育児休暇や介護休暇「休んで申し訳ない」気持ちを払拭するには?

楽しく働くための社内政治力

 2006年夏、休暇をロンドンで過ごしました。帰国する8月9日の朝、免税店で買いものがしたくて、早めにヒースロー空港に到着した私は、愕然がくぜんとしました。テロ組織による旅客機爆破計画が発覚したのです。

 空港は騒然となりました。買い物どころではなく、配布された透明のビニール袋にパスポートと財布だけを入れ、念入りなボディーチェックと手荷物検査を受ける羽目に。店のシャッターはすべて降ろされ、私はくたくたに疲れ果てながら、不安と緊張の中でフライトの案内をひたすら待ち続けていました。

 半日以上待たされ、ようやく搭乗できた機内(ヴァージン・アトランティック航空)では、まるで何事もなかったかのように、客室乗務員のにこやかな笑顔で迎えられました。おまけに機内アナウンスの第一声が「Thank you for waiting!」だったことに驚きました。

 日本だったら、「長い時間お待たせして、大変申し訳ありませんでした」のおびから入ることでしょう。感謝の気持ちを真っ先に表現した英国の航空会社に違和感を覚えました。軽いカルチャーショックだったかもしれません。でも、お客様が直面した不安を少しでも和らげようとする笑顔、前向きで明るい言葉をかける接客態度に「さすがプロフェッショナル!」と感心。私も不安から徐々に解放されていきました。

 私たちは、子供の頃から「人に迷惑をかけてはいけない」と教えられているせいか、誰かに負担をかけたり、お世話になったりしたとき、お礼より「すみません」や「申し訳ありません」が先に出てきませんか?

 職場では「産休・育休」「介護休暇」取得などで、同僚に仕事のしわ寄せ(負担)が生じることがあります。そのせいで「みんなに迷惑をかけてしまった……」と申し訳ない気持ち、後ろめたい気持ちが自分を苦しめるときがあります。

 「私のせいで、ご迷惑をおかけしてすみません」と暗い顔でうつむくより、「仕事を助けていただき、ありがとうございます!」と笑顔であいさつした方が「感謝」の連鎖がつながって、明るく前向きな職場の雰囲気づくりに貢献できるような気がします。

 なぜなら、職場での「迷惑」はお互い様だからです。

「ありがとう」から始めよう!

 義父の突然の病で3か月の介護休暇を取ったのは、今から10年前、外資系銀行勤務時代のことでした。

 当時は、介護休暇を取る社員がほとんどいなかったので、人事からも職場の仲間からも、好奇の目で見られていたような気がしました。育休は前もって準備できます。しかし、介護は、ある日突然やってきます。まず、自分の精神的なショックからスタートします。介護休暇を取るための事務的な手続き、仕事の割り振りなど、クリアしなければならない課題が次々と押し寄せ、とても疲弊しました。さらに、仕事を負担してくれる仲間に「迷惑」をかけることが申し訳なくて、押しつぶされるような感覚がありました。

 介護休暇から職場復帰した日、自分が孤立しているように感じました。3か月も不在にしていると、スピード勝負のビジネス現場では仲間の足手まといになります。私は、以前の自分にすぐに戻れないことにイライラし、それまでできていたことができないことに落ち込みました。忙しそうに働く同僚たちが遠くにいるような錯覚を起こし、「介護休暇で迷惑をかけたので、怒っているの?」と疑心暗鬼になっていました。

 私は介護休暇取得を「当然の権利」と前面に出すことで強がり、自分の中でバランスをとっていたところがあります。負担をかけた職場の仲間に「ありがとう」が足りなかったと、今になって反省しています。

写真はイメージです

 「交通機関のトラブルで遅刻」「インフルエンザで欠勤」など、育児や介護以外でも、やむを得ず職場の同僚にお世話になることは、誰にでもあります。

 職場の誰にも迷惑をかけない人はいないはずです。迷惑をかけたら、次は誰かをフォローすればいいのです。

 「フォローしてくれてありがとう! 次は私に任せて」

 「すみません」「申し訳ありません」と言うばかりでは、身も心も萎縮していきます。まずは、感謝の気持ち、「ありがとう」から始めませんか。「ありがとう」と言われたら、相手も「助けてあげてよかった」とうれしくなるはず。感謝の言葉には、周りも自分も伸びやかにする効果があります。

 「ありがとう」をフォローする力につなげよう!

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関下昌代
関下昌代(せきした・まさよ)
著作家・キャリアカウンセラー

 亜細亜大学非常勤講師。熊本市生まれ。高校卒業後、住友信託銀行に就職。以後、派遣、臨時職員でテレビ熊本、熊本県庁などで勤務した。1989年シティバンク銀行に転職。いくつかの業務部を経て、2001年人事本部人材開発課に異動。社員研修プログラムの企画、社内講師役を務める。2009年3月、立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士号取得。同11月末シティバンク銀行を退職。2011年4月より大学でビジネスマナーやコミュニケーションの科目を担当。著書に「伸びる女の社内政治力」(さくら舎)、「伸びる女(ひと)と伸び悩む女の習慣」(明日香出版社)「伸びている女性がやっている感情整理の新ルール」(KADOKAWA)、「シティバンク人事部で私が学んだ一生使える「気づかいの基本」が身につく本」(大和出版)「仕事も人間関係もうまくいく!マナードリル」(総合法令出版)「反学歴の成功法則」(経済界)などがある。

伸び悩む女の独りごと~異文化の交差点