上司がマタハラ? 体調不良で自宅療養、退職も……対応策は?

小町のリーガ~ル道場

 剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)への対応策について解説します。

 妊娠や出産などを理由に、女性が職場で不利益な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」。労働政策研究・研修機構が25~44歳の女性約1万人を対象に行った調査(2015年)によると、マタハラを経験した人は21・4%にも上ります。掲示板「発言小町」にも、上司のマタハラとみられる行為のせいで、体調を崩した女性からの投稿がありました。この女性は、妊娠を直属の上司に報告したところ、上司の態度がひょう変し、何かにつけて感情的にどなって注意するようになったといいます。女性は、上司を見るたびに怖くて震えるようになり、つわりの症状も悪化、自宅療養を余儀なくされたそうです。「退職の方向で考えている」という彼女がもし、心ならずも会社を去ることになってしまったら、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

壱本目! 妊娠、出産などが理由の不利益な扱いは法律違反!

 社会に定着しつつある「マタニティー・ハラスメント」(マタハラ)という言葉。残念ながら、法律上のはっきりとした定義は今のところありませんが、「妊娠、出産、育児休業などを理由とする不利益な扱い(解雇・減給・通常ではありえない配置転換など)」が典型的なマタハラといえます。そして、こうした扱いは、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法で禁止されています。

 また、妊娠、出産、育児休業などが直接的な理由かどうか微妙なケースでも、妊娠、出産、育児休業が「契機となって」不利益な扱いを受けたといえれば、原則として違法になります。契機となったかどうかは、原則、不利益な扱いが妊娠、出産、育児休業から1年以内になされたか否かで判断します。

 不利益な扱いを受けた女性(育児休業の場合は男性のケースも)は、会社に不利益処分の取り消しや慰謝料を請求することができます。

弐本目! 上司や同僚からの「嫌がらせ」、会社には防止義務あり!

 壱本目で紹介したのは、「会社(事業主)の労働者に対する処分」という種類のマタハラです。その他にも、妊娠、出産を理由に、上司や同僚からの心ない言動によって傷つけられるマタハラも深刻です。

 厚労省は、このようなマタハラを「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の二つに分類しています。「制度等の利用への嫌がらせ型」としては、「病院は休みの日に行くもんだ」「男のくせに育児休業するなんて」「あなたばかり立ち仕事が免除されてずるい」といった発言が該当します。一方、「状態への嫌がらせ型」としては「いつ休まれるか分からなくて迷惑だ」と言い続けられ、妊婦等が心身の不調をきたすケースや、「妊婦は役に立たないので、他の人を雇わなきゃならない」といった発言などが考えられます。

 2017年1月、改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法が施行されました。壱本目で紹介したような、会社による解雇、減給、降格などの処分は改正前から違法でしたが、1月からは、上司や同僚による嫌がらせ型のマタハラもあってはならないこととして、会社側に防止措置が義務付けられました。

 防止措置の内容としては、どんな言動がマタハラに当たるのか(マタハラの内容)やハラスメントがあってはならないことの周知・啓発と、相談窓口(相談担当者)の設置、ハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対応(事実確認、被害者の保護、加害者の処分、再発防止措置)などが挙げられています。

 会社の姿勢としてマタハラを許さないことを示し、また仮にマタハラが起きてしまった場合には、救済窓口を確保し、被害者の保護が図られるように、会社は体制を整えなければならなくなったのです。

参本目! 録音など証拠を確保すれば、慰謝料が認められる可能性も!

 冒頭の投稿者のケースでは、上司からの叱責のタイミングや内容によっては、弐本目で言及した「嫌がらせ型のマタハラ」に当たり得るものと考えられます。投稿者の会社には、相談窓口もなかったようで、体調を崩し、退職を余儀なくされるところまで追い込まれています。

  上司の言動を放置したことや、相談窓口を設けていなかったことなどについては、会社が必要な措置を怠ったものとして、投稿者が慰謝料を請求すれば、それが認められる可能性があります。ただし、録音や日記など、上司の言動に関する証拠をしっかり確保できていることが前提になります。

 仮に、叱責の内容などと妊娠との間に因果関係が認められず、いわゆるマタハラと言えなかったとしても、上司の言動をパワハラとみなして不法行為責任を問うたり、パワハラを許した会社の責任を問うたりすることも考えられます。泣き寝入りの前に、まずは一度、法律相談を利用してみましょう。

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マタハラ?ストレスが原因で

◇リーガ~ルポイント◇
 妊娠、出産、育児休業などを理由とする解雇や減給などは法律違反で、会社からこうした不利益な扱いを受けた場合は、不利益処分の取り消しや慰謝料を求めることができる。今年1月からは、上司や同僚からの「嫌がらせ」についても法律で会社に防止措置義務が定められた。ただし、慰謝料などが認められるためには、上司の言動を記録した録音や日記などの証拠が必要。

西山温子(にしやま・あつこ)
弁護士。

 第一東京弁護士会、インテグラル法律事務所所属。アラサーとアラフォーのハザマ世代の働き女子。剣道四段。取扱業務は、離婚、相続、労働をはじめとした一般民事事件ほか。一期一会を大切にクライアントの立場に寄り添った弁護活動がモットー。