デキる後輩の態度にカチンときたら、どう対処する?

楽しく働くための社内政治力

 「あれれ!? いつから私は誰からも誘われなくなった?」

 職場の後輩たちがそろってランチに出ていく後ろ姿を見送りながら、ポツンと一人ぼっちになった私は突然、自分の立場を理解しました。

 社歴の長いお局様たちに気を遣いながら働き続けて幾年月。いつの間にか自分が後輩たちに敬遠されるお局様になっていたとは……。この時の孤独感と、直後に襲ってきた寂しさは忘れられません。

 晴れて(!?)お局様になったら、気持ちよく先輩風を吹かせたい! しかし、現実はそう甘くないのです。

 外銀勤務時代、10歳年下の後輩A子は、高いITスキルを駆使して、効率よく事務処理をこなしていました。一方、IT弱者の私は、彼女に対し尊敬の念と妬ましさがミックスした複雑な感情を抱いていて、一度も「A子さんは、すごいね!」と言葉にしてほめたことはありませんでした。

 ある日、エクセルでマクロ(複雑な操作を自動化するためのプログラム)を組む必要に迫られました。私の能力ではいくら残業をしてもダメだと観念し、「忙しいところ悪いんだけど、計算式を教えてください」と、彼女に頭を下げました。

 すると彼女は「口頭で説明しますから、自分でやってください!」と言い放ったのです。

 A子は私の背後に立ち、テキパキと入力方法を指示します。私は必死で計算式を入力して、やっと目指すシートが出来上がりました。「関下さん、やればできるじゃないですか~!」と笑顔でパチパチ拍手するA子。私は泣きそうになりました。

 これは嫌みなのか? バカにしているのか?

 とりあえず仕事が前に進んだのだから、本来なら彼女に「教えてくれてありがとう」と感謝する場面なのに、私は惨めな気持ちでいっぱいになり、無言で席を立ってしまいました。

写真はイメージです

 冷静になって考えれば、A子は純粋に私を励ますつもりで拍手をしたのかもしれません。これまでのコミュニケーション不足から、彼女の本音をくみ取れませんでした。私はその後、彼女に積極的に話しかけるようにしました。

 A子の愛犬に元気がなく、仕事中も心配なこと、お気に入りのネイルサロンに行くため、休日の時間をやりくりしていること。仕事以外の彼女の素顔が見えるにつれ、少しずつですが、私たちの関係もよくなっていきました。

 後輩には弱みを見せたくない。少しでも先輩としての威厳を保っていたい。だからつい強がって、後輩を遠ざけてしまう。そんな「心のよろい」を脱いで、もっと本音で付き合うのも、人間関係をよくする一つの方法だと思います。

 普段から雑談をしたり、ある程度の本音を言い合える人間関係ができていないと、得意なことを教え合うのは難しいもの。先輩として注意したいことも言いづらいし、相手に聞く耳を持ってもらえません。

 後輩の言動にカチンときたとき、「まったく、イマドキの子は……」などと、世代間のギャップを理由に愚痴を言って終わりにしがちです。これでは問題の解決になりません。むしろ後輩たちは、先輩から何も言われないことで「これでいいんだ」とやりたい放題、言いたい放題になり、あなたのストレスはたまる一方。自分を守るためにも、風通しのよい人間関係を築くことが大切です。

後輩を「素晴らしい!」と素直に認める

 先輩だからといって、すべてが後輩より勝っているとは限りません。

 「私、○○が苦手なの。あなたに教えてもらいたいな」

 自分の弱みを開示するには、ちょっとした勇気が要ります。でも、後輩の力を認める謙虚さは大切なこと。後輩との距離を縮め、新しいことを学ぶチャンスにもなります。

後輩に席を譲る

 今の自分が一人前に働いているのも、新人時代に先輩や上司に教えてもらったお陰です。あなたも後輩たちに積極的に関わりましょう。かつて先輩から受け取ったバトンは次の世代に渡し、自分は新しいバトンを受けとる準備をする。こうした「ニュートラルさ」が大人の余裕に繋がります。

 世の中、ギブ・アンド・テイクと言われます。後輩を指導して仕事を教えたことがギブなら、テイクは後輩たちの成長した姿ではないでしょうか。成長した後輩が、自分を脅かす怖い存在になるのは困る……のではなく、後輩を一人前にしたことで、あなたも着実に成長しているはずです。

 その後、後輩A子は着実に出世し、私の後任になりました。私はA子にバトンを渡し、新たな仕事にゼロから挑戦することに。後輩に追いつかれたら、私はさらに先へ進みたい。そうやって、お互いに切磋琢磨せっさたくまできる関係でありたいものです。

 後輩に追いつかれ、追い抜かれる。それも一つの恩返し。

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関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
著作家・キャリアカウンセラー

 亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「伸びる女の社内政治力」(さくら舎)、「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)「伸びている女性がやっている感情整理の新ルール」(KADOKAWA)、「シティバンク人事部で私が学んだ一生使える「気づかいの基本」が身につく本」(大和出版)「仕事も人間関係もうまくいく!マナードリル」(総合法令出版)「反学歴の成功法則」(経済界)などがある。

伸び悩む女の独りごと~異文化の交差点