ホテルのチェックイン、記入用紙に偽名を書いたら犯罪?

弁護士ドットコムニュース

 ホテルのチェックインで求められる氏名や連絡先の記入。順番待ちは別として、レストランやテーマパークなどでは不要なのに、なぜホテルでは書かないといけないのかと、不思議に思ったことはないでしょうか。

 特に現代はネットで予約もできるのに、なぜ手書きも必要になるのでしょう。そのくせ、身分証明証などで本人確認されることは、ほとんどないようです。

 どうせ分からないからと、偽名で泊まってしまったらーー。たとえば、ちょっと不吉ですが、イタズラ心で「金田一一」や「江戸川コナン」など名探偵の名前を書いたら、何か問題になるのでしょうか。金子博人弁護士に聞きました。

●旅館業法違反や私文書偽造罪の可能性…偽名の本物っぽさもポイントに

 旅館業法6条1項には、旅館やホテルの営業者は、宿泊者名簿を備え付け、それに宿泊者の氏名、住所、職業等を記載しなければならないとあります。また、自治体の担当職員の要求があれば、それを提出しなければなりません。

 同条2項では、宿泊者に対し、営業者から請求があれば、これらの事項を申告しなければならないと定めています。宿泊者名簿を作成するのは、営業者側なので、宿泊者が書き込む必要はありませんが、少なくとも求められれば、口頭でも申告する義務があります。

 違反すると、11条で、営業者は5000円以下の罰金、12条で、「偽って告げたもの」には、拘留または科料(1000〜9999円)の制裁(刑事罰でなく行政罰)。したがって、申告を拒否すると、泊まるのを拒否されてもやむをえないわけです。

 なぜ、ホテルや旅館にこのような規制があるかというと、ホテルや旅館は、賭博や売春、ドラッグなどの違法取引に使われやすいし、犯罪者が逃亡のために利用するからです。また、感染症発生時の感染経路特定にも重要な役割を果たします。ただ、法的には宿泊者に身分証明書を出すなど証明義務までないので、偽名はありえるのです。

 しかし、偽名だと、旅館業法に違反するだけでなく、刑法の私文書偽造罪に問われる可能がでてきます。私文書偽造罪は、他人の氏名を冒用することですが、冒用される相手が実在する必要はなく、実在すると誤信される場合も、成立すると解されています。

 今年5月、仮名で宿泊していた逃亡中の中核派の活動家が、有印私文書偽造・同行使の罪状で逮捕されましたが、これは冒用される相手が実在しなかったようです。

 逆に実在しないことが明らかな、「江戸川コナン」などと書いても、偽造にはなりません。ただ、「ふざけないでください」と注意されるでしょう。申告したことにはならないからです。

●法律上、ラブホテルは別扱い…「偽装ラブホ」なるものも

 ところで、ラブホテルには、以上の旅館業法は適用されません。

 一般のホテルは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の管轄で、許認可は保健所に提出します。

 これに対し、ラブホテルは「風俗適正化法」が適用され、風俗営業として国家公安委員会へ営業開始届けを出して、営業します。営業場所が厳しく制限されるなど、規制の内容は一般のホテルとまったく異なりますが、宿泊者名簿の制度はありません。

 また、どう見ても、ラブホテルなのに、受付に宿泊者名簿が置いてあるというケースもあります。これは、「偽装ラブホ」です。ラブホテルを建てられないところで、まず一般ホテルの営業許可を得た上、こっそりとラブホテルとして営業するのです。この場合、受付の宿泊者名簿は形だけなので、書けとは言われないはずです。