妻と別居中に交際「不倫にならない」は本当?

小町のリーガ~ル道場

 剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて、3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、別居中の夫婦に起きた「不倫」問題について考えます。

 携帯電話会社のCMで知られる男性タレントが、「長年出演してきたCMを降板したのでは」とうわさになっています。降板の理由として取り沙汰されているのは「不倫」。このタレントは、妻子がありながら、昨年知り合った女性と交際し、女性は近々出産の予定だといいます。ところが、このタレントの所属事務所の説明によると、妻とは2年半ほど前から別居しており、離婚調停が進められていることなどから、女性との関係は不貞行為(不倫)ではないとのこと。果たして、配偶者と別居中に別の異性と交際したとしても、不倫には当たらないのでしょうか。

壱本目! 不倫は法律的には「不貞」といい、離婚の理由となる!

 「不倫」というのは一般用語で、法律的には「不貞ふてい」といいます。最高裁判所は、不貞について「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義しています。

 不貞行為は、離婚が認められる理由の一つとして民法に挙げられており(民法770条1項1号)、配偶者が不貞をした場合、もう一方の配偶者は離婚の訴えを提起することができます。また、不貞をされた配偶者は、もう一方の配偶者とその相手の片方または両方に、不貞行為に基づく慰謝料請求をすることができます。

弐本目! 不倫相手が「夫婦関係は既に破綻していた」と抗弁するケースも!

 不倫相手を訴えた際、しばしば問題となるのが、相手方が「不倫より前に婚姻関係が破綻していた」と抗弁してくるケースです。

 最高裁の判例では、配偶者の一方と第三者が肉体関係を持った場合に、その夫婦の婚姻関係がその当時、既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、第三者は不貞行為に対する責任を負わないとされています。そのため、不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟では、被告が自らを防御する方法として、「肉体関係に及んだ当時には夫婦関係はすでに破綻していた」と主張するケースが多いのです。

参本目! 別居に合理的理由があれば、婚姻関係破綻と認められないことも!

 では、一体どういう状態を夫婦関係の「破綻」というのでしょうか。

 「破綻」というのは抽象的な概念です。だから実際には、「けんかが絶えず、離婚の話し合いをしていた」とか、「離婚調停中だった」とか、具体的な事情を積み重ねて「破綻」を立証していくことになります。夫婦のどちらかが一方的に「夫婦関係は終わりだ」と思っているだけではダメ。あくまで客観的な事実を積み上げていく必要があります。

 その中で、一つの指標になりうるのが「別居」の事実です。実際、「別居を開始した」という事実を婚姻関係破綻の根拠とする裁判例は少なくありません。

 しかし一方で、「別居」をしていても婚姻関係破綻を認めなかった裁判例もあります。例えば、「里帰り出産のために実家に帰っていただけ」とか、「冷却期間を置くために別居していただけで、離婚を前提としたものではなかった」といった場合は、婚姻関係が破綻しているとまでは言えないとされています。

 つまり、破綻か否かは、必ずしも別居という外形的な事実だけでは判断されず、別居に合理的な理由があれば、婚姻関係が破綻しているとは認められないこともあるのです。

 冒頭の事例では、どんな状況とタイミングで妻以外の女性と男女の関係が始まったのかが明らかではありませんが、2年間の別居の事実に加えて、さらに離婚調停を申し立てた後で始まった関係なのであれば、婚姻関係は既に破綻していたとして、不貞行為に当たらないと判断される可能性が高いでしょう。しかし、関係が始まった当時はまだ、夫婦関係の修復を目指して冷却期間を置く趣旨の別居であったとか、離婚調停を申し立てたものの、取り下げた事情などがあると、結果は変わりうるものと考えられます。

◇リーガ~ルポイント◇
 「不倫」は法律的には「不貞」といい、配偶者が不貞をした場合、離婚の訴えを提起したり、慰謝料請求をすることができる。慰謝料請求訴訟では、配偶者の不倫相手(被告)が「不倫より前に婚姻関係が破綻していた」と抗弁するケースが多い。夫婦関係が既に破綻していれば、不倫相手は責任を負わないとされているためだ。別居は、婚姻関係破綻の根拠となるが、他に合理的理由があれば、婚姻関係破綻が認められないことも。

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。

 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。