遅刻したら同僚にコーヒーおごる…そんな「職場ルール」は違法?

弁護士ドットコムニュース

 遅刻したら、同じ部署の同僚10人に対して、スターバックスでコーヒーをおごらないといけない――。東京都内の企業に勤めるAさんは、そんな理不尽な職場ルールに悩んでいると打ち明けました。

 Aさんによると、このルールは、部署の上司が勝手につくったもの。就業時間までに座席にいないと、1杯500円程度のコーヒーを同僚10人におごらないといけないといいます。ほかにも、ランチの場所取りをさせられるなど、独特のペナルティがあります。

 Aさんは「おごりたくない」と断ったことがありますが、1人だけ会議出席禁止、情報共有されないなど、業務に支障をきたしたことがあったそうです。こんな職場ルールは法的に問題ないのでしょうか。労働問題にくわしい北江康親弁護士に聞きました。

「賠償の禁止」に違反する可能性あり

 「今回のルールは、法律に定められた『賠償予定の禁止』に違反にしている可能性があります。また、違法な『懲戒処分』を課すことにつながりかねないと考えます」

 北江弁護士はこのように述べます。まず「賠償予定の禁止」とはどんなルールなのでしょうか。

 「労働基準法には、『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない』と定められています(同法16条)。

 これが『賠償予定の禁止』です。平たく言えば、『◯◯したら罰金●円』ということをあらかじめ定めてはならないというものです。

 今回のルールは、遅刻した場合、その人がコーヒーをおごることを断れば、1人だけ会議出席禁止になったり、情報共有されなかったりするという不利益まで課されるというものです。

 つまり、遅刻を理由に半ば強制的にコーヒーをおごらされるわけですから、罰金と同じ性格だとして、『賠償予定の禁止』に違反する可能性があります。

 もし違法と判断されると、刑事罰として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられる可能性があります(同法119条1項)」

会社にも責任が発生する可能性あり

 では、違法な「懲戒処分」とはどういうことでしょうか。

 「遅刻すれば、実際に働いていない時間が発生しますが、その分を超えて罰金や減給を課す場合、就業規則による定めが必要です。ところが、今回のルールは、上司が勝手に作ったものにすぎません。

 そのルールにしたがって、遅刻した人に同僚に10人分のコーヒーをおごらせた場合、就業規則に規定のない違法な罰金またはそれに準ずる『懲戒』処分を課していることになります。

 したがって、上司だけでなく、使用者である会社にも、損害賠償の支払い義務が発生する可能性があります。

 また、法人としての会社も刑事責任を問われたり、会社代表者が罰金刑で罰せられる可能性もあります」

 上司からすれば、「遅刻を防ぎたい」という考えがあるのかもしれません。

 「遅刻する人に対しては、就業規則に規定されている懲戒処分を相当な範囲で課したり、制裁という方向ではなく、むしろ遅刻しなかった場合に皆勤手当を支払うなど、報奨を与える方向で遅刻を減らすよう検討してはどうでしょうか」