで周囲の空気を凍らせたら、翌日は何事もなかったように笑顔で「おはようございます」と言いましょう。怒りで誰かのメンツを潰したら、その人をフォローすることも忘れないで。この気持ちの切替えこそが、大人の女の振る舞いです。

 「なるほど、彼女が怒るのは当然!」と周りの共感を得られたら、頼れる姉御の誕生です。

 怒りの一撃で、一目おかれる存在になろう!

【あわせて読みたい】
「ぎぼむす」の元キャリアウーマン・亜希子から学ぶ働き方
会社に行くのが毎日楽しい!? 社内恋愛のメリット、デメリット
デキる後輩の態度にカチンときたら……
お局様の冷たい仕打ちに、どう対処する?

関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
著作家・キャリアカウンセラー

 亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「伸びる女の社内政治力」(さくら舎)、「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)「伸びている女性がやっている感情整理の新ルール」(KADOKAWA)、「シティバンク人事部で私が学んだ一生使える「気づかいの基本」が身につく本」(大和出版)「仕事も人間関係もうまくいく!マナードリル」(総合法令出版)「反学歴の成功法則」(経済界)などがある。

伸び悩む女の独りごと~異文化の交差点